First order 2 - 3/5


レギュラー選抜ももう終わり。
そんな時、とうとうその試合は始まった。




「・・・第5試合!3番コート、佐川邦夫対幸村精市!」




その瞬間。

静寂が広がる。








「・・・棗君、確か佐川さんという方は、」
「そ。部長さん。」
「おおお!つーよそー!」

紀伊梨の感想が、全てを物語っていた。

強そう。
でも、「そう」なだけ。

強い。まずい。どうしよう。負けるかも。
そんな気が全然湧いてこない。
誰の胸にもだ。








「よろしくお願いします。」
「ああ。よろしくな。」

挨拶。
サーブ決め。

真田の試合の時にあれだけざわめいていたギャラリーは、今やすっかり静まり返っていた。

他のコートでは、もう試合は無い。
これが最後の試合であり、勝ち星の上位順にレギュラーの枠は埋まっている。
詰まる所もう、この2人がレギュラーである事は確定していた。
だから本来、試合などする必要は無い。

だが、佐川は思ったのだった。

けじめを付けねばならない。
自分と、幸村と。
果たしてどちらが強いのか。








「・・・・・」

無言で見つめる千百合。

分かっている。
幸村はきっと勝つ。

(・・・でも。)

勝つ事と、応援する事は全然別な話なのだからして。

皆が固唾を飲んで見守る、耳が痛いほどの静寂の中で、千百合は1人すうと大きく息を吸った。






「・・・頑張れ!」






(・・・ああ。)

幸村は思わず微笑んでしまった。

何時だってあの子の声は。
自分を包み込んで背を押してくれる。

「プレイ!」

審判のコール。

プレッシャーなど吹き飛んでしまった。
視界は何時もよりクリアに。
頭が冴えかえって、ボールを上げた感触も、ラケットの重みも、ハッキリ伝わってくる。




「・・・ハッ!」




ドシュ!
という音と共に決まる、サービスエース。

「・・・佐川部長が。」
「は・・・反応出来てない・・・」








「言っちゃいけないって分かってて言うけどさー。」
「・・・気の毒ですよね。」
「今のゆっきー無敵だもんね!」
「ちょっと、油断は駄目。」
「いや妹よ、無敵ってそういう意味じゃない。」
「は?」
「今の幸村君は・・・ほら。」
「千百合っちがついてるもんね!」








「わ・・・1-0!幸村!」

戸惑い気味の審判の声。

負けない。
負けない。

今の自分で。
君が居るなら、俺は。








(ーーー絶対に、勝てる)








その後。
審判が3-0にて幸村の勝利を告げるまで、凡そ10分。