(ええと、跡部君跡部君っ。)
可憐は夜の廊下を一人歩く。
(暗いなあ・・・)
目指しているのは跡部の居る生徒会室である。
この辺りは合宿に当たって関係のないエリアで、従って人感センサーが切られているので、非常灯が足元に点いているのと、可憐自身のスマホのライト以外は真っ暗。
とはいえ、雷雨が苦手ではあっても暗いだけなら全然我慢出来る方である可憐は、左程びくびくしないで進むことが出来た。
「・・・あっ。」
そろそろ生徒会室にさしかかろうかという時であった。
光がドアの隙間から漏れている。ということは、中に跡部がいる可能性は高い。
コンコン、とノックをすると、入れと聞きなれた声がした。
居た。やっぱりここだ。
「お邪魔しま・・・良い匂いっ。」
「桐生か。丁度よかった。」
「丁度っ?」
「今入った所だ。飲むか?」
部屋は紅茶の香りに満たされていた。
そういえば、いつかの時も網代に誘われて、忍足と3人でティータイムしにここまで来たことがある。
「跡部君、何してたのっ?今忙しくないのっ?」
「まあまあって所だな。今休憩しようと思っていた所だ。お前は?」
「へっ?」
「用事があってきたんだろう?急ぎなら、別に無理には勧めねえが。」
可憐の分であろう、空のティーカップをちょっと振って見せる跡部。
お茶に付き合う気があるのかどうか伺っているのだ。
本来勿論、お茶なんてする予定ではなかった。なかったのだが。
「・・・・・・」
「おい、どうなんだ?」
「・・・あのっ、お願いがあるんだけどっ?」
「?」
「・・・・邪魔しないから、暫く此処に居ても良いかなっ?」