Sea world - 4/8


こうして可憐は、芥川を背負った忍足と一緒に、一足早くペンギンを見ることになった。

「ごめんね忍足君っ、わざわざ・・・」
「どういたしまして。でも、別にそんな大した事ちゃうで。」

ブースを幾つかスルーして、完全に別のエリアへ。
薄暗かった視界が開けて、半屋外のようになった明るいエリアに、求めてるものが。

「あっ!あそこ、ペンギンさんっ!わあ、いっぱい居るーーー」
「可憐ちゃん、段差あるで。」
「わあっ!あ、有難うっ!」

いけないいけない。だからこういう、目の前の事だけ見てはしゃぐところがいけないんだ。

内心で反省しつつ水槽・・・というか、柵で区切られているペンギンエリアに近づく。

「すごいすごい、近いなあっ!あの手に付いてるのなんだろうっ?」
「個体識別のタグちゃうやろか。ああ、ほら。此処に色と名前のデータ載ってるで。」
「あっ、本当だっ!ちゃんと一匹づつ名前があるんだねっ!」

可憐がペンギンを堪能する傍ら、忍足は折を見てちょいちょい「芥川、ペンギンやで。」とか話しかけているのだが、芥川は起きない。いっかな起きない。

こんなんじゃ最早来てないのと同じだろ。
忍足が溜息を吐いた時、丁度目の前にペンギンが歩いてきた所であった。

「あっ、こっち来たっ!」
「・・・・・」
「おーい、こっちだよっ。」
「・・・・キュ。」

手前まできて、ふいっとまた背を向けて去っていくペンギン。
その背を見送って、可憐は可愛いなあと頬を緩ませた。

「ペンギンって、歩き方が可愛いよねっ!」
「歩き方?」
「うんっ!私、あのヨチヨチしたちょっとづつ進む歩き方が好きなんだっ。なんだかこう・・・シンパシー?を感じるっていうかっ。」
「シンパシー。」
「えへへ・・・あんまりさくさく歩けてない感じとか、一生懸命な感じとかっ。」

世の中には色んな動物が居て、その中には実に早くスタスタと移動するものも沢山居る。
そんな中、水中ではとても早いとはいえ、陸上ではいかにも大儀そうにえっちらおっちらと歩く姿は可憐にとって自分と重なるのだ。

「・・・そうやな。言われてみたら似てるな。」
「やっぱりっ?そうだよねっ!」
「賢いところとか、ふっと気づいたら凄い成果上げてるところとかそっくりやわ。」
「・・・へっ?」

可憐が思わず隣を見ると、忍足は小さく微笑んでいた。

「ペンギンて、なんでこんなよたよた歩くか知ってる?」
「えっ?元々こうだっていう話じゃないのっ?」
「これな、長距離歩くのんに効率ええねん。やからこんな風に歩いてんねんで。」
「そうなのっ!?っていうか、ペンギンってそんなに移動するのっ?」
「せやな、餌無いて思うたら数百kmの移動はザラやさかい。」
「数百・・・・!?」

こんな歩き方で数百km移動。
可能なのかそんな事。俄かに信じられない。

いや。びっくりなのはペンギンの生態もなんだけど。

「あ、あのう、忍足君っ。」
「うん?」
「あの、私ペンギンがそんな事出来るって知らなくってっ!」
「そうなん。」
「うんっ!だからその、そういう所が自分と似てるって思ったわけじゃないからねっ!」
「せやな。知らんかってんから、そらそうやろな。」
「そうっ!そうなのっ!」
「ただそれはそれとして、俺はその辺含めて似てるな思うけど。」

可憐は嬉しくも恥ずかしい思いでちょっと赤くなった。
それを見て、忍足はお世辞とちゃうでと言おうかどうか、笑いながら迷った。そんなつもりはないが、追い打ちみたいな事になるかもしれない。

「んにゅ・・・あれ?ここどこ?あ!ペンギンだ!」
「ああ、やっと起きたん。」
「芥川君っ、ここ水族館だよっ!海ヶ浜シーワールド!レポート書かなくっちゃっ!」
「・・・レポ・・・あー!そうだった、忘れてた!っていうか、寝てた!」

うわやば、と言いながら、持っていた鞄からノートを取り出す芥川。
今更遅いと思うべきか、今からでも起きただけ救われると思うべきか。

「芥川、今書き出すんは辞めとき。」
「A?どうして?」
「もうすぐイルカショーやるさかい、どうせやったらそっちを書いた方が書きやすい思うで。」
「あ、そ~なんだー!」
「えっ?もうそんな時間・・・わあっ!本当だ、もう戻らなくちゃっ!」

30分も猶予があると思っていたけど、いざ移動して見ていると30分なんてあっという間。

しかし戻る準備を始める3人を見て、声をかけてきた人が居た。服装からして、ここのスタッフである。

「君達、どこ行くの?」
「えっ?」
「A?どこって?」
「イルカショー始まるんで、水槽のブースに戻るんです。」
「あー、あのねー・・・」