「時間だよー!皆、お昼お昼ー!」
タイムキーパー役の女子の声が聞こえた時、可憐は嬉しくて嬉しくてちょっと泣きそうになった。
「食堂!食堂!」
「早く皆、早く!クーラー効いてる所へ!」
この暑さでこの運動量、死人が出るぞ。
くちぐちにそう呟きながら、同グループの部員がわーっと屋内へ走る。
可憐もそれに倣い、片づけは最低限にして校舎内に入ると、拭っても拭っても滴ってくる汗をすっと冷やしてくれる冷房の風。
ああ、嬉し過ぎてやばい。文明の利器万歳。
「た、助かったっ・・・!」
「死ぬかと思ったよね・・・」
這う這うの体で食堂まで歩く。
これはまずい。疲労感が昨日までと段違いだ。
「これ選手やばくない?」
「うんっ、私もそう思うんだけど、これも全国のための練習だから・・・」
マネージャーである可憐達がこんなに暑いのだ。この上運動している部員達の体感温度はいかばかりか、想像もしたくない。
ただ、これは我慢するしかない事でもある。
というのも、全国大会本番の日の気温なんて誰にもわからないからだ。
涼しかったら良いけれど猛暑日に当たるかもしれない。基本的に会場は屋外だから、そうなってから「暑い日は屋内で練習してたので慣れてないんですー」とか言ったって遅い。
暑さからくる疲労感に体を慣らすという意味では、この暑さの中プレイすることも意味がある。
が。
「それマネジに関係なくない?」
「そうなんだよねっ!」
そう。
それは全部選手のための練習であって、マネージャーには一つも関係ない。
それこそ全国本番の日だって、本当にまずいと思ったら、マネージャーは幾らでも日陰に散って冷たい飲み物飲みまくって、手持ち用扇風機にでも当たって涼んでいれば良いのだ。
いくら選手と苦労を分かち合いサポートするのがマネージャーの本分とはいえ。
「それこそ、この間真理恵が倒れたばっかりだって言うのに・・・・」
「ああ、新城さん・・・可憐、その場に居たんでしょ?」
「うんっ。あの日も暑かったなあ・・・」
また誰か倒れかねないね。
そう言ったチームメイトの言葉が、何故だか嫌に耳に響いた。