Aurora festa - 1/7



ある日、網代が言った。
明後日の土曜日、お祭りにいかないかと。

「お祭りなんかあるんや。」
「でも、土曜日は部活がーーー」
「午前中はなしでしょ?電気のメンテやるって、今日部長様が言ってたじゃない?」

先日の合宿の時、落雷によって停電したことを受け、多分大丈夫だろうけど念のため・・・ということで、急遽電気系統系のメンテナンスをする事になった。
そのため、本来だったら土曜日も丸々部活だったところを、午前は生徒の立ち入りが禁止になったのだ。

「でも、朝からやってるお祭りっていうのがあるのっ?」
「んー・・・まあ、もっとちゃんと言うと、お祭りって言われて想像する夏祭りとは違うんだけど、ね。ほら。」
「なんや、このチラシ。」
「ええと・・・Hyotei erementary school presents・・・Aurora festa?」
「そう!氷帝学園幼稚舎の文化祭よ!」
「文化祭っ!?夏休みにっ!?」

一般的に私立の学園というのは、公立のそれに比べて学校の特色が強いーーー言うなれば、個性が尖っている、と言われている。

立海はその中でもまだ比較的公立に近いところが多いが、氷帝はその逆。
私立の中でも結構他所と違うことを平気で沢山やっている風潮がある。

これもその内の一つで、夏休みまっただなかだけど文化祭をやる。幼稚舎はそういうスケジュールなのだ。

「向日君が教えてくれたのよ、ね。って言っても、その向日君含む元幼稚舎組は、皆予定が入ってていけないらしいんだけど。」
「行くっ!行きたいっ!」
「確かに面白そうやな。」
「じゃあ決まり、ね♪皆で行きましょ!」

本来小学校の文化祭なんて、中学生からしたらさして面白いようなものでもない気がするが。
それでも、ただの小学校じゃなくて「氷帝学園幼稚舎」の文化祭だからなあ・・・なんて期待を胸に、土曜日のスケジュールを可憐は埋めた。





「わああ・・・・!」
「あら、本格的ねえ。」
「小学生の文化祭とは思われへんな。」

しっかり飾り付けられた学校。
沢山の人ごみに、スピーカーから鳴るイベントのお知らせ。
そこかしこから聞こえてくる、楽し気なBGM。

ザ・文化祭な空気感に、可憐は心を躍らせた。

「どこから行くかなー。」
「あんまり長く居たら遅刻になるから、その辺も気をつけへんとな。」
「そうだね・・・茉奈花ちゃんっ!」
「え?きゃあっ!」
「っ!?」

ドン!と凄い勢いで、何かが網代にぶつかってきた。

「あたたた・・・」
「大丈夫?立てる?」
「ええ大丈夫よ、有難う侑士君・・・」
「ちょっと、邪魔よ!さっさとそこどきなさ・・・げ!」
「あ、千歳ちゃんっ!」

ぶつかってきたのは木崎だった。
文化祭の催し用の制服なのだろう、氷帝の基準服から大きく離れたセーラー服を着ていて、ご丁寧に水兵帽まで被っている。

木崎はこちらが誰なのか認識するや、元々吊っていた眉を更にきつく吊り上げた。

「どっか行って!」
「え!?」
「こっちはあんた達の顔なんて見たくないの!疫病神はあっちに行ってよ、視界に入ってこないで!」

Gでもここまで嫌われているかどうかと思うほどの勢いで、こっちを避けにかかる木崎。
言うだけ言ったら、青いミニスカートを翻し、木崎は走って行ってしまった。

「ええええ・・・・!」
「相変わらずやなあ。」
「改心した可能性もちょっぴりあったけど、どうやら変わってないみたい、ね。」

地区予選で出会った時から、全く変わっていない様子の木崎に、可憐はひっそりと溜息をついた。

そんな可憐を、ちょっと遠くから見つめる人影。

「あ。あの時のボール踏んだ先輩。」

あの中二病の少女である。
歩道橋の上で可憐に女子だと看破され、神奈川で幸村にコテンパンにのされたあの少女だ。

彼女は氷帝学園に入学したくて、そしたらその幼稚舎でお祭りをやると聞いたので、ちょっと見に来たのだ。今日見かけた6年生は、同級生になる(予定)なわけだし。

「おーい、先輩!ちょ・・・ええい、どけ!せんぱ・・・あれ?居ない。」

声をかけようとしたのだが目の前を横切った人に遮られ、避けた時にはもう可憐は居なかった。
今日は一人だから、一緒に居ていいなら居ようと思ったのに。

「あー・・・ま、良いか。ん?」

少し離れたところで、自分と同じような様子の男子が居た。
さっきまで可憐の居た所に手を伸ばしかけ、ああ、ああ・・・みたいな事を言っている。

「おい。」
「え?何?え、何だい、君・・・」
「お前、先輩に何か用事?」
「君の先輩?」
「えー、ほら。さっきまで此処に居た、集団の・・・眼鏡が居たグループの女子!小さい方!」
「ああ・・・ううん、そうだなあ。正確に言うと、君の先輩そのものに用事があるわけじゃないんだけど・・・」
「んだよ、はっきりしねえなー。じゃあ誰に何の用だよ?」
「いや、俺の用事のあるのは、金髪・・・ぶつかってきた、セーラー服にサイドテールの金髪の女の子の方なんだ。」