その後も可憐は横になりつつ、隣に座る青木の質問にポツポツながら話をしつつ時間を過ごし。
やがて、もう30分もしたら青木が締め出しを食らう時間になろうかという時、テニス部のある方角から歓声が上がった。
「ん?何だあれ?」
「あっ、締めの挨拶が終わったんじゃないかなっ?」
「締めの挨拶?」
「多分練習が終わったんだと思う。今日で合宿最後だから、全行程終了の挨拶を跡部君がやって、もう解散したんじゃないかな。」
「へー!なるほどな、皆一山越えられて喜んでるわけか。・・・ん?」
全員解散した。
という事は。
「じゃあ、俺はもうお役御免というか、誰かが此処に来て交代になるわけだな?」
「あ。うーん・・・それはどうかな?多分誰か来てくれるとは思うけど・・・」
「??何だその煮え切らない返事は。もうフリーだろ?そりゃ友達のお見舞いに来るだろ!」
「うん、確かにもうフリーなんだけど。でも、今日は合宿最後で、食堂でちょっと良いご飯が出るから・・・」
「え!?まさか、そっちにかまけて誰も来ないかもって事か!?そんな馬鹿な!というか、飯はお前も食べなきゃだろ!」
「そうなんだけど、さっき私、忍足君に食欲あんまりないってLINEしちゃって・・・」
「いやまあ確かに体調悪いと食欲失せるけどもさ!何かは食べようぜ何かは!えー、しかし、じゃあ・・・えー・・・?俺いつ帰ったら良いんだ?」
「ううん、でももう大丈夫だと思うし、」
「え、嫌。帰らないぞ、俺忍足に怒られるの怖いもん。」
「え。」
「俺、彼奴の怒り方肌に合わない。こう、がーっ!と怒鳴られたりはへーきなんだけどさ、静かーに人に見切りつけるタイプじゃね、彼奴。嫌だ。怖い。良いって言ってもらうまで帰らない。」
「忍足君はそんなタイプじゃないと思うけど・・・でも、それはそれとして、もう校門閉まっちゃうよっ?テニス部は許可があるから平気だけど、青木君は違うし・・・」
「う・・・それもそうなんだが。うーん、困ったぞ・・・」
「うーん・・・それなら、誰か呼ぼっかっ。来てもらっちゃう人には悪いけど、部外者の青木君にこれ以上迷惑かけられないもんねっ。」
可憐はスマホを手に取った。
その少し前、可憐の見立て通りテニス部は跡部の挨拶を聞き、解散した所であった。
「ううん・・・・はあっ!」
宍戸は整列が散り散りになっていく中、歩きながら少し伸びをした。
ああしんどかった。しんど過ぎて、普段使ってるところが逆に最後の方使えなかった気がする。
「つ~っかれた・・・」
隣の向日もしんどそうオーラ全開である。なんだかんだ、連日きつい練習をしていたので、睡眠で取り切れなかった分の疲労は蓄積している。
「だな。まあ、明日は片付けだけすればフリーだし、もう練習は終わったし。」
「そうだな、飯だ飯!・・・あ。」
「?」
「そうだ、桐生のやつ飯どうすんのかな。」
「飯?って何の話だ?」
「あれ?亮、知らなかったのか?桐生のやつ、熱中症で倒れたんだよ。」
「え。」
え。おい。
何だそれ聞いてないぞ。
「お、おい!何だよそれ、知らなかった・・・っつうか、救急車なんていつーーー」
「救急車は別に来てねーよ?落合先輩と忍足があれこれテキパキやってくれて、結局保健室で休んでたら大丈夫って程度で済んだっていう・・・亮?」
宍戸はショックだった。
沖縄に行った日、忍足が網代を好きなんだと知り。それなら可憐のお守りをあまり忍足に任せるわけにいかない、自分が進んで気を付けてないとと思っていた。
のに、倒れていたことなんて全然知らなかった。それどころか、やっぱりフォローを忍足に任せてしまう始末。
ちょっとこれはどうなんだ、忍足と可憐の友人として。あまりに不甲斐なくないか。
「え、おい待て!じゃあ今は桐生は一人なのか?だって落合先輩も居たし、忍足も居たし、」
「いや、それは何か。誰だっけな、何か半分成り行きで巻き込まれた奴が見ててくれてる的な・・・えー、見学者の1年で?青木?だっけ?」
「・・・誰だそいつ。」
「いや、俺も聞いた話だし、知らねーけど。」
「ねえ、今青木って言った?」
割り込んできたのは女子マネの声だった。
「言ったけど。」
「え、その子が保健室で桐生さん見てるの?やばくない?」
「何が?」
「だって噂になってるよ?そいつ変人でお風呂を覗きたがる変態で、カメラ持って女子に張り付いてるストーカー男子だって。」
「「え・・・」」
向日と宍戸は揃って青くなった。