Training camp – in Irupinet Hotel -:Travel companion - 3/7


今の所大人が2人で、片方が煩くて。
そこに女性が1人入るわけだから、この人が入ってくれたら大分静かになるかなあ、なんて千百合と棗は内心で思っていたのだが。

「「あんたかよ!」」
「なーに、失礼な子達ねのっけから!」
「わーい、ひたきおねーちゃんだー!」
「よろしくお願いします。」
「紀伊梨ちゃんも紫希ちゃんも久しぶりねー!今日からよろしくぅ~☆」

そう、最後の女性一人というのはなんと小鳥遊の事だった。
顔見知りということで紫希はホッとしてるし、紀伊梨は賑やかな人が増えて純粋に嬉しそうだが、千百合と棗は煩いのが増えたという現実を受け入れねばならなかった。

「まあ賑やかなのは保障されたわなw」
「疲れそう。何もしてないのに。」
「あー、わかるわかる!俺も小鳥遊と居ると疲れるもん。」
「いや、お前もだろ煩いのはw」
「俺は煩くねえよ!」
「ほら煩いw」
「あー、やーねえ大の男が2人してぐちぐちと。あっちは放っておいて、こっちはこっちでお話しましょ!さ!レッツ女子トーク!」
「女子トークの前にw自己紹介が先でしょw」
「えー?でも皆お友達なんっしょー?」
「で、でも良くは知らない人も居るのでは・・・」
「そーね、じゃあそれも含めて話しちゃいましょう!よし、じゃあまず小鳥遊ひたき、いっきまーす!」

小鳥遊はマイク(多分本来は仕事用)を持って後部座席のビードロズを振り返った。マイクのスイッチは入れない。気分だ、気分。

「もう小鳥遊ひたきって言って「シャラップ!良いのよ細かい事は!改めまして、小鳥遊ひたき30歳です!普段は月刊プロテニスに勤務してて、今日は非番です!塩飽君と小口君とは大学時代の同期で、紀伊梨ちゃん達4人とは全日本中学生テニス選手権の神奈川県大会で知り合いました!旅行の間よろしくね!」
「あ、そっち?」
「どういう繋がりかと思ったらそういう方向なのねw因みにどう知り合ったの?」
「どうと言いますと・・・」
「いやさ、普通は居合わせても知り合いにはならないじゃん?」
「何か、取材させてくれとかって通りすがりに。」
「あれさ、後で言ってたけど偶々だったんでしょw」
「そうそう、どこ取材すれば良いのか分からなくてね?ここはもう運を天に任せるしかないと思って。」
「でもでも、大当たりだったよねー!」
「そーなのよ!私ってラッキーガール!」
「いや、ガールって年じゃねえじゃんお前は。」
「というか、中学生に迷惑かけて何やってんのw可哀想に、災難だったなあ。」
「「いや、全く。」」
「何が災難よ!そこも同意しない!」
「ま、まあまあ・・・」
「もう失礼しちゃうわ。さ、次紀伊梨ちゃんどーぞ!」
「はいはーい!」

紀伊梨にマイクが渡る。

「紀伊梨ちゃんは五十嵐紀伊梨ちゃんでーす!立海の中学1年生でクラスはB組です!バンドのポジションは、ギターボーカルとリーダーです!趣味はねー、カラオケとか音楽かんけーと、後体を動かすのも好きっしょー?それとゲームと、あ!食べるのも好き!お菓子だーい好き!」
「・・・そんなに好きなの?」
「うん!」
「ふうん・・・ふうん。」
「?」

小鳥遊の視線は紀伊梨の腰あたりをうろうろ彷徨う。

「その割には五十嵐さん、細身だよねw」
「くそー、これが若さか!代謝の違いか!まあ30の我らと比べるとどう考えても分が悪いな。」
「年の話はなしよ、なしなし!」
「さっき自分で「はいはい、細かい事は良いの!ほら次次!」
「はいはいw黒崎棗ですw黒崎雄一の息子で双子の兄の方です、いつも父がお世話になってw」
「そうそう、息子と娘って言ってたから君がそうなんだよね?いや、黒崎さんにはいつもお世話になって。」
「いやあどもどもwで、えーと年は皆一緒で中一で、バンドではドラムと編曲ですwこの度は乗せてもらっちゃってありがとやんしたw」
「後ろの大荷物お前のか!めっちゃがちゃがちゃするじゃんと思ったらあれドラム!?」
「というか、黒崎君はマイドラム持ってんのかw凄いねー。まあ黒崎さんなら買い与えそうだけどさw」
「よくご存じでwで、えーと趣味?趣味は悪戯かなw」
「悪戯!?」
「木の葉の里の忍者みたいな事言うね君w」
「あそこまでダイナミックな悪戯はしませんwハイ次、パスw」
「あ!え、ええと、春日紫希です・・・立海の中学1年生で、バンドでは作詞です。趣味は読書と、お菓子作りです。塩飽さんと小口さんには、以前休日にスポーツセンターに行った時にダブルス試合のお相手をして頂きました。今日もお世話になります、よろしくお願いします。」
「紫希ぴょんスポーツセンターとか行ったの!?いつ!?」
「あれでしょ、柳生引き込み作戦の時のでしょ。テニス丸井に教えて貰うとか言ってたし。」
「あー!そっかそっか、あの時かー!」
「そういう繋がりかwどういう知り合いかと思ったわw」
「へー!あんた達紫希ちゃんと試合したのね。どうだった?勝った?負けた?」
「いやあそれがw」
「・・・・・」

塩飽は憮然とした表情で、露骨に明後日の方を見た。

「え、負けたの?」
「負けたよ!こいつだよ、こいつのせい!こいつが攻撃しないんだもん!」
「えー?そーなの?なんで?」
「いやあ、だってさあ。幾らペアとはいえ、中学生のカップルに僻み丸出しで全力攻撃とか、みっともなさ過ぎて味方したくなくならない?」
「そりゃあなりますねw」
「だっさ。30にもなる大人が中学生相手に。」
「30だろうといくつだろうとカップルがむかつくのはむかつくんだよ!」
「いえ、ですから私達別に、」
「付き合ってるかどうかじゃねーんだよ、女子と休日に2人で遊べてるっていう事実がむかつくの!やっぱり負かしとけば良かった、ちくしょー!」
「え、でもさー。仮に全力出してても負けてたでしょ、ブン太君超上手だったじゃん。」
「そこよ、そこ。ブン太君が上手いのはわかるからさ、初心者の紫希ちゃんを集中攻撃してだな。」
「えー!ひどいよ、ちゃんとしょーぶしないとダメじゃんかー!」
「人間的にどうかと思うわあ、同期として心配~。」
「うるさいうるさい!勝負の世界は非情なんだよ!」
「寧ろ怨念という情まみれのような気がするけど。」
「ていうかさwそんな事すると余計勝ちから遠ざかるくねw」
「何!?どうして!」
「ブンブン君の性格上w紫希が集中攻撃食らってるのをボーっと座して見てたりしないでしょw」
「そだねー!ブンブン勝負とか強いもんねー!」

なんてわあわあ騒いでいるが、当の紫希自身はどうコメントしていいかわからない。
マイクを持っておろおろするばかりの紫希に、傍観していた千百合が声をかけた。

「ダブルスしたんだ。」
「え?ああ、はい。以前。」
「んで、勝ったんだ。」
「はい。とはいっても、私何もしてませんでしたけど。」
「いや、何もって事はないんじゃない。」
「いえ、本当なんです。小口さんは指導してくださったくらいですし、それに・・・」
「それに?」

「・・・勝つのは任せろ、って言ってもらったんです。」

今でも覚えてる。
凄くホッとしたけど、あの安堵は逆に任せてしまったことの証拠でもあったんじゃないだろうか。

「それで私・・・千百合ちゃん?」
「塩飽さんでしたっけー?」
「ん?え、何俺?はい!塩飽は俺!」
「次があったら私加勢するんで、丸井集中狙いでいきましょ。」
「えええ!?」
「マジか、味方来たー!よっしゃ、そうしよそうしよ!決定!」
「マジでか何でよ?君は友達でしょ?」
「妹お前w気に入らんからってそんなw」
「え、何々?千百合ちゃんは丸井君と喧嘩中なの?」
「そんな事ないと思うんだけどなー?」

車はひた走る。
合宿地を目指して。