やっとこさ駅に全員が入った時、入口付近は似たような人でとても混雑していた。
普通に駅を利用している人達も入り交じり、まさにカオス。
固まって固まって、と棗が頑張って大声出してるのを頼りに、一同は駅の柱の一角に寄る。
「やれやれ、やっと一息つけましたね。」
「ふう・・・」
「有難うございます仁王君、本当にすみません・・・」
「結局、言うほど不安定でもなかったじゃろ。」
「そんな事ないです、本当に私何度も転びそうに・・・」
実際、ビーサンを再度履いてから紫希は何度かずるっといきそうになった。
その度にぐんと腕を引っ張って、そして其の度に全くブレることなく体勢を引き戻してくれる仁王に紫希はとてもびっくりした。
男子の体幹って凄い。いや、テニス部の体幹か。
「春日さん、確認ですがお怪我はしませんでしたね?」
「はい、大丈夫です。」
「そうですか。それは何より。」
「・・・・・・」
仁王は、会話がここまで来た時ちろ・・・と目を後方へやった。
とは言っても、タオルを被っているので傍目にはちょっと頭を動かしたようにしか見えなかっただろうが。
「仁王君、バレますよ。」
「え?」
「どうせバレるきに。」
「まあ、それも一理ありますが。」
「???」
「ああ、春日さんはお気になさらず。」
「そう?ですか・・・?」
仁王の体に邪魔されて見えないが、向こうの方には紀伊梨と桑原と、それと丸井が居る。
「ふうーう!髪の毛びちゃびちゃー!」
「どうしてちょっと面白そうなんだよ・・・」
「うえ、靴下まで濡れてら。」
踏み込むたびにぐしゅ、というスニーカーが気持ち悪い。
部活用の履いて来なくて良かった。
「ブンブンもビーサン履いて来たら良かったのにー!」
「いや、寧ろビーサンはこの場合危ないだろ・・・この雨でサンダルって滑るぜ?」
「紀伊梨ちゃん滑ってないよ?」
「お前だから滑らないんだよそれは・・・」
「えー!そんな事ないよ、紫希ぴょんも千百合っちも滑ってないじゃん!」
「え!」
桑原が驚愕の声を上げると同時に、丸井は紫希を目で探し始めた。
そういえばあの2人もビーサンだっけ。足元まで見てなかった。プールじゃ皆裸足だったし。
千百合はまあ良い。幸村が手を引いてくれるだろうから。
紫希は大丈夫か。もしかして見てない間に一度か二度すっ転んでたのかと探していると、向こうに仁王と話す紫希が見えた。
いつも履いてるロングスカートは、雨には濡れつつも特に泥とか血で汚れた様子もなく。
「ああ良かった、仁王が見てくれてたらしいな。」
「・・・・・・」
「ブンブン?どったの?」
「い、いや良いから五十嵐・・・というかお前らはどうしてそんな揃いも揃ってサンダルなんだ?危ないだろ、雨なのに。」
「えー!だってさー、予報だと昼から晴れるって言ってたじゃーん!」
「ああ、そう言えば予報じゃそうだったんだっけ・・・」
とても信じられない。
この、駅構内でも煩いくらい雨音の鳴り響く大雨の中で。
「やっぱり天気よほーなんて見てもあんまり意味ないですなっ!うん!」
「いや、それも極端だろ・・・」
「・・・・・」
会話する紀伊梨と桑原の声を横耳で聞きつつ、なんとなく視線を向こうから外せないで居ると、仁王がタオルを被ったままこっちを向いた。
目が合った。
その直後にパッと向こうを向いてしまったけど。
(・・・何だ彼奴?)
気のせいかもしれないが、ふと目が合った・・・というよりは、自分がそっちを見てるのを知っていて合わせてきたみたいな感じがした。
何か言いたいことでもあるんだろうか。あるの、と聞いたところであの男は答えないだろうけど。
「・・・・・ま、良いか。」
誰かに、というよりは自分に言い聞かせてるような声音だった事に、丸井は自分でちょっとびっくりした。