Training camp – in Hyoutei gakuen -:Extream heat 1 - 3/5


それから暫くして、可憐がパシパシ音の存在を忘れつつある時だった。

今度は別の場所でパシパシ音が鳴り出したのだ。

「・・・・・?」
「忍足?どうした?」
「・・・いや。悪いねんけど、ちょっと先に行っといて。」

聞きつけたのは忍足だった。
そこの垣根だ。何か音がする。

「・・・誰か居るん?」
「うお!びっくりした!誰ーーーなんだ、忍足侑士か。」

そこに居たのは、カメラを首から下げた男子だった。
着ている制服は基準服。
キャップを被ってタオルを首に巻き、赤いアンダーリムの眼鏡をかけている。

「どちらさん?」
「俺?俺は青木二葉だ!」
「そうなん、よろしゅう。」
「ああ、よろしく!色々とな!」
「色々?」
「俺は新聞部だからな!スクープを取るのが仕事なんだ。」
「・・・やから?」
「だから、スクープの種をいっぱい持ってる男には、丁重に挨拶する。」

スクープの種。
を、いっぱい持ってる男。

「・・・俺?」
「そうだ、勿論!」
「跡部やのうて?」
「跡部は勿論だけど、お前も。」
「俺はスクープの種を持ってるつもりはないんやけど。」
「冗談は眼鏡だけにしておけ。入学式に遅刻をして、水泳大会ではバスケ部の上級生と女の取り合いをして、挙句全校生徒の前で返り討ちにしたのはどこの誰だ?」

そう言われると事実ではあるので忍足は言い返せない。
というか、なんで眼鏡が冗談だと知られているんだろうか。新聞部怖い。

「・・・まあ、否定しても聞かへんタイプのような気するからええけど。それはそれとして、この辺でなんやパシパシ鳴ってたのん知らへん?」
「ん?ああ!俺のカメラの音だな!」
「カメラの音。」
「そう、これ!俺の愛機なんだ!姉ちゃんとおそろなんだぞ!」

と言って、素早く構えてパシッとまた一枚。
ぼーっとしてる間に撮られた。まあ良いけど。どうせ何枚も隠し撮りされてるだろうから。

「そうだ。もののついでなんだが、ちょっと頼みがある。」
「頼み?」
「だーいぶ難しい事を承知で聞くけど、ちょっと2時間くらい手が空くテニス部の人は居ないか?」
「居らへん。」

居るわけないだろ、そんなの。
2時間の休憩とか、こっちが欲しいくらいだ。

即答する忍足に青木は肩を落とすが、そのため息はどこか「まあわかってたけどね」という風に聞こえた。

「やっぱり無理かー・・・どーしたら良いんだかなあ、合宿中はテニス部は泊まり込みだから、終わる頃には俺は強制締め出しされる時間だし・・・」
「何の用事なん?」
「いや、インタビューを少々。」
「別に合宿中やなかったらここまで忙しないねんし、わざわざ今に拘らへんでも。」
「そうもいかないんだよ・・・・というか、元々インタビューは諦めてたんだよな。テニス部は忙しいし、俺も他の部も見たいから忙しいし。おまけにイギリスに合宿行くとかいうから、これはもう写真だけで満足するしかない・・・と、思ってたところにこれだぞ!通い詰めるだろ!なあ!」
「ああ、そういう。」

つまり青木は今、喉から手が出る程欲しかったものを一度諦めた所に、再びチャンスがやってきたわけだ。惜しいと思う気持ちは倍。逃したくないと思う気持ちは更に倍。

「後まあ、タイミング的にな・・・」
「タイミング?」
「あ、いや!こっちの話だ!兎に角、何かの奇跡で暇な部員が居たら連れて来てくれ!一つよろしく!」

ビシ!と敬礼をする青木に、忍足はええけど、と一応引き受ける。
一応ね、一応。引き受けるだけは。

(まあ無理筋やろうけどな)

そう思った忍足だったが、この推測は数時間後に覆る事になる。