「いらっしゃいませ、何名様ですかー?」
「4人で。」
「かしこまりました、4名様入りまーす!こちらへどうぞー!」
可憐・安音・忍足・中院は4人で連れだって近くのカフェに来ていた。
因みに安音は遠慮なく奢ってくれないかと聞いたが、忍足にすげなく却下された。
「カツカレーねーかなー。」
「お。男らしいやん。」
「ふふん、だろ?」
((忍足(君)(先輩)乗せるのが上手いなあ・・・))
「ご注文はお決まりでしょうかー?」
「Aランチで。」
「あっ、私Bランチでっ!」
「私パスタで・・・安音は?」
「カツカレー!」
「ございません。」
「あれ?」
なんて会話している間にも、カフェには続々と人が入ってくる。
もっと言うと、自分たちと同じくフェスに居た人達なんだろうなと分かるようなグループ達が。
「フェス、凄い人だったねっ!」
「せやなあ。混んでるやろなとは思うてたけど、ここまでやとは予想してへんかったわ。
「でも、レベル高いですよね!びっくりしました。」
「私も私もっ!凄い迫力だよねっ!」
「そっすか?」
「神崎さんは、そんなに響かへんかったん?」
「俺、顔見知りがやってるなら見るっすけどー。そうじゃないならあんま。」
「ああ、そういう。」
「眼鏡先輩は逆に好きなんすか?いかにも嫌いそうっすけど。」
「別に嫌いやないけど、そんな風に見えるん?」
「見えます!何かあのー、ロックとか軽音とか低俗だーみたいな事言って、眼鏡くいっとあげて小難しい本読んでるイメージ!」
「偏見の塊やん。」
偏見の塊だし、それを口に出して言っちゃうタイプらしい。
ここまで来ると逆に清々しくて、一周回って受け入れやすいけど。
「じゃあ、安音ちゃん達は誰か知ってる人がフェスに居るのっ?それを見に来たのっ?」
「ああ、私の兄がグループを組んで参加してるんです。さっき演奏してましたよ。見てました?Pan cake」
「あっ、見てた見てた、良かったよっ!すっごく良かったっ!」
「ボーカルがめっちゃ声出てたな。」
「あ、そいつが楓の兄貴すよ!やったじゃん、楓!なあ!」
「うん。兄に、後で言っておきます。」
「先輩達はあれすか?」
「チキンカツプレートとパスタランチと、AランチとBランチでーす。」
「あ、俺俺!で、そうだそうだ!先輩達が見に来たグループって、ツクヨミとあともう一個どこでしたっけ?俺忘れちまって。」
「ビードロズだよっ!確かね、ツクヨミの2個くらい後ろの順番だったような・・・」
「ビードロズ・・・ビードロズ・・・ああ、そうですね。3つ後ですね。」
「ああ、それそれ!どうなんすか?上手なんすか?」
「うーん、私も聞いたことはないんだけどっ。」
「俺の従兄弟は、オンラインで聞いてめっちゃ感動しとったけどな。」
「へー!期待大じゃないっすか!」
「3ピースバンド、4人目が作詞か・・・今回出てる中じゃ、結構本格的ですね。」
「えっそうなのっ?」
「なんでわかるん?」
「パンフにメンバー構成が書いてありますけれど、作詞の専門がいる中学グループはここだけなんです。それに、作詞担当が居るって事は、要は曲がオリジナルって事になるんで、相当時間かけてやってるんだと思いますよ。」
「へええ・・・!そうなんだ、凄いねっ!」
「でも、どうせだったら舞台に上がったら良いのに。変な奴!」
「それが出来へん性格ていうのがあんねん。」
「ふーん。あ!眼鏡先輩ももしかしてそのクチっすか?」
「気は進まへんな。」
出来ない、とは言いたくない。
まあ実際、やれって言われたら出来るとは思うし。めちゃめちゃに苦手だけど。
「あ!そうだ、それで思い出しました。」
中院がスープを飲みながら言った。
「氷帝って今、目立ちたがり屋の王様が居るんですよね?」
「くぐっ!げほ、げほ、げほ!」
「先輩大丈夫すか!?」
「水あるで、可憐ちゃん。」
「えほ、ごめ、ありがとう・・・」
ドレッシングが思い切り喉に引っかかった。
うん、まあ。
そうなんだけど。
「否定は出来へんけどな。」
「う、ううん・・・確かに目立ちたがり屋だし、王様だけど・・・」
「おい!何だそれ!誰だよ、初耳だぞ!」
「そりゃあそうだよ、安音に言うと煩いから。」
「ちっくしょ・・・先輩たち!何なんすかそいつ!」
「え、ええと、ええとっ!何て言えば良いかな、」
「まあ言うて文字通りやけどな。」
Aランチのハンバーグを切りながら忍足が話し出す。
「生徒会長やし、態度がでかいし偉そうやし、目立つん大好きやし。財閥の御曹司やさかい。」
「へえ・・・お金の力って感じですか?」
「そうじゃないよっ!確かにお金持ちぶりも目を引くけど・・・なんていうのかな、カリスマっ?ついていきたくなるような雰囲気があるんだよねっ!」
「偉そうにするだけの実力もあるしなあ。文武両道で見た目もええ。金も持ってるし、金に関係なく人からの信頼も厚い。何でも出来るけど努力もしとるから、人がついてくるし人の中心に居る。生まれついてのリーダー格、言うんはああいう奴の事を言うんやろな。」
(そうやって改めて聞くと、本当に跡部君って凄いよねっ。)
何がすごいって、今の忍足の説明が、誇張ではなくて事実だと自然に思える事である。
人に、しかも同学年の男の子に向かってこんなこと言うのもなんだけど、「王」という以外にピッタリくる表現がないような気がする。
「はー・・・凄い人が居るんですね・・・安音?」
「・・・大魔王だな。」
「「「は?」」」
「つまり、氷帝の生徒を従えてる大魔王なんだろ、そいつは!ということは、俺がそいつを倒せば、今度は俺が王様だな!相手にとって不足なしだ!打倒!えー・・・名前なんですっけ?」
「・・・跡部景吾。」
「打倒跡部景吾!俺が入学した暁には、参りましたと言わせてやるぜ!俺が勇者役・・・くー!男らしい!」
「先輩方、気にしないで下さいね。いつもの発作なんで。」
中院はもう慣れ切っている。
「あ、あはは・・・大きく出たね・・・」
「大きくないっすよ!楽勝っすよ!」
「絶対返り討ちにあうと思うけど。」
「そんな事ねーの!」
「ああでも、打倒できるかは置いといて気に入られそうではあるわ。」
「「え?」」
「あ、そうだねっ!跡部君、強気な人好きだもんねっ!」
「ええええ!?マジですか!?確かに強気ですけど・・・これですよ!?」
「負けん気強い跳ねっ返りタイプ大好きやからなあ。まあ他が嫌いとかいうわけやないねんけど。」
「ふふーん!ほらなー!やっぱり俺って、一目置かれちゃうタイプだからなー!」
「うそお・・・・」
中院の目から、幾ら何でもこんな変な奴、と思っているのが可憐と忍足にはわかった。
ただ、安音は確かに変な性格かもしれないが、跡部が変じゃないかと言われたらとても否定出来ない程度には跡部も尖った性格なのである。
まあそれは、来年いやでも分かるだろう。
氷帝に、来ればね。