「へー!じゃあ、今立海テニス部も合宿してるのね!」
車は合宿地への往路をひた走る。
とはいっても、元々そんなに遠方に行くつもりも目的もなかったので、もう暫くしたら到着するだろう。
「そーそー!あ、でも今日からじゃなかったよね?」
「昨日からだって前聞いたけど。」
「皆頑張ってるんですね。」
「・・・・・・」
棗はスッ・・・と目線を後方の荷物に向けた。
「お?どうした黒崎君!後ろ向いちゃって。」
「いや、何でもw」
「というか、話変えちゃうんだけどさ。聞きたかったんだけど、丸井君って立海テニス部なんだよね?」
「そーだよ!ブンブンもテニス部です!」
「そっかそっか。寂しいね。ね、紫希ちゃん。」
「え?」
「丸井君も合宿行ってるんでしょ?寂しくない?」
「寂しい・・・」
寂しい。
いや、確かに寂しくないと言ったら嘘になるけど。
「そんなの寂しーに決まってるよー!ね、紫希ぴょん!」
「そうですね、それはそうですけど・・・」
「あれ、寂しくないんだ。」
「そ、そういうわけじゃないですけど!でも、きっと今頃皆合宿で頑張ってますから・・・ですから、私も寂しがってばかりいないでちゃんと頑張らないとって思うんです。」
それこそ丸井も幸村も皆も、いつもなんでもない顔しているけれど、毎日毎日きつい練習をこなして一日一日前へ進んでいるのだ。だから。
「少しでも実りの多い時間を過ごして成長しないと・・・なんだか皆に胸を張って合宿に行ってきました、って言えない気がするんです。」
「えー?そっかなー?紀伊梨ちゃんは楽しかったらそれで良いって思うけどなー!」
「あ、あくまで私はということで・・・」
「はー・・・紫希ちゃんは本当に真面目ねえ。疲れない?
「そうそう!偶には肩の力を抜かないと、途中でパンクするぞ?おじさんからのアドバイスだ!」
「それはわかってるんですけど・・・」
「もっともな事言われてんのに、なんだろうこのお前に言われたくない感。」
「分かるぞ黒崎さんw」
「「おだまり!」」
「というか、一番うるさいのは誰だと・・・お。」
「あー!見えた見えた、ねーねー!泊まるのあそこのホテルっしょー!」
「ま、窓から身を乗り出したら危ないですよ!」
着いたか。着いてしまったか。
棗はスマホの時計をちらりと見た。
9時は過ぎている。良し。
「皆さん注目ー!」
「「「「「?」」」」」」
「俺は注目出来ませんけどw」
「あ、運転手は運転しててくださいwえーとですね、着く直前になってなんだけどちょっと連絡がありまーす。直前になってというか、直前にしたんだけどさ。」
「なーにー?楽しい話ー?」
「楽しい・・・まあ見ようによっては楽しいかもしれないけど、お前は嫌だろうなw」
「え!?もしかしてお化けとか!?」
「違うわwじゃなくてね、ホテルに着いたら皆にやって欲しい事があるんですよwま、大人はしなくて良いけどw」
「もったいぶってないでとっとと言えよ。」
「じゃあざっくり言うねw皆、この合宿の間は変装して下さいw」
どういう意味なのか問い返す前に、車はイルピネットホテルの駐車場に入ってしまった。