First RAINBOW FESTA:Loudly rythm - 4/7


『それでは、準備の方よろしいようですので、3組目のグループに移りたいと思います!リーダーの五十嵐さん?楽器の準備はOKですか?』

「はーいっ!」

『心の準備は?』

「OKでーす!」

『頼もし~い!明るいお返事ですね、それでは今日の自信のほどというか・・・意気込みみたいなものはありますか?』

「自信?自信はありまーす!たっくさんれんしゅーしたかんね!それにー。」

『それに?』

「きょーはねー、いつもかっこいーテニス見せてくれる友達がたーくさん!来てるから、今度は紀伊梨ちゃん達がかっこいーとこ見せる番なんですよっ!」

何度も見てきた。
練習する所も、鮮やかに勝つところも。

だから今日は、自分達がそれを見せる番。誰よりかっこいい仲間達に。

(あいつ、こんなトークでプレッシャーかけなくて良いのにw)
(今更でしょ。ハードル上げるの大好きじゃん。)

『なるほど~!素敵な事ですね、それは!では早速行ってみましょう、ビードロズの演奏です。曲はon and on、オリジナルです。それではどうぞ!』

紀伊梨はすうっと息を吸い。
棗と千百合に聞こえるような声で、1、2、3、4、とカウントを刻むと、片足を上げる。




ダンッ!


「ひ!とーつ♪響くビートが♪」




棗も千百合も、楽器はまだ弾かない。
紀伊梨も弾かない。
今は歌声と、足音のターン。

もう一度。




ダンッ!


「ふ!たーつ♪重なーってゆく♪」




また足を上げる。
このくらいから、観客の方も足を上げ始める者が増える。

それに呼応するように、ギターの音が混じりだす。




「始まりは小さく♪」


ダンッ!


「段々と大きく♪!」


ダンッ!


「耳に聞こえてくる♪鼓膜、突く♪」




次の足音から、千百合が入りだす。




「その中心は遠く♪君と交わすジョーク♪」


ダンッ!




(何か・・・)
(何か・・・なあ、)


揺れてないか。
と気づく者が観客にちらほら出だす。

しかし気づいた頃にはもう遅い。
皆足を止めないし、棗のドラムが小さく入ってきている。




「一人じゃ♪きっと弾けないから♪」




『皆で演奏する奴が良い!です!』
『皆で・・・ですか?』
『そー!だってさ、折角お客さんたーくさん居るんだよ?皆でやったほーがたのしーよ!』
『またお前そんなめんどくさそうな事を。』
『えー!めんどくないよ、楽しーよー!』
『いやまあ滅多にこんな機会もないしねwじゃあ何かギミック考えようかw』
『わーい!』





「音の数だけー♪曲は増えてくかーらー♪」




今までずっと小さく叩いていた棗のスティックが高く上がる。
紀伊梨が息を吸う。足が上がる。


来る。




ダン!


「いつも on and on!奏でてゆこう!毎日君と歌うための歌!」




本領発揮と言わんばかりの大声量に、観客は一瞬足踏みを忘れて圧倒される。
それをもう一度戻す。
歌っていても楽器を弾いていても、足音は決して辞めない。

ダンッ!


「君の応援がクレッシェンド!僕の背中押してくれる!」





(やった・・・!)

揺れてる。
地面が揺れてる。
会場が鳴ってる。

これをやりたかったのだ。
紫希は嬉しくて飛び上がった。




ダンッ!


「今だ on and on!そう打ち鳴らせ!
踵から聞こえる希望の音!」





テニス部の数人は歌詞に噴出した。

(希望の音って、そんな可愛い響きじゃねえだろい)
(もはや地響きですよ、ここまで来ると)

一人なら踵を踏み鳴らす音なんて大したことなくても、観客全員これをやってるともはやちょっとした地震レベル。
最初こそダン。ダン。みたいなローテンポだったが、サビに入って今や完全にダンダンダンダン!とひっきりなしに皆足でリズムを取っている。




「鼓動の大きさが聞こえる!
振り向くのは勿論Last step!」


ダン!





また足を鳴らす。
ここからは2番だけど、2番はもう最初から全力で飛ばす。
元からこれは本来うるさめでアップテンポの曲なのだ。

1番よりもっと大きく。
もっと早く。もっと鋭く。この場の全員の脳みそまで揺さぶるような音で。声で。




「三つ!増えるビートの!四つ エッジが見えてく!」




ビリビリ。
ビリビリビリ。

全身が振動している。
音を拾う鼓膜も、揺れている地面に立つこの体も。

(入学式の時よりも更に煩くなっているな。)

つまり腕を上げたという事なんだな、と真田は納得する。
まだまだ音楽の世界を知って浅い真田は、今はまだ無条件に音がでかければでかいほど良いと思っている。まあある意味間違っちゃいないのかもしれないが。

しかも、こんなに大きい音なのに不思議と不快感がない。
それどころか寧ろなんだか気分が良い。
体が勝手に動く。足が勝手に上がる。
それを人はノってるというのだが、真田はまだその表現を知らない。




「サビはまだ遠く!君と紡ぐtalk!」




(気分が良さそうじゃな)
(これだけ出来ればそりゃあ気分良いんだろうな・・・)

特に仁王はちょっと羨ましく思うレベルだが、大人数の人間が自分の思う反応を返してくれるというのは得も言われぬ快感がある。自分の好きなことでなら尚更だ。
仁王と桑原は特に棗と関わりが深いので、つい後ろでドラムしている姿に目が行くが、楽しそうな・・・単に楽しいだけではなく、しめしめみたいな笑い方している。

思った通りに観客がついてきている、という笑い。
勿論作戦の裏には、その作戦を生きたものにする高い演奏技術が必要なんだけど。




ダンッ!


「いつもon and on !歌っていく!
皆でお揃いにしたメロディ!」





サビに入って、まだ大きくなる音。声。
ああ、これをトランス状態とでも呼ぶんだろうなあ、なんて柳は頭の隅の方で考えた。

(そんなつもりでやってはいないだろうが、ここまでくると一種の催眠だな。)

一番後ろの観客の背中まで包むような大音量。
自分で足を動かさせる事によって生まれる没入感。
絶えず受ける振動によって、意識は嫌でも演奏に向けさせられて、他の事を考えることを頭が段々放棄しだす。
柳でさえこう思うのだから、その辺の観客はとっくのとうにもう演奏の事以外頭から出て行ってるだろう。




ダンッ!


「今だ on and on disc 回せ!
落とした針が生み出してく音!」





幸村は目を閉じてしまいたかった。
視覚をシャットダウンして、この酩酊感に体を委ねてしまいたい。

でも、ちゃんと見ていなくちゃ。
皆の雄姿を。晴れの舞台を。
ほら、あんなに輝いている。
この誇らしさを、自分達の観戦している時にビードロズはいつも味わってるんだろうか。

取り分けやっぱり、愛しのベーシストの姿が。

(・・・美しいな。)

何であんなに綺麗なんだろう。
掛け値なしに、この世で一番綺麗な女の子だと思う。
そうは思わない者の方がこの世には多いことなんて分かっているけど、自分の目にはそう見えるんだからこれはもう仕方がない。

それでも幸村的には不思議だけど。
ほら、あんなにきらきらと輝いているのに。





「振り向くのは勿論Last step!」


ダン!





と足を踏んで、Cメロのタメ。
ここで一度楽器を止めておいて、観客を焦らす。

紀伊梨は口元が綻ぶのを避けられなかった。

やばい。
楽しい。

観客がみーんな、またノるのを待っている。
ノりたくてしょうがなくて、わくわくしている。




「ほんの少しづーつ♪転調を繰り返しー♪」




後ろの千百合もちょっと笑った。

見える。手に取るようにわかる。
自分がメロディに加わると、その分観客の期待が膨らんでいく。サビはもうすぐなんだな、今か今かと待っている。
すごく気分が良い。




「だけどいーつーでもー♪」




棗もまた入ってくる。
ああ、超笑えて来る。
今までしてきた練習のどの時より指が軽やかだ。




「一人じゃあなーいかーらー♪


・・・・いつも、」





すう、と紀伊梨が息を吸うと、皆の足も上がる。

そう。今日は一人じゃないから。
見ていてくれて、一緒に楽しんでくれる観客が。皆が居るから。

揺らせ!と叫ぶ棗の声と、サビの頭を歌う紀伊梨の声が重なった。