三強を除いた現1年生。
その中で、後にレギュラーになる在籍選手は現段階で3名。
仁王雅治。ジャッカル桑原。丸井ブン太。
この中で1番己を知っていたのは、実は丸井であった。
「第3コート、第4試合!楠翼対丸井ブン太!」
「あ、次の試合、丸井。」
「ブンブーン!頑張れー!」
「ブンブンくーん。」
(丸井君・・・)
「・・・・・」
自分は、天才だと思う。
丸井はそう考えながらコートに入った。
「フィッチ?」
「スムース。」
「よっ・・・ちぇー!サーブそっちかよ。」
「お、ラッキーだろい。」
サーブ貰った丸井は、プレイ!と審判が言うのを待つと、ポンポンとボールを2、3度ついた。
「・・・おら!」
ゲームが始まる。
「らあ!」
「とっ!」
はっきり言おう。
自分はセンスが良い。
丸井はそう感じていたし、それは人から見てもそうだと思う。
勘も良い。運も良い。そのクセ、テニスの事なら考える作業もちゃんと出来る。
感覚と思考のバランスが優れている。
その上でボレーの天賦の才がある。
それが自分の強みだと思っていた。
(でも、それだけじゃ足りねえ。)
強みがあるだけじゃ、此処ではレギュラーの座は勝ち取れない。
弱みだ。
弱点を克服しなければいけない。
自分を知る丸井は、自分の何処が弱いのかも的確に分かっていた。
「3-1!丸井!」
「はあ、はあ・・・!」
先ず、スタミナ。
自分は直ぐに息が切れる。
でもジッとしていられないから、一試合に動ける量が限られてしまう。
そしてもう一つ。
それは勢い。
「4-2!楠!」
(・・・俺は、安定しない。)
テンポにムラがある。
調子よく勝てる時とそうでない時の落差が激しくて、ダメな時はてんでダメだ。
どうにかして、常にベストコンディションを引き出せるようにならないと。
そう考える度、丸井は親友がーーー自分が欲しい物を持つジャッカル桑原が羨ましい。
何時か見つかるだろうか。
自分の限界を越える為の何か。
それはなんなのか、今は分からないけど。
分かる前に、初めてのレギュラー選抜は来てしまったけど。
でも、今。今日。
この試合は負けない。
「ブンブーン!いけー!ぶちかませーー!」
「ブンブン君、がんばー!」
「丸井!勝ったらゼリーあるんだからね!」
(マジかよ。)
声援が聞こえる。ゼリーがあるだって。
そりゃあ勝たないと。
是が非でも勝たないと。
皆が見ててくれて、
ゼリーが待っていて、
それに。
「丸井君!頑張って!」
君がそんな大声出して、応援してくれるんなら。
「・・・ハッ!」
渾身の集中力で打ったドロップボレーが、相手のコートに落ちた。
「ゲームアンドマッチ!ウォンバイ丸井!3-1!」
「きたーーーー!」
「おーおー!強いじゃーん、ブンブン君!」
「よし!」
「やった!丸井君すごいです!」
「・・・当然だろい?」
「あー、負けた・・・なんか言った?」
「ん?勝ったから、ゼリーだなって言った。」
「あっちの彼奴らお前の応援かよ!くそう、女子に応援されるとか羨ましい・・・!」
「だろい?」
そうでなくても文句言うつもりはないけれど。
でも手作りだったら良いな、と考えながら丸井はコートを後にするのだった。
レギュラー選抜戦は、まだまだ始まったばかり。