First RAINBOW FESTA:Loudly rythm - 7/7


「・・・・・・」

木崎はベンチに座って黙っていた。
舌打ちしたい気分だった。

そんな木崎の目の前を、観客が喋りながら通りすがる。


「めーっちゃ良かったよねー!ビードロズ!」
「ほんとほんと!あんな聞きやすい演奏聞けると思ってなかった!超アガった~!」


「・・・はっ。」

木崎はビードロズの事を辛うじてではあるが覚えていた。
だからと言って別に演奏とか聞く気もなかったけど、ツクヨミより観客の受けがいいのなら話は別だ。

だって鳳が来ているのに一番じゃないとか、そんなの許されない。

「・・・・・・」

ぎゅ。と拳を握る。

鳳はどう思っただろうか。
あっちのが上手いなとか思っただろうか。嫌だそんなの。彼の世界で一番目立つ人間は自分であって欲しい。
本当は毎日そうなら良いけど、それが現実的じゃないことくらいはわかってる。だから、せめて今日だけーーー譲って今日だけで良いから、そうありたかった。

自分達のレベルが高い事はわかっていた。
ビードロズとか関係なく、今日の中学生では自分達「だけ」がきっと頭一つ抜きんでているだろうと思っていたのに。

「・・・・・・」

くそが。
と、後5秒遅かったら口から出ていただろう。


「木崎さん!」


弾かれたように顔を上げた。

「お、鳳君!」
「こんな所に居たんだね、お疲れさま!」
「う、ううん!全然疲れてないよ!あの・・・その、さっきの演奏・・・」
「うん、見てたよ!凄いね木崎さん、びっくりしたよ!」

この。
この、鳳からの賞賛のためだけに、木崎は頑張ったと言っても過言ではない。

「そ、そうかな・・・?大したことないよ、あんなの・・・」
「そんな事ないよ!凄く・・・なんていうかな、あはは。駄目だね俺、こういう時言葉がすらすら出てこなくて・・・・」

木崎的には出てきてくれなくて全然OKである。
そしたらその分だけ、ずーっとずーっと一緒に居られるから。

「・・・うん、そうだな。見たことない木崎さんの一面に、びっくりした。っていうのが、一番正しいのかも。」
「びっくり・・・」
「あ、勿論、良い意味でだよ!その・・・俺の中で木崎さんって、か弱い女の子っていう感じだったんだけど、今日はすごく堂々としてた。うん、かっこよかったよ!なんていうか、憧れちゃうっていうか。」

ああもう今死んでもいい。
木崎のご機嫌は今、急上昇していた。

最早ビードロズとかどうでも良かった。
どんなにビードロズが上手くても、鳳からの賞賛はもらえまい。
逆に周りからビードロズ以下と思われていても、鳳からこうして言葉が貰えるんだったら木崎は絶対にそっちの方が良い。絶対。

「高校生にも全然見劣りしてなかったし、本当に凄いよ。あのメンバーの人達も・・・あれ?そういえば、あの人達は?木崎さん、一人?」
「あ・・・うん。でもまあ、気にしないで!居なくても全然平気だし!うん!」
「・・・そ・・・そ、う?」

木崎としては今、鳳が全然要らない事に気を回してこの場を立ち去るのではないかと心配して、全然何も問題ないですよアピールをした。つもりだった。
ただ鳳的にはーーーというか普通は、チームのメンバーが居ないことに対して「全然平気」という物言いは結構変である。木崎はそれに気づかない。

そして気づかない故に、違和感を重ねるような真似をしてしまう。

「それより、あ、あの・・・鳳君。」
「うん?」
「その、良かったら、一緒に帰らない・・・かな?なんて・・・」
「えっ!?」
「え?」
「あ!ええと、ごめんね!別に嫌だってわけじゃないんだけど・・・その、メンバーの人達とは帰らないの?あんまりこういうの、俺は詳しくないけど・・・夕食を一緒に食べて、打ち上げ、みたいな・・・しないの?」

普通はそうするだろう、という鳳の読みは当たっている。
だが、ツクヨミはそれはしない。
もしするとしても、木崎は行かない。興味がない。勝手にやってろと思うし、寂しいとも思わない。

「うん、うちはしないよ!もう解散する!ね、だから・・・どう?かな?着替えも急ぐから!」
「いや、別に急がなくて良いよ!うん・・・待ってるから。だから、一緒に帰ーーーー」


「その前に。」


割って入ってきたのは、芹沢だった。

「やらないといけない事があるだろ?木崎。」

木崎は舌打ちを、鳳に見えないようにかみ殺した。