選抜試合が始まってから、重なり続けるゲーム。
3試合負けたら抜けろと言うお達しの通りに人数は減っていき、
もう勝ち残りは既に最初の半分。
仁王は負けた。
桑原も負けた。
丸井も負けた。
レギュラーはシングルス選手3人、ダブルス選手で4人。
補欠を合わせて、余程の選手でない限り10人は多いかという人数で決定される。
つまり、半分脱落したと言ってもまだまだここからふるい落とされるのだが。
「ゲームセットアンドマッチ!ウォンバイ柳、3-1!」
「ゲームセットアンドマッチ!ウォンバイ真田、3-0!」
「ゲームセットアンドマッチ!ウォンバイ幸村、3-0!」
可哀想だろ。
止めてあげてよ。
よもや立海大附属テニス部の上級生に向かって、こんな事を思う日が来ようとは。
「容赦ないな彼奴らw」
「負ける感じが微塵もしませんね。」
「つよーーーい!ねえ、まだ一回も負けてないよね?」
「ええ。」
(すごい・・・)
圧倒的。としか言いようがない。
ゲームカウントもさることながら、試合を見ているとゲーム運びが如何に危なげないか、ひしひしと感じられる。
「第1コート!芥子一也対柳蓮二!」
「お?」
「3年生ね。」
最初にルール説明された際、組み合わせは全くのランダムの可能性もあったが、やはり多少の法則性はあるらしい。
基本的に上級生の方が強いと言う事を前提に、先ずは大凡同学年同士で試合を行い、勝てば上級生と当たるようになる。
柳、真田、それに幸村は、さっきまで2年生以下としか試合していなかったのだが。
「プレイ!」
審判の掛け声と共に始まる試合。
流石というかなんというか、3年生は流石に身のこなしからして下級生とは違う。
「流石に強いなw」
「でもでも!やなぎー達は、3年より強いんだよね?」
「どうかな。」
「えええ!?」
「その時々の状況にもよりますから。」
「もしかしたら勝った時は、偶々弱い人に当たったりしてたかもだしねー。」
「むむむむむ・・・・やなぎー!頑張れー!君なら勝てるぞー!」
何様のつもりなのよ、という千百合のツッコミが柳の後方から聞こえてくる。
見ていなくても分かる。
棗がどんな目でこっちを見ているか。
紫希がどんな風に心配しているか。
千百合がどんな声をかけようとしてくれてるか。
紀伊梨がどんなに全力で応援してくれてるか。
「40-15!柳!」
「強いな・・・流石だ。」
「とんでもない。まだまだです。」
そう、まだまだだ。
柳はそう思う。
「・・・はっ!」
こう言うとなんだが、幼少の頃はそれなりに・・・いや、それなり以上に強かった。
中学に上がっても通用すると、当然のようにそう思っていた。
でも違った。
「ゲーム柳!1-0!」
幸村。真田。
あの2人の様な者が、全国にはきっと、もっと居る。
それを追わないといけない。
追いついて、追い越す気持ちを持ち続けなければ、とても頂点へなんていけない。
「ゲーム柳!2-0!」
その為にはスキル。身体能力。地力。
それにーーーデータ。
自分の最強の武器であり、自分を絶対に裏切らない自分の化身。
(芥子先輩のクセからして、次にクロスに打つと決まる確率・・・79.85%!)
「40-30!柳!」
(良し、データ通りだ)
序に、後ろの誰かさんが叫ぶ確率は91.354%。
「いけやなぎーーー!押し切れーーー!」
「煩い、もう。」
「まーまーw」
「紀伊梨ちゃん、柳君にはいっぱいお世話になっていますから。」
(・・・これも、データ通り。)
全て、予測の範囲内。
得点も、失点も、声援も。
でも。
「はっ!」
「ふっ!」
「・・・其処だ!」
でも。
それでも。
「ゲームセットアンドマッチ!ウォンバイ柳!3-1!」
「やったーーーー!凄いぞやなぎーーー!」
「3年生相手にゲームカウントあれかよw」
「圧勝ですね!」
「びっくりした・・・本当に強いのね、彼奴。」
(それでも・・・嬉しいものだな。)
勝利も。
声援も。
頭の中にあるだけじゃ価値なんてない。
現実に勝ち取った物を胸に、柳は勝利を納めたのだった。