First order 1 - 5/5


三強を除いた現1年生。
その中で、後にレギュラーになる在籍選手は現段階で3名。
仁王雅治。ジャッカル桑原。丸井ブン太。

この中で1番己を知っていたのは、実は丸井であった。




「第3コート、第4試合!楠翼対丸井ブン太!」




「あ、次の試合、丸井。」
「ブンブーン!頑張れー!」
「ブンブンくーん。」

(丸井君・・・)








「・・・・・」

自分は、天才だと思う。

丸井はそう考えながらコートに入った。

「フィッチ?」
「スムース。」
「よっ・・・ちぇー!サーブそっちかよ。」
「お、ラッキーだろい。」

サーブ貰った丸井は、プレイ!と審判が言うのを待つと、ポンポンとボールを2、3度ついた。

「・・・おら!」

ゲームが始まる。



「らあ!」

「とっ!」




はっきり言おう。
自分はセンスが良い。

丸井はそう感じていたし、それは人から見てもそうだと思う。
勘も良い。運も良い。そのクセ、テニスの事なら考える作業もちゃんと出来る。

感覚と思考のバランスが優れている。
その上でボレーの天賦の才がある。
それが自分の強みだと思っていた。

(でも、それだけじゃ足りねえ。)

強みがあるだけじゃ、此処ではレギュラーの座は勝ち取れない。

弱みだ。
弱点を克服しなければいけない。

自分を知る丸井は、自分の何処が弱いのかも的確に分かっていた。

「3-1!丸井!」




「はあ、はあ・・・!」




先ず、スタミナ。
自分は直ぐに息が切れる。
でもジッとしていられないから、一試合に動ける量が限られてしまう。

そしてもう一つ。
それは勢い。




「4-2!楠!」




(・・・俺は、安定しない。)

テンポにムラがある。
調子よく勝てる時とそうでない時の落差が激しくて、ダメな時はてんでダメだ。

どうにかして、常にベストコンディションを引き出せるようにならないと。
そう考える度、丸井は親友がーーー自分が欲しい物を持つジャッカル桑原が羨ましい。

何時か見つかるだろうか。
自分の限界を越える為の何か。

それはなんなのか、今は分からないけど。
分かる前に、初めてのレギュラー選抜は来てしまったけど。

でも、今。今日。
この試合は負けない。




「ブンブーン!いけー!ぶちかませーー!」
「ブンブン君、がんばー!」
「丸井!勝ったらゼリーあるんだからね!」




(マジかよ。)

声援が聞こえる。ゼリーがあるだって。
そりゃあ勝たないと。
是が非でも勝たないと。

皆が見ててくれて、
ゼリーが待っていて、

それに。




「丸井君!頑張って!」




君がそんな大声出して、応援してくれるんなら。

「・・・ハッ!」

渾身の集中力で打ったドロップボレーが、相手のコートに落ちた。

「ゲームアンドマッチ!ウォンバイ丸井!3-1!」








「きたーーーー!」
「おーおー!強いじゃーん、ブンブン君!」
「よし!」

「やった!丸井君すごいです!」








「・・・当然だろい?」
「あー、負けた・・・なんか言った?」
「ん?勝ったから、ゼリーだなって言った。」
「あっちの彼奴らお前の応援かよ!くそう、女子に応援されるとか羨ましい・・・!」
「だろい?」

そうでなくても文句言うつもりはないけれど。
でも手作りだったら良いな、と考えながら丸井はコートを後にするのだった。












レギュラー選抜戦は、まだまだ始まったばかり。