「おばさん、ハリケーンポテト串下さい!4つね!」
「4つ?4つも食べ・・・ああ。はいよ、4つね。」
「わーい!有難う翠おねーちゃーん!」
「良いのか・・・」
「まあ、本人がそうしたいと申し出ているんだ。最悪料金を後から請求されても、さしたる額じゃない。」
「それはその通りだが。」
翠はあの後輪投げを堪能し、3人を連れて何か奢ってやるから注文しろと言った。
ので、今はこうして紀伊梨のハリケーンポテトが食べたいというリクエストに応えて移動したのだ。
「はい、どーぞ!」
「わーい、ありがとー!」
「ううん、良いの良いの!ほら、そっちの男子2人もどうぞ!」
「有難うございます。」
「有難うございます・・・・」
「む?なーに、君は不服なの?」
「いえ、そうではありませんが。」
「真田っち好き嫌いは駄目だよー?」
「誰が好き嫌いだ!そうではない!そうではなくて、払ってもらう道理がないというか・・・」
「あ、どうして奢るのかって事?良いの!年上には甘えちゃうもんよ!」
ふふん、と胸を張る翠は、そういう調子の良いところが実は弟と良く似ていたりする。
「それに、一人で食べてもつまんないじゃない?」
「そーそー!翠おねーちゃん、彩乃おねーちゃんはー?今日居ないのー?」
「居るよ?でもねー、後30分は戻ってこないってさっきLINEあったなー。」
「なんで?」
「それがさー、彩乃ってば財布忘れちゃったのよ!輪投げに並んでる時に気づいてね?まあ元々彩乃が輪投げやりたがってたわけじゃないし、私残って待ってようと思ったんだけど、何かいつもある所に無いんだって。花火までもう時間ないのになー。」
「もっと早く来たら良かったんじゃにゃいの?」
「そーなのよねー!もー、受験勉強とかやりたくないよもー!」
うがあ!と叫ぶように言う翠。まさに心の叫び。
「べんきょーで遅くなっちったのー?」
「そー!補修!紀伊梨ちゃん達中1でしょ?良いなあ、まだ大学受験の事なんて考えなくて良い年じゃん!」
「そうか?」
「俺は視野に入れているが。」
「俺もだ。」
「え!何、優秀過ぎない!?最近の中1って大人ー・・・!」
「真田っちもやなぎーも頭良いもんねー。ってゆーか、紀伊梨ちゃんの周り頭良い人多すぎだよ!皆テストで90点とか100点とか取っちゃってさー!」
「え!嘘!」
「本当です。」
「天才児じゃん・・・」
「普通のことです。」
「マジで?勉強教えて欲しい、絶対私より頭良いじゃん。」
はあ、とぐったりため息をつきながらポテトを齧る翠。
「うちの家ってさー、皆勉強の素質無いんだよねー。家族全員人並み以上にやらないと結果出ないし、弟とか私より馬鹿だし・・・」
「翠おねーちゃん弟居るの?」
「居るよー、紀伊梨ちゃん達より1個下かな。何か最近は行きたい中学があるとかで勉強してるけど、まー馬鹿なんだよ!これが!生意気だしさあ!部屋でギャーギャー煩いし、自分のプリンに名前書いておかないで、食べられたって逆切れするしさー!」
(それは逆恨みとは言わん気もするが。)
(まあ、兄弟などどこも多かれ少なかれこんなものだろう。)
「後さ!後さ!弟のくせして唐揚げの大きい方を姉に譲らないわけよ!」
「あー!分かる!うちの蓮も!」
「ね!姉に対する敬意が無いわよ、敬意が!」
「ねー!」
「・・・・・・」
「柳?どうした?」
「いや、姉が居る身としてはやや複雑な気分だと思っただけだ。」
「そうか?お前の所はお互い穏やかで仲も良いのだから、堂々としていれば良いだろう。」
「それもそうだが。」
「お!おかっぱ君もお姉ちゃん居るのか!」
「え、そーなの!やなぎーのおねーちゃんってどんな感じ!?おかずとかおやつの取り合いする!?」
「しない。」
「「マジ!?」」
「そもそも、うちの姉は少食なんだ。食事が俺より大きかったり多かったりすると、食べきれないから取り替えてくれと俺に頼んでくる。」
「っはー!やばい、同じ女子だけど私とタイプ違いすぎ!どっちかっていうと彩乃に近そう。」
「じゃあさじゃあさ、べんきょーとかうんどーは!?やなぎー、自分の方が出来るからってお姉ちゃんのこと馬鹿にしたりしてない?」
「勉学に関しては、姉は普通以上に成績は良い方だ。特に俺の方が優れているなどと思ったことはない。」
「運動に関してはどうだ?そこらの女子がお前に敵うとは思えんが。」
「そうだな、確かに身体的なことに関しては俺に軍配が上がる。だが、だからと言って姉を馬鹿にしたり下に見たりなどという発想にはならない。」
そもそも、柳家の姉弟はお互いに指差してバーカバーカと罵り合うタイプの兄弟ではないのだ。姉は昔からお淑やかで喧嘩したり指図して来たりする性格じゃなかったし。
「俺からしてみると、寧ろよくそこまで喧嘩の火種が次から次へと生まれるものだと不思議に思うが。」
「「だって生意気なんだもん!」」
「・・・わからんでもない。」
「真田はそうだろうな。」
真田は寧ろ兄が居る方だが、生意気な年下というのがどういう存在かは左助に会うととてもイメージしやすい。もしあれが本当の弟で四六時中家に居たらと思うと、想像しただけで疲れ果てる気がする。
「はーあ!もー、どうせ弟とか妹が居るんなら紀伊梨ちゃんみたいな妹が良かったなー!」
「ほんと!?」
「ほんとほんと!もー、紀伊梨ちゃんうちの子になりなよー!弟はちゃんと追い出すから!」
「あ!でも紀伊梨ちゃん、翠おねーちゃんの弟君にも会ってみたいなー!」
「え、絶対止めた方が良いってー!会っても良いこと無いよ!さっきも言ったけど、馬鹿だし煩いし生意気だしさ!おまけに短気ですーぐ手が出るんだから!」
「え!そーなの!?」
「そう!最近でこそマシになったけど、ちょっと気に入らないとすぐおいお前!みたいに突進して行くしさー!自分の言いたいことを抑えておけないんだよね、私以上に。」
「それは良いことではないですか?」
「良し悪しは状況によりけりだが。」
真田と気が合いそうだな。
と柳は思ったが、その答え合わせは実は来年にすることになる。