袖にチェック柄のラインが入ったカッターシャツ。
上からベストを着て、ボタンの所はベルト止めに。
首元にはタイ。リボンもあるよと言われたけれど、やっぱりタイが良いし。
スカートはプリーツで、折り込みの所はチェック柄。ズボンはやっぱりチェックのライン入り。
色は勿論、とっても濃い緑。
「イェーイ!」
そう、これが今日のビードロズの衣装。
わかる人には分かりやすいが、なるべく制服にーーー立海大の、制服に寄せている。
「どお?どお?可愛い?可愛い?」
「ええ、可愛らしいですよ。ですが・・・」
「ようこんなもん見つけてきたの。」
「そーなんだよー!けっこー緑の可愛い制服系ってむつかしくってさー!大分探したんですよっ!」
「私、やっぱりズボンが良かったです・・・」
「え?どうしてだ?」
「ミニスカートより楽です・・・」
「可愛いから良いじゃん?」
「良くもないですし可愛くもないです・・・!」
「あっつ。3枚も着たくねえわ、こんな気候で。」
「ベストが辛そうだね。本番、大丈夫かい?」
「舞台の上は、冷房などないのか?」
「さっきミストが置いてあったのを見たが、まあライトの暑さと差し引きで0だろうな。」
「俺なんて長ズボンですよw履かねえけどスカートが羨ましいw」
探すのに苦労するし、ミニスカートだし暑いし。
「・・・何故わざわざこのような衣装にしたのだ?」
周りを見たら、もっと軽い・・・お揃いのTシャツにGパンみたいなグループも居る。
そこまでカジュアルに寄せないにしろ、もっと薄いとか軽い奴もあったろうに何故。
不思議でそう尋ねる真田に、紀伊梨は実にあっけらかんと言った。
「だって紀伊梨ちゃん達、せーふく着てる時がいっちばんたのしーもん!」
衣装を決めるにあたり、あれも可愛いねこれも良いねで迷いまくるリーダーに、一度ちゃんと落ち着いて考えようという事になり。
ライブの目的は楽しむこと、楽しむためにどんな衣装なら良いか、一番ワクワクするかと考えた時に、全員ふと思ったのだ。
着ていて楽しい服って、それは制服じゃない?
「紀伊梨ちゃん達立海大好きだもんねっ!毎日がっこー楽しーし、皆と遊ぶのも大好きだし!」
「もう制服でやれたら良かったくらいの勢いだったもんなあw」
「いや、絶対そっちのが楽だったって。着慣れてるしさ。」
「制服は駄目だったのかい?」
「はい、学校の制服は不可なんです。昔、貸し借りでトラブルがあったとかで、全面禁止で・・・」
「頑張って近いの探してさー、やーっとあったんだお緑の衣装!」
えへへー!と笑う紀伊梨は本当に満足そうで、テニス部一同はちょっとくすぐったくなってしまう。
ここまでまっすぐ自分達との毎日が好き!と言われると。いや、こっちだってそう思ってるけどさ。
「でも、それにしてももうちょっと直前でも良かったんじゃね。」
「いや、もうすぐよ、すぐw今で良いよw」
「そろそろ昼の一番の方が出てきそうですよね・・・あ!」
「あ、いたー!ちーちゃんとこだー!」
ツクヨミは昼の部のトップバッター。
衣装はクラシカル系とでも言おうか、モノトーンで纏めている。
木崎はフリルが大きいスカートで、男子3人はスーツに近い。上はシャツ。
もう片側のステージと違ってお互い雑談などせず、もくもくと自分の分の楽器の面倒しか見ていないのが印象的ではある。悪い意味で。
「・・・・・・」
「ど、どうしたんですか、真田君・・・」
「まあまあ・・・気にするな。な?」
「ま、イラつきと折り合いつけようとして頑張ってんだよ。」
「何あんたら、イラつくような事あったの。」
「お昼の直前に、ちょっとね。」
「そんなに大した事じゃない。お前達は気にするな。」
「えー!よけー気になるんですけどー!」
「そうはいっても、皆さんは本番前ですので。」
「関係無い事に気を取られとったら本末転倒じゃろ。」
「そうだけどさw」
『それではこれより、中学生の部を開始します!』
「す、凄い、本当に千歳ちゃんだっ!」
「ん?嘘だと思ってたんすか?」
「あ、そ、そうじゃなくて・・・何かこう、知り合いがああいう場に立ってるの見ると、実感が沸いてくるっていうかっ!」
「ふうん?」
「・・・・・」
「忍足先輩は、どうかされたんですか?」
「いや。ああしとると普通なんやけどなあ、と思て。」
「そうだよね・・・」
正直、今でもある意味信じられない。
ステージの上に立っている紀伊梨はなんとなく想像できるけど、ステージの上に立つ千歳は想像が難しい。
司会の女性がもう一度システムの説明なんかをしてくれているけれど、千歳に緊張とかそういうのは全然見られない。
ただ、足元を見ている。暑そうな顔で。
司会がリーダー・・・笛寺に話を振り始めたが、意にも介していない。
顔を向けもしない。
ただただ、始まるのを待っている。
「それでは演奏して頂きましょう、ツクヨミの皆さんです。曲目は既存曲、我は汝に誓う、わが祖国よ。それでは、どうぞ!」