Sea world - 7/8


「芥川君っ!」
「ん~・・・・」
「芥川、ほら。もうそこの水槽で終いやから、頑張り。」
「ふにゅる~・・・」

芥川は、アザラシの水槽の前で死に物狂いで睡魔と戦っていた。

忍足の見立て通り、明るいエリアにずっと居た芥川は確かに比較的起きていたし、おかげでレポートも捗っていた。
だが、それはあくまで延命。そして今、その延命も終ろうとしているのだった。

「・・・・zzz・・・はっ、う~ダメダメ、起きて・・・なくちゃ・・・zzz・・・」
「・・・こらあかんな。」
「ううう・・・レポートどうしようっ?」
「まあでも最低限の材料は集まったやろし。後はまあ適当に膨らましといたらええさかい。」

そもそもそれ以前にその作業の間起きてられるんだろうか。
とは思ったが、それは2人とも考えない事にした。

「それより、あっち移動しよか。そろそろほんまに落ちるし、ベンチ行っとこ。」
「そうだねっ!」
「それで、ちょっと休憩したらちょっと戻って回ろか。」
「えっ?」
「可憐ちゃん、最初のペンギン以外殆ど見てへんやろ?」

そう。
ここまでラッコとかアシカとかアザラシとか色々居たのに、可憐は芥川が寝ないかどうかが気になって、水槽の前には居ても気もそぞろだったのだ。

「せやから。」
「でも忍足君、芥川君を運んでたし疲れてるんじゃ、」
「芥川も結構起きとったから、言う程疲れてへんで。大丈夫やから気にせんといて。行こ。」

「・・・・うんっ!」

そう。
返事した丁度その時だった。

「あ、居たわ。」
「おい、忍足!桐生!ジロー!」

後方からの声に振り向くと、宍戸と網代がこっちへ向かってきていた。

「茉奈花ちゃん、宍戸君っ!」
「お疲れさん。どうやった、ショーの方。」
「凄かったわよ~、もうすっごい迫力!ね、宍戸君!」
「おう。面白かったけどよ・・・」

けど、普通に楽しんでて良かったのか。
宍戸はいまいち開き直り切れない。今だって。

「ところで、肝心の芥川君は?」
「今寝ちゃったけど、さっきまで起きてたよっ!ちゃんと色々メモしてたしっ!」
「って事は、お前らここは大体見たのか?」
「一応はな。お守りしてたさかい、あんまりちゃんと見たとは言いづらいねんけど。」

つまり、今居るエリアは芥川を除く4人が4人ともきちんと回り切れていない。という事になるのか。

4人の間に共通認識が生まれた時、網代は誰より早く発言した。

「私、此処パスしようかな?」

(えっ、)

驚いて目を見開く可憐を他所に、宍戸は不思議そうな顔で隣の網代と会話している。

「見ねえのか?折角来たのに。」
「興味ないわけじゃないんだけど、ね。ほら、さっきまでショーで屋外に居たから暑かったでしょ?私早く、暗くて涼しいゾーンに行きたいのよ。此処は柵の向こうは冷房が効いてるけど、人間の通る所はそこまで涼しいわけじゃないし。」
「でも、逆走出来ねえんだろ?」
「ええ、覚えてるわよ。進んだらもう来れないけど、今日は気分じゃないし辞めておくわ。」


「ほんなら俺と行こか。」


そうだろうな。

可憐は思った。当然そうくるだろう。そうしない理由がない。

「・・・良いの?ここをもう一度見るって言ってませんでしたっけ?」
「全然見てへんわけやなかったし。それに一人で回るのんも面白くないやろ?」
「そ、そうだな!そうしろよ、ジローは俺が交代するから!」

勿論宍戸も乗っかる。
可憐は知らないことだが、宍戸的にはさっき下手を打った分も含めて、ここで本来やりたかった方向にちゃんと話を持っていきたい。

「で、桐生は俺とくるだろ?」
「・・・うん。」
「だよな。」

ほっとした顔の宍戸。

もし。
この場に宍戸しか居なければ、可憐は今思ってることを口に出しただろう。

そんな心配そうな顔しなくて大丈夫だよ。
確かに私はドジだけど、この場で私もついていくとか言い出すほど馬鹿じゃないもん。

そして宍戸はそれに対して返事をしただろう。


でもお前、何かついて行きたそうな顔してなかったか?