「うらっ!」
パン!と良い音がして、向日の打ったスマッシュが鋭くコートに落ちる。
「向日いい感じじゃん!」
「へへ!何か涼しくなってきたしな!・・・曇ってるん、だよな?」
「ああ、そうだなあ。」
チームメイトと見上げた空は、確かに青空見えてはいるものの、あからさまに灰色の重たそうな色をした雲が浮かんでいる。しかも動きが速い。
「練習中に来ると思うか?」
「練習中には来ないだろー。終わってからじゃね?」
「だよな。」
まあ何にせよ今現状で大分涼しいことは確かだから、ラッキーラッキー。そう思って、向日は交代のためにコートから出た。
「ふー・・・あれ?」
視線の先には可憐が居て、ちら、ちら、と空を伺っている。
向日はその気もそぞろな様子を見て、背後からそっと近づいた。
「・・・・わっ!」
「わあっ!?ああなんだ向日君・・・もうっ!びっくりさせないでよっ!」
「ははは!悪い悪い!でもどうした?天気気になんのか?」
「ああうん、ちょっとね・・・」
「心配しなくても、練習中は持つだろ!降るとしたら夜じゃねーの?」
「うん・・・」
可憐の顔は暗い。
「?何だよ、そんなに雨が困んのかよ?」
「・・・・・私ねっ。」
「おう。」
「・・・・・雷怖いの・・・」
「・・・は?」
そう。
実は可憐は、雷がとても苦手である。
しかも昼日中なら兎も角、夜になってからのそれなんて最悪。
暗いし煩いし怖いし。
今までだって雷雨の日はあったけど、学校は日中だけだったからどうにか無視して居られた。でも泊まり込みでとなると話は別。
「雨だけならまあ良いかって思うんだけど、この空だと・・・」
「あー。雷きそうだなー、確かに。」
見てごらん、あの濃い灰色の雲。ただでさえ夏は積乱雲が発生しやすくて、それに伴って雷も多いのに。
というか。
「・・・気のせいかもだけど、何か既に光ってねーか?」
「怖いこと言わないでっ!頑張って気にしないようにしてるんだからっ!」
もう私行くからねっ!と言ってそそくさとその場を立ち去る可憐。まるで向日から離れることによって、雷からも離れられると思ってるかのよう。
そんなに嫌いなのか。
「大丈夫か彼奴?」
言っちゃなんだけど、多分今日は雷雨の中でもきつい方になりそうだぞ。向日は空を見上げながらそう思った。