(違うーーーー)
内心で呟きながら返球。
コースが甘い。
やっぱり返される。
(違うーーーー)
決めないと、なんて思っていない。
思えない。
それが打球にも表れているのだろう、さっきから全然お互いに決められない。
(・・・そうじゃない。)
これじゃないんだ。
まだ何処にもないんだ。
自分の本当に欲しいもの。
(・・・全く。)
「何処にーーーあるぜよ!」
思い切り振りぬいたボールは、さっきまでと段違いのスピードで相手のコートに突き刺さった。
「5-4!仁王!」
「彼奴は本っ当に意味が分からんなw」
「全力じゃありませんよね?」
4人が観戦している試合。
カウントのみ見れば拮抗しているようだが、汗だくの相手と対照的に、仁王は至って涼しい顔素振りでゲームを進めていた。
時折ラリーばかり続き、思い出したようにドカドカポイントを取る。
遊んでる、というよりは。
「考え事でもしてんのかしらね。」
「えええー!?勝ってるのにー?」
「考え事しながら勝てるって、凄いですね・・・」
「同学年相手とは言え、強いなー仁王は。」
などと話している間に、試合は勝負がついた。
「ゲームアンドマッチ!ウォンバイ仁王!3-0!」
「よっしゃあーー!」
「こら、紀伊梨!」
「まーまーw試合が終わった時は、皆騒ぐから良いっしょw」
「やった・・・!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ紀伊梨。
千百合などは「まだ一勝しただけなのに・・・」とか思ってしまうが、勝利が喜ばしいのはまあ本当だ。
(お・・・彼奴ら本当に来とるの。)
確認する前に整列の号令がかけられ、忽ち試合になってしまったが、4人揃って教えた場所にちゃんと居る。紀伊梨辺りは嬉しそうに、ピョンピョンジャンプしきりだ。
(しかし彼奴、あんな所で跳ねとったら)
草に足を取られて転ぶぞ、と思った矢先、フェンスの向こうの紀伊梨は本当に転けた。
外さない奴。
「クク・・・」
笑うと、棗が自分を指差して何事か言ってるようだった。
(・・・なんじゃ、俺を見とったんか)
ひらん、と手を振ると、4人は思い思いに手を振り返してくれたり、サムズアップしてくれたり。
観客が居るのも偶には良い。