First RAINBOW FESTA:Loudly rythm - 5/7


「た・・・楽しかった~~~~!」

はあ、と可憐は大きなため息を吐いた。
顔は笑顔で、愉快で堪らないと言った風である。

「私、こんな大声生まれて初めて出したかもしれないよっ!」
「めっちゃ沸いてたな。」
「あ、あはは・・・楽しくてついっ!」

そう、可憐はビードロズの仕掛けた演出に綺麗にハマっていた。
全力で踵を鳴らしたし、最後にイェーイ!と言われた時は渾身の力でイェーイと叫び返した。周り中皆そうしてた。

アンコールなんて今回は一番最後以外ないのに、アンコールの声が出たくらいだった。
もう一曲やって良いですか!と紀伊梨が聞いて却下された時には、えー!の声まで上がったくらいだった。

「だって本当に凄かったんだもんっ!」
「せやなあ。なんちゅうか、地力の差を見せつけとる感じがするわ。オリジナル曲で客を乗せるていうだけでも難しい思うのに、それで出来てるわけやし。」

当たり前だが、知らない曲より知ってる曲。好きな曲の方が客の受けは良い。
そこをオリジナルでやるというのは、ある意味スタートから不利になっているようなもの。でも、それでここまで出来るんだから大したものだと思う。忍足は素直に感心する。

「凄かったね。まだ3組目だけど、早くも中学生のトップが出たかって感じまでする・・・安音?」
「・・・悔しい。」
「は?」
「かっこいいじゃねーか!くそ、卑怯だろあんなの!」
「ああ、そういう。」

これは安音なりの最大級の褒め言葉である。
最初ステージに出てきた時こそ、ああ神奈川で会った連中だ!とか思ったが、演奏始まって間もなくそんな考えは消えた。というか、どうでも良くなった。知ってるやつらかどうか、なんて事が。

ただただ、圧倒された。飲まれたと言っても良い。
ここはあっちのテリトリーで、自分はアウェイのゲスト側。それがわかった時にはもう、足を鳴らしてたしがっちり楽しんでいた。

「悔しい・・・!」
「つまり、内心で自分よりかっこよくない?って思っちゃったわけね。」
「うるせえ!解説すんな!」
「男らしさとはちゃうかっこよさやから、ええんと違うん?」
「そうなんすけど、それはそれとして悔しいんすよ!確かに似て非なるもんではあるんすけど、逆に似てる部分もあるっつうかなんていうかなあ、あー!」
「まあ確かに、ジャンルがロックだから、可愛い方向の素敵さっていうよりかっこいい方向の素敵さは感じるよね。」
「そう!それが言いたい!かった!」
「そういうものっ?かなっ?でもそれはそれとして、確かにかっこよかったねっ!皆良い意味でいつもと別人感があったなあ・・・」

今までだって話に聞いていて、きっとかっこいいんだろうなあみたいな事は思っていた。
だが今日初めてちゃんと見てみて、本当に心の底から羨望というか、別にバンドやりたいわけではないが憧れのような物を抱いたのであった。

(凄かったなあっ。輝いてたっていうか、自分の事を自信を持って全力でやってる、って感じっ!)

しかしそこへ行くと自分は、あんな風になれているんだろうか。
自分なりに精一杯はやっているけれど、マネージャーとして輝けているかと言われるとあんまり自信ないけど。

「特にあの、ギターボーカルの人オーラがやばかったですね。」
「紀伊梨ちゃんだよねっ!凄かったよね堂々としてて、全然気後れしてないっていうか・・・」
「ああいうのんをカリスマて言うんやろな。視線を集められる空気いうか、華があるてああいうことなんやろなあと思うわ。」
「何つうか、不思議な女っすよねー。どっからどう見ても女らしいのに、こう勢いみたいな物が男顔負けみたいな?」
(女・・・)
(女て。)

とは思いつつ、忍足も可憐もいちいち突っ込まない。ちょっと慣れてきた。

「私、ベースとドラムも凄いって思うけどね。確かにセンター張れるタイプじゃないにしても、演奏レベルが高いからああいう迫力あるステージが作れるんだよ。」
「俺らあんまり詳しないねんけど、やっぱり上手いん?」
「はい。はっきりいって中学・・・しかも1年生であそこまで持っていこうと思うとなかなか。何年もやってないと厳しいですよ。」
「まーそもそもあのセンターの女が上手だったっすからね。やっぱ周りもそのレベルになってないと、聞けないっすよ。」
「へえ・・・安音ちゃんも詳しいんだねっ!」
「いや先輩。こいつ、適当に偉そうなこと言ってるだけですから。」
「だから余計な事言うなってば!」
「適当なんかいな。」
「折角感心したのに・・・」
「忍足先輩もやっぱりボーカル凄いなって思いました?」
「俺は寧ろ春日さん・・・作詞の子がやるなあて思たわ。」
「作詞?」
「あの足鳴らすんを客にやらせてたんは演出やろ?それに合わせたような歌詞してたさかい、計算ずくでやってるんやろと思うわ。」
「えー、たまたまじゃないっすか?」
「たまたまはないわ、ドラマーの性格上。」
「そうだね、棗君ってそういうの計画してやりそうな気がするよねっ。」

そう考えるとビードロズというのはバランス取れてる集団なんだなあ・・・なんて可憐と忍足は思う。自分達が今まさにでかい組織に所属しているから、それがよくわかる。
結局のところ、組織というのは色んな人が居ないと上手く回らない。
紀伊梨は確かにカリスマがあるが、紀伊梨だけで今日のステージが作れるというとまた違う話なんだなあ。と思う。

「チームプレイていうやつやな。」
「うん、私もそう思うよっ!羨ましいよねっ。」
「えー!羨ましいんすか、どこが!?」
「え、羨ましいよっ!だって、一人じゃ出来ない事が出来るんだしーーー」

「そんなん、ぜーったい一人でやった方がかっけーじゃないっすか!」

安音は心の底からそう思う。
同じことを成し遂げるなら一人の方がかっこいいに決まっているし、逆に皆でしか出来ないことって何?と思っている。

「気にしないでください。一人がかっこいいと思う年頃なんです。」
「思春期やなあ。」
「思春期じゃねえーし!それで片づけないで下さいよっ!」
「ううん・・・まあ、部活とかに入ったことないならピンとこないかなっ?」
「部活に入るとか、安音は絶対にないですね。団体行動とか協調性とかと真反対の位置に居るんで。」
「えっ?安音ちゃん、中学で部活とか入らないのっ?」
「はい!」

安音はそれはもうきっぱりと言った。

「だってそもそも、時間通りに決まった場所に来て決まったことやるっていうのがもう男らしくなくないっすか?」
「それは私でも違うって分かるよ!?」
「神崎さんはなんちゅうか、「男らしい」と「不良」とを混ぜがちやな。」
「ああ、よく同一視してます。」
「ほぼ一緒だろ?」
「全然一緒じゃないよ・・・」
「えー!だって、例えばっすよ?例えばの話、この眼鏡先輩を男らしいと思いますか?」
「指差さんといてんか。」

忍足は不良とは程遠い。
制服はきっちり着る派だし、遅刻しないし無断欠席もしない。氷帝の教師10人に聞いたら10人ともが優等生ですと答えるだろう。

その上で男らしいかと問われると。

「・・・え、男らしいよっ?普通にっ。」
「嘘だろ!?」
「あっはっは!いやまあ、これが普通だよ安音。普通はそう思うよ。」
「まあ、一昔前やったらはねっ返りなんが男らしいて言われたんかもしれへんけど。」
「今時ないでしょうね。」

忍足に対して男らしくないなんて、今まで可憐は一度も思ったことがないし多分これからもないだろう。
寧ろオラついた所がなくたって男らしさとは関係ないという、良い例だと思う。

「ただそれはそれとして、老婆心やけど何かしら中学では部活入るのんもええんとちゃう?」
「そうだね、私もそう思うっ!知らない世界が見られると思うよっ。私もそうだったしっ。」
「えー・・・やる気しねー。」
「それこそ、すぐ退部しそうなんですけど。」
「辞めるのはそれこそ簡単やし、一瞬やさかい。」
「んー、ま、そう言われっと確かに?」

嫌になったならいつでも辞めればいい。始めたら簡単に辞められないとかそういうものじゃないから。
と言われると、確かにそれなら入ってみても良いかなという気にはなってくる。もし肌に合ったならめっけもんだ。

ただ、テニス部おいでよと言いたくなるかどうかは割と微妙な所ある。真面目に。
可憐と忍足が内心でそんな事を思っていると、遠くから慣れ親しんだ声が飛んできた。


「おーーい!可憐ちゃーーーん!侑士くーーん!」


「ん?あっ!茉奈花ちゃんだっ!茉奈花ちゃーん!」

やっと合流出来た網代が笑顔で手を振った。