First RAINBOW FESTA:Rally - 1/5



駅前。
人が多数行き交うこの場所で、きょろきょろ。

駅中に入っている、ユニクロの前で待ち合わせになっていたから、その辺の筈。

「・・・あっ!居た、忍足君っ!」
「可憐ちゃん、おはようさん。」
「ごめんね、待たせちゃっ・・・と、と、と!」
「慌てへんでええから。」

こういう事がある度に、忍足は逆に待たせる側になった方が良いんだろうか?とか思ったりする。
結局いつも考えた挙句、待たせるのは嫌だという自分の心情を優先してしまうけど。

「あはは・・・ご、ごめんね朝からっ!」
「ええて、別、に・・・・?」
「?なあにっ?」
「可憐ちゃん、その鞄なんなん?」
「えっ?何って、向こうで色々買ったらこのくらいの荷物になるかなと思って持ってきたんだけどっ。」
「・・・・・」
「あ、あはは・・・ちょ、ちょっと大きかったかなっ?」

ちょっとで済むんだろうか、そのボストンバッグは。
今から旅行にでも行く風だけど、何を買うつもりならそうなるんだ。

「・・・何が入ってて、何を入れるつもりなん?」
「えっ?ええと、貴重品と飲み物とパンフレットと、タオルと虫よけとウエストポーチっ。」
(それは順当に要るやつやな。)
「それから買う予定なのは、替えのシャツ2枚とうちわとペンライトが4~5本と振り回す用のロングタオルと、」
「ちょっと待ってんか。」

それだよ、それそれ。おかしいのはそれ。

「や、やっぱり要らないかなっ?お母さんが買っちゃうもんだからって言うんだけど・・・」
「お母さんが?」
「お母さんこういうの好きで、野外フェスとか慣れてるからっ。だから、何が必要なのか聞いてきたんだけど・・・」
「野外フェス・・・いや、確かに野外フェスはそうやねんけど、今回はそういうのやあらへん気がすんで。」
「うん、そうだよね・・・私もちょっとそう思ってた・・・・」

忍足もちらっと調べて見たのだが、このレインボーフェスタというやつはグッズの物販にそこまで力を入れていない。
どちらかというと飲食物の屋台的なものが大半で、ペンライトやなんかは多分売ってもらえないし誰も持ってないと思う。

「・・・ロッカーがあるらしいから、ボストンの方は空いてたら預けたらどないや?駅のコインロッカーとかでもええし。」
「うん、そうする・・・」
「もしほんまにペンライトとか売ってたら、俺も持つのんは手伝うさかい。」
「有難う、ごめんねっ!」

なんだかのっけから失敗してしまった感があって、可憐は何をする前からちょっと落ち込みモードである。
持たせるくらいならペンライト売ってなくても良いかなとさえ思い始めている。

(自分が買うのに人に持って貰うっていうのもなあ・・・特にうちわなんて、お母さんが見せてくれたみたいなキラキラハート型の奴を男子に持って貰うなんて、すごい罪悪感・・・)

というか。

「・・・・・」
「可憐ちゃん?」
「あっ!ううん、何でもっ!」

よくよく考えたら、忍足の私服をまじまじと見るのは今日が初めてかもしれない。
ハート形うちわとかすごくそぐわない恰好しているなと思い、ふと服を見てみたけど、グッズ云々関係なくかっこいい。ファッションが大人っぽいというか。

いつも私服で遊ぶにしても「皆で」という括りになりがちだからきちんと吟味したことはなかったけど、こうして二人で並んで私服で歩いていると凄くその事を意識してしまう。

どうしよう。かっこいい。
高校生って言われたら多分信じる。

「・・・可憐ちゃん。」
「・・・・・」
「可憐ちゃん?」
「えっ!?あ、は、はい何っ!?」
「ロッカー。」
「えっ?」
「あったで、ほら。」

そこは、駅でも何でもない普通の町中のコインロッカーであった。
都市はこういうのが町中に普通に点在している。

もっとも今日は日曜日なので埋まっていても全然おかしくはないのだが、運よく此処は幾つか空いている。
ちょっと位置がわかりづらいが、家からも近いし。

「あっ、良かったっ!預けちゃお、預けちゃおっ!」
「100円・・・小銭ある?貸そか?」
「あ、ううんっ!大丈夫っ!」

気遣いまで大人っぽいなあ、なんて思いながらウエストポーチを取り出して、ボストンバッグを中にしまい込む。
鍵をかけて、失くさないよう財布に入れて、ポーチを腰に巻こうとして。

「・・・・・・」
「どないしたん?」
「ううん、ちょっと・・・・こんなに早く出すことになると思ってなかったから、気おくれが・・・」
「?」
「に、似合ってないんじゃないかと思って・・・」

そもそも今日の可憐の服は、フェスってどんな服着ていけば良いの?の問いに、母のアドバイスと妹のファッションセンスが組み合わさった結果の格好なのだ。
普段は系統としてナチュラル系が多い可憐だが、今日はミニ丈のパーカーワンピースの下にスパッツを履いて、スニーカーを履いている。足を最大限出したストリート系ファッションである。

これだけでも何かちょっと着慣れないなあと思いながら過ごしていたのに、ここに缶バッジが山と付けられている2連のウエストポーチをたすき掛けにしたら、いよいよらしくない格好してる感でいっぱいだ。

「・・・確かに、前私服見た時と全然違う毛色の恰好やなあと思ったけど。」
「や、やっぱり変かなっ!?」
「いや別に、変ていうわけやないで。」
「そ、そうっ?それならまあ・・・」
「ただ、急に趣味が変わったようには見えるわ。」
「ああ、ううんっ!そうじゃないの、これ、美梨・・・妹が貸してくれたやつでっ。」
「妹さん?」
「そうっ。フェスだとこういう格好の方が”らしい”でしょって!ただ、普段着てないからいまいち自信が・・・」
「ああ、フェス仕様なんやな。ええやん、可愛いで。」
「かっ・・・そ、そうかなっ!それなら良いんだけどっ!」

まともに受け取ってしまうから、しれっと可愛いとかいうのは止めて欲しい。
ナチュラルに人を褒めることのできるタイプだから言ってくれてるだけだとわかっているけど、自分はさっと流せるような性格してないんだから。

気温が高い中、さっきより熱い気がする顔を可憐はパタパタと手で仰ぐ。

(ええと、ええと、何か話題・・・あっ!)

「そ、そうだ忍足君っ!」
「ん?」
「今日、従兄弟の人が来るんでしょっ?一緒に回るっ?ああでも、あっちもお友達さんが・・・」
「ああ、せやで。でもどうせ家で合うし、今言うた通りあっちも友達連れてくるらしいから、まあばったりあったら一緒に行こうかいうくらいの感じやな。」
「そっかっ。」
「・・・・ただ、もしかしたら土壇場で来へんくなるかもしれへんけど。」
「えっ!?どうしてっ!?」
「何や、その連れの友達とやらが、調子悪いみたいな事前言うとってん。治ってたらそれでええねんけど、治ってなかったら東京旅行やいうても。」

今のところ無理になったという連絡はきてないけど。
忍足はスマホを確かめた。