「練習始める前に皆さん、ちゅうもーくw」
「「「?」」」
昼の小休止が終わって、午後練習。
ホールで棗は3人に呼びかける。
「いやあ、実はちょっとゲストを呼びたくてねw」
「おおお!」
「ゲスト?ですか?」
「そうwと言っても、向こうは動画で見るだけなんだけどw」
「ああ。実際、今からここで見るわけじゃないんだ。」
「えー!折角だから生で見て欲しかったのにー!誰だか知んないけどー!」
「まあまあw生で見てくれる機会は今度ちゃんとあるからw」
「今度ちゃんとある・・・?」
三人が?を浮かべてる内に、棗は備え付けの机を移動させて、自分のタブレットを設置する。
そして、誰がしかを呼び出し始めた。
「お?」
「おお、出た出たwもしもーしw」
『おお、もしもし!すまん、ちょっと待ってや!・・・よし!見えてんな?』
ブリーチをかけて色の薄い髪。
関西弁。
なんとなく、見たことがあるような顔だち。
『はじめまして!四天宝寺中学1年生の、忍足謙也や!よろしゅうな!』
「おおお!え、忍足?って事は、おっしーのお友達?」
「馬鹿かよ。」
「馬鹿!?」
「友達は同じ苗字にならんだろ普通はw」
「もしかして、親戚の方なんですか?」
『せやで、侑士と俺とは従兄弟同士や!』
「いや、実はねwこないだ氷帝の方の忍足から連絡があってさ、チケット2枚四天宝寺の連中に回せないかって言われてねw」
『せやせや!』
画面の向こうの方の忍足が言った。
『どないや?ええか?侑士にはビードロズさんに聞いてみ?て言われて、取りあえず黒崎には許可貰うてんけど。』
「はい、俺は許可しましたw」
「全然良いよー!なんでそんなの聞いてくるのー?OKに決まってるのにー!」
「私も別に。あっちにあげたチケだし、誰に配ろうと自由でしょ。」
「私も構いません。どうぞいらして下さい。」
『よっしゃ!恩に着るで、ほんまおおきに!助かるわ!』
助かる。という言い方。
「・・・何か、理由がおありなんですか?」
『よう聞いてくれた!そうなんや実はな、今年の文化祭の催しでバンド演奏をやる事になったんや。』
「おおー!そーなんだ、良いじゃん良いじゃーん!」
『せやろ?俺もめっちゃ受けると思うんや!ただ、問題があってな・・・』
「およ?」
『そもそも俺は、テニス部やねん。』
「お!謙ちゃんもテニスするんだー!」
「お前もかよ。」
「ほ、本当に多いですね・・・・」
「まあ氷帝の忍足がテニス部だから、予期してたけどなw」
『?多い?まあようわからへんけど、兎に角普段はテニスやっとるんや。尚且つ、今やるいうてたバンド演奏やけどな。これはテニス部の催しとして、代表で出るねん。つまり?どういう事かわかるか?』
「わかりません!」
『つまりメンバーは普段テニスとお笑いに勤しんどって、全く楽器やらなんやらになんぞ触らへん奴らばっかりっちゅー話や!』
ぼぼーん・・・な空気が紫希と千百合の間に流れる。
棗はもう全部聞いて知っているので笑っている。
紀伊梨は?な顔。
「ねーねー、いそしんど?って何?」
「ええと、勤しむっていう言葉があるんです。意味は・・・」
「お前結構国語の成績は良さそうねえwチャラい頭してるけどw」
『人を見かけで判断したらあかんで!これでも、成績はええ方っちゅー話や!世界史以外!』
マジで見かけによらないな。
と、千百合は内心で思ったけど思うだけにしておいた。
「っていうか、楽器出来ないズブの素人ばっかり集めていきなりって無理じゃない?」
『そこをどないかするんや!そのためにこうして、何や参考にならへんかと思うて見せて貰おと思てるわけやし。』
「謙ちゃんも楽器出来ないのー?ギターとか駄目?」
『いや!俺は実は、ドラムはそこそこ出来るで!家にもあるし!』
「おー!凄い凄いー!」
「へえ、良いじゃん。」
「ドラマーが確保出来ているのは大きいですよね。」
『せやろ!ただ、ドラムは好きやねんけど、ドラム担当としてはちょっと悩ましい所もあんねんな・・・手が痛なってもうて、テニスに障りあったらかなわんからなあ。』
「大丈夫大丈夫w上手くなったら要らない力抜けて、痛くなくなってくるからw」
『ほんまか!っちゅうか、詳しいな?』
「俺もドラム担当だからねw」
『そうなん!?あれ?もしかして俺、そっちの担当とか名前とか聞いてへん?』
「あー!そーだよそーだよ、自己紹介がまだじゃーん!じゃあ紀伊梨ちゃんからね!」
タブレットのカメラ前でポーズを取る紀伊梨。
こういう所、紀伊梨は凄いと紫希はいつも思う。カメラが苦手な自分。
「紀伊梨ちゃんは、五十嵐紀伊梨ちゃんでーす!ビードロズではねー、リーダーとギターとボーカルやってまーす!」
「それから、紀伊梨ちゃんは作曲もです。」
「あ、そーそー!作曲もでーす!よろしく!」
『五十嵐さん、よろしゅうな!っちゅうか、色々ポジション引き受けてて忙しいな。そんな色々出来るもんなんか?』
「いやまあ、此奴は特別枠w」
「天才肌って奴よ。あんま悩んだり時間かけなくても、スッスッと出来ちゃうの。」
「えへん!」
「でも、ギターの腕は本物ですよ!リーダーとしても頼もしいですし、曲も本当に良い曲ばっかりですし、歌も「紫希。」千百合ちゃん?」
「あんまり褒めて有能イメージ持たれても困るし、その辺にしといて。」
「む!ゆーのーって言葉はわかんないけど、何か褒められてたのを止められたのはわかりますぞっ!」
「まあこんな感じw出来れば優しい言葉で会話してやってw」
『なるほど!国語が苦手っちゅー話やな!』
苦手なのは国語だけではない。
そこまでは教えないけど。
「じゃあなっちんターッチ!」
「はいよw名前はもう知ってると思うけど黒崎棗ですwドラムと編曲やってます、よろしくw」
『よろしゅうな!ええな黒崎、周り女子ばっかりで!』
「一応言っておくけど、私兄弟だからそういうのにカウントしないでくれる。」
『そうなん?いやでも、それでも後2人女子やろ?』
言われて棗は、紫希と紀伊梨に目をやるが。
「・・・いや、ないなwないなw」
『うせやろ!?』
「いや、あのねw本当、2人とも女子として不足があるとか、可愛くないとか思ってるわけじゃないんですけどw結構な期間の付き合いだけど、一度もそういう意味でドキッとしたことないんですよw」
「わかるわかるー!紀伊梨ちゃんも一回もないー!」
「あはは・・・なんていうか、兄弟みたいな感覚が近い気がしますよね。お兄ちゃんみたいな・・・」
「え、紫希、これ要る?良いよあげるよ、交換しよ。」
「千百合ちゃん・・・」
『・・・なんや、えらい妹に嫌われてんねんな?』
「ぶっちゃけ思い当たる節はないではないwはい、タッチw」
「あ、はい!春日紫希です。作詞を担当しています。よろしくお願いします。」
『こっちこそよろしゅう・・・って、ん?作詞だけ?楽器はやらへんのんや。』
「あ・・・・私、その、人前が得意じゃ、なくて・・・」
『人前が得意やない・・・へー!偶に居るなあ、そういう奴。俺にはよう感覚がわからへんねんけど。』
「まあお前は見るからに目立つの気にしなさそうよねw」
『まあな!しかしあれやな。』
「はい?」
『目立ちたないていう割に、結構見た目は尖ってんねんな。男子みたいやで。帽子とか被って髪纏めたら、もうわからんやん。』
「あ!それは、ええと・・・」
「紫希ぴょん普段は可愛いかっこしてるお!今紀伊梨ちゃんが着てるのも紫希ぴょんの服だし!」
『あれ?そうなん?』
「まあちょっと色々あってねw」
「私の服着てんの。今だけね。」
『はー、そうなんか。え?じゃあ今ミニスカ履いてる・・・ええと・・・』
「私、黒崎千百合。双子の妹。ベース。」
『へー、ベース。ツインギターとちゃうんや。』
「ギターもう居るでしょ。」
『いや、女子でベースて珍しいな思うて。でもかっこええな!渋いわ!』
「今時そんな珍しい?」
「けっこーいっぱい居るよねー!」
「でもまあ、よく知らない人のイメージとしてはそんなもんでしょw」
「そういえば、演奏メンバーの方は皆男子なんですか?マネージャーさんから女子が混じったりなんか・・・」
『・・・・・・・』
「あ、あれ?お、忍足君・・・?」
「お?どったの謙ちゃん、なんかくらーくなっちゃって!」
『・・・もう最初に言うとくけどな。』
「ああ、マネジ居ないの。」
『先に言うたらあかーん!ボケ殺しはNGやで!わかっとっても、それは先回りしたらあかんねん!それでこそ天丼や!』
「なんなんだおたくはw」
関西人って皆こんなノリなのかなあ、なんて一瞬思う棗と千百合だが、すぐ思い直した。同じ関西出身でも、侑士の方の忍足はこんなんじゃない。
(関西っていうか大阪のノリなのかねw)
(え、此奴だけじゃなくて皆こんな感じって事?流石に皆って事はないか。)
「てんどん・・・?天丼って天丼?美味しいって事?」
「ええと、天丼っていうのは・・・」
『お!ナイスボケやな五十嵐さん!』
「残念だけどボケじゃねーんすわw」
「話進まないから戻して良い?演奏見るのよね?」
『ああ、せやせや!チケット貰たから生でも見に行くけどな!でもまあそれはそれとして、見る機会は多い方がええに決まっとるし。』
「そういえばお前、一人で見んのw」
「そーそー!皆で見にゃいのー?」
『いやそれが、俺ともう一人でバンドのまとめ役みたいな感じやねんけどな。なんちゅうかそいつがこう・・・最近ちょお様子が変いうか。』
「お具合が悪いんですか?」
『いや、体調やとかそういう話やあらへん・・・と、思う!テニスもしとるしな。ただ、何やぼーっとしてんねん。この間自転車で転んだ言うてたし、頭でも打ったんちゃうかとか、部でも言われてんねんけど。』
「まあまあ我々思春期です故w悩みを抱える年頃でもあるわよw」
『まあ、そうやな!ようわからへんけど、彼奴には彼奴の事情があるっちゅー話や、きっと!よし!』
謙也は膝を叩いた。
『ほんなら自己紹介も終わったことやし、見せてもらおか!』
「お!OKOK!よーっし、皆いっくぞー!」
配置について、紫希は謙也が見やすいようタブレットを調整して。
ミュージック、スタート。