「第6コート第7試合!駒田勲人対真田弦一郎!」
皇帝。
皇帝だ。
真田が3年生と試合するぞ。
各所からそんな声が聞こえてくる。
「なんだかそわそわしてるね!」
「騒ついていますよね。」
「いやー、しかしあれだね・・・幸村も大概と思ってたけど、やなぎー君も彼奴もオーラあるな。」
(確かに・・・)
千百合も認めざるを得なかった。
なんなんだろう、弱冠13歳にしてあの威圧感。(しかも正確には、誕生日がまだなので12歳だ)
特に相手に対する威嚇という意味では、真田の眼光は幸村や柳のそれより断然上だ。
「お腹減ってるライオンみたーい!」
「言い得て妙かもねw」
相手を食う。
必ず勝つという、あの飢えに似た気合いの形は。
「よろしくお願いします。」
「ああ・・・」
可哀想に、駒田は3年生にして呑まれ切ったまま試合は始まってしまった。
「プレイ!」
こうして試合は始まったものの。
「・・・ふっ!」
ドッ!!
「はあっ!」
ドン!!
「ぬんっ!!!」
ドカッ!!
「ゲーム真田!2-0!」
「おおおおー!凄いぞ真田っちー!」
「聞いた事ない音がします・・・!」
「ドカッてwテニスの音かよw」
「徹底してるわね彼奴。」
真田弦一郎という男の辞書に手加減などという文字は無い。
特に格上と見做している(見做しているだけで、実際実力的に上なわけではないが)3年生との試合に於いて、緩急なんてつけてる余裕など無い、と真田は思っていた。
駒田はとっくのとうに戦意を喪失しかけているのに、真田の方はヒートアップしていく。
(まだだ!まだこんなものではない、全国の壁は、全国の壁は・・・!)
『2人で天下を取ろう。』
そうだ。
幸村と一緒に天下を取るんだ。
その為に今。
どんな試合だって。
公式戦じゃなくたって。
どんな相手だって。
「絶対に・・・俺は負けん!」
「おーー!そーだ、いけ真田っちー!」
「真田君!頑張ってください!」
「勝てー!勝つと思うけど勝てー!」
(・・・頑張れ、真田、)
千百合が内心で呟いた丁度その時、マッチポイントを決めるチャンスボールが上がった。
「・・・はああああ!!」
ドゴォ!!!
「・・・ゲ、ゲ、ゲームセットアンドマッチ!ウォンバイ真田、3-0・・・!」
「・・・!・・・!?」
「紫希ぴょん!紫希ぴょん!しっかりするんだ!」
「おーいw大丈夫かーw」
真田が渾身の力で返したボールは、コートを抉ってその勢いのままバウンドし、フェンスにーーー紫希の顔の至近距離に飛び込んだ。
怖い。
フェンスなんか役に立たない、凹んでるじゃないか。
「・・・あんたねえ!こういうのを止めろって言ってるのよ!」
「な!なんだと!?」
「見て分かりなさいよこの凹み!人が居るとか居ないとかじゃなくて、あんたその内このフェンス破るわよ!」
「ぬ、ぬう・・・!」
それもそうだと思い、思わず詰まる真田。
「おい、マジで凹んでるぜ・・・」
「ああ。真面目に破る日が来るかもしれないな・・・」
「恐るべし皇帝。」
口々にいう部員達。
だがフェンスが破れるくらいどうという事は無い・・・皆がそう思うようになるまで、後2年。