そして、そのツクヨミは。
現地入りして尚、ピリついた空気の真っ只中にいた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
(・・・・はああ。)
リーダー、笛寺は頭を抱えまくっていた。
なんという雰囲気。正に空気最悪。
今日出場するグループは山ほどあるけれど、ここまで険悪な雰囲気の所は他にないだろうと思われる。
自信がある。そんな自信、すごく要らないけど。
「・・・セリ、あっちでちょっと話そうぜ。」
「ああ・・・うん。」
沖野が芹沢を誘って立ち上がった。
話がある、というより此処に居たくないのだろう。
笛寺もそれは分かる。出来れば辞めて欲しいが、リーダーなのに何も事態を解決出来ていない自分に、引き留める権利などなく。
「・・・・・」
木崎は黙ってスマホを眺めている。
沖野と芹沢が行ってしまった時も、ピクリとも反応しやしなかった。
(・・・鳳、だっけ。)
鳳長太郎。
という男子が幼稚舎に居る。
その鳳が、ボーカルである木崎の心に深く根を張っていることを、ツクヨミのメンバーは全員知っていた。
その他の人間の事は、凡そ視野に入っていないーーーまあ言うなれば、どうでも良いと思っている事も。
「・・・・・・」
此処だけの話。
笛寺は、木崎を脱退させた方が良いのではないかという考えがここの所急速に強まっていることを感じていた。
はっきり言って、ツクヨミが抱えているグループとしての問題は、木崎が居なくなれば大部分はすっきりと解決する。
それでも木崎を辞めさせるという決定が下せない、さりとて注意なども出来ない現状の理由はただ一つ。
たった一つしかもう残っていないが、その一つが大きすぎるのだ。
「・・・千歳、昼食は遅れないようにな?」
「食べない。」
「え・・・いやでも、」
「食べなくても平気だもん。トイレ行きたくないし。お腹空いてたって声は出るわよ。」
「・・・そうか。」
ああ、また。
こうして受け答えする度に。
もう、何も言う気が起こらなくなってくる。