First RAINBOW FESTA:Meaning and worth - 1/5


ビードロズには奢ると言ったけど、テニス部には奢るなんて言ってねえわ。
そう言った板谷を制したのは、最年長の伊藤だった。

ちゃんと金は持ってきてるから大丈夫、皆で食べようよ。そう言って一同は屋台で好きなものを好きなだけ買って、近場の公園の日陰で腰を下した。

「「いっただっきまーす!」」
「すげえ・・・」
「ふふっ、豪勢だね。」

レジャーシートを2枚広げて、手分けして手あたり次第買って買って買いまくって、今シートの上は色んな食べ物が、十分な量で並んでいる。
一体幾らしたんだろう・・・とは聞かないでおきたい。怖いし。

「それで?」
「ほへへっへー?」
「食いながら喋るな!だから、意気込みだよ意気込み!」

早くも紀伊梨は口の中が食い物でパンパンである。

「何かこう、目標というか!気合というかーーーー」
「暑苦しい。」
「あ”あ”!?」
「まあまあ冬次。」
「別にそっちが出るわけじゃないじゃろ。」
「それはそうだけどよ!もっとこう・・・なんというか・・・」
「むぐ・・・さっき言ったじゃーん!楽しくやろーって!」
「楽しく・・・そんなんで良いのか!?」
「良いじゃん。」
「良いじゃんって・・・おい!」

板谷は隣のレジャーシート組の紫希と棗に意見を求めるが。

「だ、駄目でしょうか・・・?」
「良いんじゃないすかねw」

肯定が返ってきて、板谷は脱力感に襲われた。

「マジかよ・・・」
「ですが、それで実際今まで結果は出せていると思いますので。桑原も仁王も、そう思わないかい?」
「ああ、俺も思うぜ。軽音楽なんて初めて見せて貰ったけど、純粋に凄いと思ったしな。なあ、仁王?」
「ピヨ。」
「ピヨって何だよ・・・」

勿論凄いと思ってるけど、言わない。紀伊梨が煩いから。

「ほらねー!」
「ほらねー!じゃなくてな!ああ・・・まあ良いや、後できっちり見させて貰うからな!」
「何様って思われてるよ、冬次?」
「そりゃあ勿論!俺達は先輩、で・・・」

言いかけて、板谷は淀んだ。

先輩。
先輩?

もう辞めてるのに、先輩?
先輩って名乗って良いわけ?

「・・・・・・」
「・・・冬次?」
「もむ・・・それにさー!」

黙った冬次に構うことなく紀伊梨は言い募る。

「楽しくやらない暇がないんですよ!紀伊梨ちゃん達には!」
「日本語がおかしいんじゃなか。」
「いや、変っちゃあ変だけど合ってるよ。珍しく。」
「珍しく!?」
「あはは。まあ、青春時代は一瞬だから。」
「ああ、そういう意味か?」

ほぼ全員が勘違いしたが、幸村は違った。
幸村はわかる。ずっと一緒にいた友達だもの。

「辞め時が決まったんだね。」
「ああうん、こないだ。」
「え?」
「辞め時・・・?」

「あたしら高校になったら解散すんの。」

ぴた。
と、全くそんな話を予想していなかった仁王と桑原の箸が止まった。

それと、何故か板谷も。

「・・・ど、どうしてだ!?なんで今からそんな話をーーー」
「此奴の学力が足りんから、一緒に進学出来そうにないと踏んでるんか?それなら、」
「違いますけどー!」
「あはは!でも、高校に決めたのはどうしてなんだい?」
「いや、こいつアイドルになるから。本当は今からでも候補生になるくらいの方が良いんだってさ。」
「・・・アイドル?」
「へえ・・・成程ね、確かにそれなら早い方が良いけど。でも思い切った決断だね、中学1年生の身空で。」
「・・・紀伊梨ちゃんだって本当はもっとやりたいけどさー・・・」

体が2つあれば何も問題はないのに、と紀伊梨は本気で思っている。

一緒に学生生活を楽しみたいのは本当だけど、アイドルになりたいのも本当。
どうしてもどっちかしか取れないのなら・・・と思って割り切ろうと頑張っているけど、両方取れるものなら取りたい。

でも出来ない。
どっちも大切に思ってるからこそ、二足のわらじは履けない。そういう器用さを持っていないことは、紀伊梨は自分でよくわかっている。

「・・・そうか、決断したんだね。偉いね、俺は応援してるよ。」
「ほんと!?じゃあじゃあ、もしCDとか出たら、おにーさん買ってくれる!?」
「ああ、全部揃えるよ。約束する。」
「やったー!」

「もしCDとか出たら、か・・・・」
「何じゃ?思うところでもあるんか。」
「いや、なんだか凄いなと思って。なんていうか、友達なのに急に公共の人になったみたいな感じが・・・」
「まあ、芸能人はそういう面があるからね。大衆に知られるのが職業だから。」
「悪い、そこのお茶取ってくんない。」
「お前さんは全然感慨も何もなさそうじゃな。」
「大衆に騒がれる身内とか今更感しかない。」
「「ああ・・・」」
「・・・うん?」

何?と聞き返してくる幸村は、本当に自分の事というか、自分の知名度に対して鈍い。

「あんたらも早く慣れたら。」
「いやまあ、うん・・・努力する・・・」
「慣れんとどうしようもないからの。」
「ふふふっ。そうだね、早く慣れてしまわないと、案外ドンドンアイドル活動が上手くいって、あっという間にテレビに出るようになるかも。」
「うわ、怖。あほな事言って干されないかな。」
「失言は多そうぜよ。」

「ねー!何の話してるのー?」

割って入ってきた紀伊梨に、幸村はさらりと涼しい顔でCDの話だよ、と返した。

「俺達も買おうね、って言ってた所だったんだよ。」

(しれっと言いよるぜよ)
(欲しいのは本当だけど・・・小遣い足りるのか?)

いやでも、その頃には高校になったり大学になったりバイトとか出来ると思うし、今よりは資金的に余裕出来るのかな・・・なんて、この場の誰よりお財布事情(というより家計事情)がやばい桑原は考えていたが、紀伊梨はあっけらかんと言った。

「なんで買うの?」
「え?」
「や、流石に買うわよ。当たり前じゃん。」
「え、紀伊梨ちゃんが配るよー!皆には一番に聞いてほしいんだもん!」

だってさ。
もし何かのトラブルで手に入らなかったとか、そんなの寂しいじゃん。
もしかして売れっ子になっちゃったりしたら、予約で買えなかったのー、また今度買うねーみたいな事になっちゃうかもしれないじゃん。嫌じゃん、そんなの。

というのが紀伊梨の言い分だが、千百合ーーー千百合達にだって言い分はある。


「買わせろよ。金払って買うのが肝心なんじゃん、こういうのは。」


友達が歌ったCDをただでくれるって、それはただの趣味と言うか、友達付き合いと何が違うのだろうか。
もしも本当にCDが出たのなら、それは友達とか関係なく紀伊梨が仕事として働いて頑張った成果なのであればこそ、こっちは金を払わないといけない。
それが礼儀と言うかーーーそれでこそ友情なんじゃないだろうか。

「そう?かなー?」
「そうなの。」
「困ったなあ、お金を今から貯めておかないと。」
「CDだけじゃないもんな。雑誌とかにも出るかもしれないし・・・・」
「寧ろ出るのなら雑誌が先じゃろうからな。」

「あはは・・・ん?」
「・・・・・・」
「冬次。」
「・・・!すんません、何すか?」
「何っていうか・・・どうしたんだ?ぼーっとして。」
「あ・・・いえ・・・」

いつになく静かな板谷。
だが伊藤は、なんとなく理由はわかっていた。