可憐は給水を終えてタンクを戻した後、跡部の元へ向かった。
今しがた会った2人組のことを報告する為にである。
もしかしたら自分達の事は諦めても、他のマネージャーにもあの調子でぐいぐい行ってるかもしれない。後続を守るためにも、ちゃんと言っておかなくてはいけないと思ってのことだったが。
「そうか、5件目だな。」
「ごっ・・・ええっ!?」
どうやら同時多発的に似たような事がそこかしこで起こっていたらかった。
いや、まずいだろうこれは。
「跡部君、どうするのっ?」
「アーン?どういう意味だ?」
「どういうって・・・どういうも何も、このままじゃーーーー」
まさか座して何もしないわけもあるまい。
指示を仰ごうと思った、その矢先だった。
「貴方達、いい加減にしなさい!」
可憐がバッとそちらを振り返ると、フェンスの外でギャラリーに囲まれるようにして、1人の女子が立っている。
誰だ・・・いや。覚えがある、あの顔。
(・・・雨見さんっ!?)
叫んだのは体操部を休憩時間に抜けてきた雨見だった。
周りの女子達は一瞬怯むが、テニス部のジャージを着ていない事で、「こいつ部外者っぽいのにしゃしゃり出て来てなんなのよ」と思われるのは間もなくであった。
「誰よ貴方。」
「少なくともこの学園の生徒です。氷帝生ですらない貴方に、誰よと言われる理由はありません。」
話しかけてきた他校生の女子に怯まずに正論で返す雨見。
実際ここに居るのは皆が皆他校生というわけでもなく、テニス部でない氷帝生も少なからず混じっているのだが、それでも雨見に物申す資格があるわけではない。部外者度合いは一緒である。
「・・・でも貴方もテニス部じゃないんでしょ?」
「確かにテニス部ではないけれど、今も言ったように私はこの学園の生徒です。同じ学園の部が迷惑行為に晒されているのに見過ごすのは、私の主義に反します。」
「迷惑行為だなんてーーー」
「今の状況が迷惑になってない、とは言わせませんから。大声どころか部員の行き来の邪魔までして、挙句にマネージャーの手伝いと称して敷地に強引に入り込もうとするなんて、部活動の妨害以外の何物でもないわ。」
何人かが気まずげに身動ぎした。
身に覚えのある者か、もしくはやってみようかと考えていたのだろう。
「とにかく、見学するなとまでは言いませんから、もっと節度をもって普通に見て下さい。出来ないなら帰って。」
ギャラリーは黙った。
そう言われてじゃあ帰りますなんて帰宅する者なんて居るはずがないが、この状況では暗に帰れと言われてるも同じなので、見学の姿勢にさっと戻るのも躊躇われる。
「はあ・・・・」
膠着し出した空気に、小さく溜息を吐いて割って入った者が居た。
網代だ。