Training camp – in Hyoutei gakuen -:Audience 1 - 2/4


なんて朝食の時は軽くそう返事した可憐だったが。

忘れてた。
今回の合宿は、ただでさえ忙しいのにイレギュラーの発生率もおそろしく高いのだった。


「跡部くーん!」
「きゃー!こっち向いてー!」

「あ、あのうーーーー」

「ちょっと、もうちょっとそっち詰めてよ!」
「もうこれ以上移動出来ないんだってば!」
「あ、あの男子邪魔よ!跡部君が見えないー!」

「あのうっ、もしもしっ!そこ通して欲しくてーーー」

「あー!今度はあっち行っちゃう!」
「あーん、もっかいこっち来ないかなー!」
「跡部君、素敵ー!」

「通してくださあああああいっ!」

ここまで大声出して、やっと用事が出来る。
そう、今日は土曜日。




「はあ・・・はあ・・・ああ疲れた・・・!」

今回の合宿で、今日と明日は土日に入る。
世間の学生は夏休みといえど、やっぱり平日と土日の差というのはあるものなのか、昨日までと比較にならないような数のギャラリー。
もう、その制服うちのじゃないでしょ、他校生は出て行って下さいとか言う気にもなれない。キリがない、こんな人数じゃ。

さっきから散らしても散らしてもちょっと放っておくとまた人だかりが復活するし。跡部が何か言えば多少は収まるかもしれないが、その跡部だってずっとこの件にかかずらっていられるわけじゃない。
結局、無視するしかないという消極的な現状。

(あの人達も別にこっちに意地悪しようとか思ってるわけじゃないんだろうけどなあ・・・いかんせん気づいてもらえないんだよねっ。)

さっきだってそう。
別に跡部にきゃあきゃあ言ってる女子達は、可憐を殊更無視しようとか思ってるわけではない。そもそも可憐に意識がいかないのだ。目の前に居るのに。

「おい。」
「え・・・?あ、向日君っ。」
「大丈夫か?調子悪いのか?」
「ああうん、大丈夫っ。ちょっとその・・・別の意味で調子が悪いっていうか、狂ってるっていうか・・・」
「ああ・・・」

ちらりとそっちに目をやるだけで向日も大凡は察する。
というか、そういう意味なら自分だって今日は調子が狂ってる。

「マジうるせえよなー!クソクソ跡部め、モテやがってよ。」
「跡部君が悪いわけじゃないけど流石にね・・・って、普段試合中に頑張って煩くしてるこっちのセリフじゃないかもしれないけどっ。」
「いや、それは違うぜ!俺達のあのコールは作戦だ、作戦!今日のあれは野次!」
「そ、そうかなあっ?」

野次というならそれこそ普段の自分達のコールは相手にとって野次以外の何物でもなかろうもんと思うのだが。
ただ、集中力を乱すための相手側の作戦だと思えば寧ろ負けん気や張り合いも出るかもしれないが、黄色い歓声となると微妙に種類の違う疲労感を覚える気もする。

「それより、お前・・・っていうか、マネジは大丈夫か?」
「えっ?」
「ほら、俺ら以上にマネジは外とこっちと行き来するじゃねーか。邪魔だとか言われたり、小突かれたりしてねーかって事!」
「あはは・・・でも、今のところはしてないよっ!少なくとも私は大丈夫っ!」

ただ、それはあくまで「自分は」の話。
他の人はどうだかわからない。もしかしたら見えないところでそういう目に遭ってる人が居るのかもしれないし、仮に居ないとしても、何らかのトラブルの種になりそうな状況に変わりはない。

「今日一日、無事に終わるかなあ・・・」
「は?」
「え?何か変なこと言ったっ?」
「明日日曜日だから、明日もこうだろ?」
「・・・・・・」

そうだったね。
と返す気もなくなるような、この倦怠感よ。