First RAINBOW FESTA:Today is・・・ - 5/6


「別にお昼からでも良いのに。」

幸村は電車の中で笑った。

渋谷のフェスに向かう途中、午前から既にいつものメンバー全員で電車に乗っている光景が、おかしくて仕方がない。

「まあ、どうせ今日は部活もありませんし。」
「・・・やっぱり、今日のスケジュールって、」
「ああ、部長がずらしてくれた。俺から進言しようと思っていたが、最初からそのつもりだったようだ。」
「やっぱりそうじゃったか。」

本当は、今日は部活がある日だった。
というか、全国直前に部活のない日なんて基本ないのだ。

それでも多少は休まないと却って効率が落ちるし、どこか一日は嫌でも休みにしないと・・・という話は前から出ていたところに、部長の佐川が日にちをずらして今日に当ててくれたのだ。

先日のブッキングに対する、テニス部部長からのお詫びである。

「それでも、出番は午後なんだからさ。」
「幸村君は行くんだろい?」
「そこはまあ、俺は友達であると同時にビードロズのファンだから。」
「それは此処に居る全員がそうではないのか?」
「「「「「「・・・・・」」」」」」
「な・・・何だ!何だと言うんだ!」
「いや、真田がバンドのファンってすげえ響きと思っただけ。」
「ぐ・・・」

何人か笑いを堪えようとして下を向いた。
それでも声は漏れてしまうし、真田本人もわかっているけど。似つかわしくない事しているって。

「い、いや!俺が言いたいのはそういう事ではない!ファンだとかそうでないだとかそういう事以前に、肝心な時間が先だからと言って直前まで赴かないのは礼儀に反する事であってだな!」
「それはその通りだな。」
「そもそも、ビードロズの皆さんの方がその辺りについてはまめですしね。地区予選から欠かさず、最初から最後までずっと見ているのでしょう?」
「うん。まあ、だからこそこういう時は、ついね。」
「見逃しとか、絶対出来ねえって感じになるよな。」

5月から夏まで、ずっとずっと見ていてくれた。
今度の8月、猛暑日が続く全国大会でも、きっと全部見ていてくれるだろう。

だから、今日。
今度はこっちが見届けてあげたい。
何かの手違いで応援出来なかったなんて、そんな事になってしまったら友達として不甲斐なさ過ぎて、どんな顔をして謝れば良いかわからないから。


『次は~大崎、大崎です。お降りのお客様は・・・』


渋谷まで、今少し。






紀伊梨は目をキラキラにして、列に並んでいた。

もうすぐ。もうすぐ。

「はーい・・・ええと、では次の方。」
「ビードロズ!です!」
「ビードロズね・・・はい。メンバーは全員揃っていますか?」
「はいっ!」
「楽器など、不足していたりするものはないですね?」
「はいっ!」
「・・・メンバーは4人で、演奏は3人。間違いないですね?」
「はいっ!」
「それでは、この紙にタイムテーブルや諸注意、会場の案内図などがありますので、目を通しておいてください。」
「はーいっ!ありがとございまーす!」
「じゃあ・・・ああっ!ちょ、ちょっと待ってっ!この腕章とネームカードとバンドを、ステージの直前まで付けといてくださーいっ!」




「やっぱ彼奴に受付って無理があったんじゃないの。」
「で、でも、ちゃんと出来てますよ?ほら、最後にちょっと焦ってしまっただけで・・・」
「いやあでも、こうして腕章とか言われるといよいよイベント参加者感あるねw」

ここは渋谷。

普段はだだっ広いだけの広場には特設ステージや屋台の準備が進んでいて、ゲートには軽音楽レインボーフェスタとがっちり書かれている。
レインボーフェスタの名のとおり、虹色のモチーフがそこかしこにちりばめられており、スタッフのTシャツも黒か白に虹色のラインが引いてあるデザインだ。

「たっだいまー!」
「お帰りなさい。受付お疲れさまでした。」
「うん!ちゃんと出来たお!」
「あれちゃんと出来てたわけ。」
「う・・・出来たもーん!」
「まあまあ・・・」
「で?えー、これが腕章で、これがネームカードで、」
「それ何?バンド?」
「うん!赤いのと青いの!右と左に一個づつ付けてだって!」
「何で?」
「さあ!」
「・・・・・・」

自分の分のネームカードを紫希はじっと見た。
凄い。ちゃんと書いてある。ビードロズNo.4、春日紫希って。

「紫希ぴょん?どったの?」
「あ、いえ・・・ちょっと、感動していて。嬉しくて・・・私、メンバーに数えられないと思っていましたから。」
「え、なんで!?メンバーじゃん!」
「ああでも、他所のイベントなんかだと紛らわしいから、ステージに立つ人間以外はメンバー登録出来ませんみたいな場合あるんじゃない。」
「そんなのある!?」
「いやバリバリあるでしょwこのフェスは結構本格派で、専属の作曲とか作詞人員が居るグループが他にもあるから、数えてくれてるんだと思うよw」
「へえ。他所にも居るんだ。」
「つっても、中学だと俺達だけらしいけどw」
「えー、じゃあじゃあ、他のイベントだったら紫希ぴょんはメンバーにしてもらえなかったって事!?怖ー!そーいうイベントはこれからもなしにしよう!うん!そうしよ!」
「そ、そこまでして頂かなーーー」
「良いよ。」

千百合が珍しく、強めの口調で言った。

「・・・千百合ちゃん?」
「良いよ、それで。全員揃えられないイベントに参加なんて、時間が勿体ないもん。」

3年しかない。
この4人でバンドやれるのは、後3年。

それなのに、わざわざ4人で居られない時間を作って何になろう。
時間の無駄だ。そんな暇があるのなら、どこかの公園で演奏してた方が良い。

「違う?」
「・・・いえ、そうですね。ごめんなさい。」
「よし。」
「おしゃ!じゃー今日は、思いっきり楽しんで行きましょー!」
「「「はい!」」」

いつも笑顔のリーダーの、仰せのままに。