「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
木崎は、芹沢と無言で歩いていた。
やらないといけない事がある。
芹沢にそう言われても、「やらないといけない事」とやらなんかに木崎は覚えがなかった。
今日はもう歌い終えた。それで終わりのはずだ。
でも、鳳が居たからーーーー鳳の前で「知らないわよあっち行ってよ」なんていつもの調子で言える筈がない。
鳳は「大丈夫、待ってるよ行ってきなよ」と言ってくれたけどーーーーそれはある意味ではこの上ない幸せだけれど、思うように振る舞えないという縛りも、木崎に与えていた。
まして芹沢は、先日の文化祭で木崎と鳳を見つけてしまっている。
この場を上手く逃れても、その後に鳳に妙なことを吹き込んでくるかもしれない。
無視れない。
逃げられない。
従うしかない。
せいぜい鳳の居ない今この間、睨み付けてやるのが精一杯である。
「不愉快だろ。」
「・・・は?」
「生殺与奪の権利を俺に握られてる・・・みたいな気分なんじゃないのか?」
カチンと来た。
分かってるのならさっさと解放しろや。
次の練習での集まりになったらただじゃおかないーーーと思ったら、それもお見通しとでも言うように芹沢は口を開いた。
「もう会わないよ。」
「・・・・は?」
「今日が最後だ。俺はツクヨミを抜ける。」
木崎はせいせいした。という気持ちと、何考えてるかわからなくて気味が悪い、という気持ちと両方を感じた。
「・・・今更?」
「今更も何も、こんな事しておいてグループに居られないだろ。」
鳳を使って木崎に言うことを聞かせる。というのは、足元を見ているというとまだ聞こえが良い方でーーー要はこれは脅迫なのだ。
確かに木崎は言うことを聞くかもしれない。でも、チームメイトにそんな事をしておいて、最早チームも何もなかろう。
芹沢は今日が最後の最後だと知っていたから。だから鳳を使う気になったのだ。
「ああ、居た。ほら、木崎。」
「何だってん・・・・!」
そこには紫希が、一人で立っていた。