First RAINBOW FESTA:Today is・・・ - 1/6



「ええと、醤油・・・醤油どこや醤油!目玉焼きには醤油やろ!」
「シンクの下やて。」
「さっき見たけどあらへんかったで?」
「探し方が悪いだけや。もっとよう見てみ?みりんの奥とか。」

「・・・兄ちゃん、何してんのん?」

忍足翔太は、何やら休日の朝から台所がやかましいと思って起きてきたのだ。
そしたら何故か、いつも朝早い母親と全く同じ時間に朝食を食べている兄の姿があった。

「今日休みちゃうかったっけ?」
「休みやで!東京行って、バンド演奏見てくるわ!」
「ああ・・・・ああ。」

新幹線の時間まで、ゆうに3時間はあるけど。
なんて突っ込みは、このせっかちな兄には通じない。

「いつ帰ってくるのん?」
「明日やで!今日は侑士の家泊まるさかいに!」
「え!良いやん、それはめっちゃ羨ましいねんけど!ええなあ兄ちゃん・・・」
「手土産持っていくんやで?そこに置いてあるやつ。」
「わかっとるっちゅー話や!」
「兄ちゃん一人なん?俺も行ったらあかん?」
「え・・・・ああー、えー・・・そやな、一人とはちゃうな。」

ただまあ。
その一人は結構調子が悪いまま戻らないから、今日のフェスも楽しみきれるかは微妙なんだけど。

(いやでも・・・こないだオンラインで見せてもろた時はふっつーに楽しんどったしな。うん、連れてったら多分現地に居る間は楽しめるやろ!うん、そう思とこ!)

「翔太はサッカーあるやろ?」
「せやけどー!」

弟は母との会話に夢中で、兄の微妙な顔に気づかないでいてくれた。






「・・・・・・・」
「ユウジ?居るのん?」
「・・・!ああ、まだ居るけど、」

部屋から顔を覗かせたのは母親だった。
一氏はちょっと渋い顔になるが。

「・・・ノックしたか?」
「散々したわドアホ!ほんまに、返事せえへんくせに要求だけは一丁前やねんから!」
「ああ、さよか・・・堪忍。」

ここ数日、こういう事が本当に頻発している。
ノックされてる。呼ばれてる。話題に出されてる。

のに、それに反応出来ていない。
部屋に入られるまで、目の前に来るまで、肩を揺すられるまで気づけない。

「・・・あんた、ほんまに大丈夫なん?」
「・・・体はどないもあらへん。テニスもお笑いも出来とるし。」
「・・・まあ、そう言うんやったら、もうそれ以上は言わへんけどやな。」

口は悪いけど口煩くは無い母のことが、一氏は本当に有り難いと思う。

「今日は日帰りやろ?」
「おお。もう夕食は駅弁で済まして帰るわ。」
「わかった。気つけるんやで。」
「・・・ん。」






「・・・・・・・・」

渋谷の駅近くで、そわそわしている男が一人。
その背後から、2人組が音もなく近づいてくる。

「・・・・わあっ!」
「ぎゃああっ!誰・・・おい、松岡!」
「あはははっ!板谷先輩、マジビビりじゃないですか!」
「久しぶりだな、冬次。」
「伊藤先輩・・・お久しぶりです。」
「元気にしてたか?」
「はい。」
「先輩超やる気ですねー。まだ朝の8時ですよ?」
「そ!れは、その・・・あれだ!家に居ても暇だからだよ!」

そう言うと笑い出す伊藤と松岡に、板谷はすっかりお見通されていることを知った。

ぶっちゃけ、そわそわしてる。
フェスなんて行くの久しぶりだ。

特に解散してからは、蓋をして捨てた筈のバンドへの未練が再燃しそうで、生演奏とか意識的に避けて生きていたから。

「・・・っつうか、俺は兎も角伊藤先輩と松岡は、何でこんな時間に。」
「え?」
「そりゃあ・・・」

伊藤と松岡は、顔を見合わせて。
それから笑った。

「「ね?」」
「何だよそりゃあ!」