First RAINBOW FESTA:Evaluation - 3/7


「ふう・・・・あれ?」
「よ!お帰り。」
「お疲れちゃんw」
「お疲れ様。」

元居た場所に戻ると、丸井と桑原とそれから棗が残って待ってくれていた。
もう皆散会していると思ったのに。

「待っててくださったんですか!?す、すいませんもっと急いで帰って来れば・・・」
「それは別に良いよw」
「ああ。こっちが勝手に待ってただけだしな。」
「で?」
「え?」
「どうだった?ごめんって言ってたわけ?」

ごめんって言ってたか。
うん。言ってはいたな。うん。辛うじて。

「・・・はい。」
「お、やったじゃん?」
「いやブンブン君、多分君の想像してる謝罪とはちょっと違うw」
「え?そうなの?」
「多分だけどねw自分が悪いとは思わないタイプでしょ、ちっ反省してまーすみたいな感じじゃないw」
「う、ううん・・・」
「本当にそうだったのかよ・・・」
「で、でもちゃんとごめんなさいって・・・」
「言い方があるだろ・・・逆に大丈夫だったか?何か、追加で何か言われたりとかされたりとか、」
「それは大丈夫でした。寧ろお急ぎのところを呼び止めてしまったみたいで、結局ごめんなさいと言われた後はすぐどこかへ戻られてしまって・・・あんまりお話は出来ませんでした。」
「ああ・・・・まあ、向こうも色々あるだろうな。こういうイベントの日は。」
「ああ、打ち上げとか?」
「ツクヨミって打ち上げすんのかなw」

普通はするけど、あそこは色々普通じゃないのは皆がなんとなく感じ取っている。

「まあでも、それはそれで良いんじゃねえ?こういう日にややこしいこと言われるのも疲れるじゃん?」
「確かに追加の罵詈雑言が出なかったのは良かったかもねw」
「う、ううん・・・」
「というか、こっちから何か話すような事があったのか?」
「はい。海原祭のお誘いと・・・」
「え、マジ?そこ誘うわけ?」
「一応木崎さん以外はそこそこ友好的だかんねw沖野とかいうやつはダウナーだけど、紀伊梨が好きみたいだから多少愛想良くしてくれるしw」
「へー!」
「それから、木崎さんに本当はお礼も言いたかったんです。」
「礼?・・・って、この場合何の礼だ?」

「・・・作詞に向き合うきっかけを下さって、有難う御座いました、って。私、ビードロズを組んでから初めて、こんなに真剣に役割の事とか、色々考えたので・・・・」

それこそこんな事がなかったら、ステージに立つとか一生言い出さなかったと思う。
キーボードに触れることもなかっただろう。
そしたら丸井が歌を乗せてくれることも、棗や皆と一緒に演奏する事の楽しさも一生知らないまま・・・だったかもしれない。

まだステージに立ってないけど、かけがえのない経験をした。
それは絶対だと紫希は思っている。

「そういう・・・それ、お礼が要るのか?」
「つくづくお人よしだなあお前はw」
「そ、そんな事は・・・」
「その理屈で言ったら、俺も一言言っとくべき?」
「え?」
「俺も結構楽しんでるけど?色々。」

この場には桑原が居るので具体的にどれがどうみたいな事は言えないけど、丸井自身は紫希がキーボードしたいとか言い出してから、結構沢山楽しい事に出会えてると思う。

そもそも皆に内緒なのに自分は知ってるっていうのが楽しい。
舟を漕ぎながら運指練習してる姿を見るのが楽しい。
焦燥で眠れないからと長電話するのが楽しい。
弾いて貰いながら歌うのが楽しい。
こんなに楽しませてもらったんだから、切っ掛けとなった人にお礼をとか言うんだったら多分自分も一言言っといた方が良いと思う。

しかし棗は絶対要らないと思う、とばっさり言った。

「え?なんで?」
「賭けても良いけどねw別に今回の件がなくたって、ブンブン君は日々楽しいことだらけで過ごしてたよwなかったらなかったで、代わりを見つけてたよwきっとそうだよw」
「ああ、話がよく見えないけどブン太は毎日楽しいことが多そうっていうのはわかるな・・・」
「そう?」
「ラッキーには自信があるだろ、ブン太は。」
「チャンスを見つけるのも掴むのも上手いからなあw」

(そんな良いものなんでしょうか・・・)

ことこの件に関しては、紫希はどうもそんな風に思えない。
自分がこんな事思いつかなかったら付き合わせなくて済んだのにと思う場面は山ほどある。

「何か、ごめんなさい・・・何かというか、何かも何もそれそのものなんですけど・・・」
「ん?何が?」
「いえあの、始めてからこちら私丸井君のことを振り回しすぎじゃないかと思って・・・棗君?」
「紫希。」
「はい?」
「悪いことは言わんからお前、その台詞他所で言わん方が良いぞ。」
「え?」

紫希に振り回される、という事が如何程難しいことか当人達だけがわかっていないのだ。
紀伊梨と千百合は特に、紫希からわがままを引き出すのが難しいという感覚があるからこそ、こんな台詞聞いたらずるい、何でお前ばっかりそんな簡単に、ぎりぃ・・・みたいな感情が多かれ少なかれ生まれるに違いない。

因みにこの感覚は、千百合と幸村が付き合いだした頃に紫希と紀伊梨が感じた事でもある。
紫希はまあ当然だけど、ちょっと寂しいなあ、良いなあ幸村君・・・みたいな程度だったが、紀伊梨はゆっきーずるいずるいとそれはもう煩かったのも今は昔。

「???」
「まあわからんならわからんで良いけどさw」
「っていうか、そもそもそれ以前に別に謝るような事でもないじゃん?」
「でも付き合わせてるわけですから、」
「それが楽しいから良いだろい、って話をしてるんだよ。」
「良いじゃないか、甘えておけば。」
「桑原君まで・・・」
「別にブン太だって、損ばっかりしてるわけじゃないさ。俺はよく知らないけど、バンドの事なんだろ?俺達皆ビードロズのファンなんだし、バンドが良い方向に行くのなら俺達だって嬉しいからな・・・っていう話を、行きの電車でもしたばっかりだ。」
「!有難うございます!」
「マジでw嬉しい事言ってくれるじゃんw」

勿論友達として応援してくれるのだって嬉しいけど。
でも友達だからこそ、一バンドマンとしても贔屓目なしで認められたい、みたいな気持ちがビードロズにはある。

(やった・・・!)

嬉しくて嬉しくて、紫希は顔を綻ばせる。
誰に凄いと言われるより嬉しい。大事な人達だからこそ。

「そういえば今日のステージとかどうでしたかw楽しみましたかw」
「いやわかるだろ?あれだけ盛り上がってたんだから。」
「お客さん、乗ってきてくれましたよね。良かったです、上手くいって・・・」
「そういえば、あれってわざと?」
「あれ?ってどれ?」
「何か歌詞が演出と合ってるとか何とか言ってる奴が、結構居たからさ。」
「ああ、あれはちょっとわざとw」
「一応、そういう演出しようということで決めていたので、それを想定したものにしてみました。とはいっても、実際上手くいくかどうかは水物なんですけれど・・・」
「上手くはまったね、今回w」
「へー・・・」

そこわざとなんて事あるのかと半信半疑だったが、本当にわざとだったのか。

それで上手く出来るんだから大したものだ。
いや、大したものというか。

「・・・かっこいいじゃん?」
「そうですよね、リズム隊が映える曲って決まるとかっこいいですよね。」
「いや、そうじゃないだろ・・・」
「え?」
「なんでお前w国語の成績はあんなに良いのにw」
「あのな?俺は春日がかっこいいって言ってんの。」
「・・・・・・・え、んん・・・ん?」
「受け止められてないな・・・」
「まあねwぶっちゃけ作詞って、外のお客さんから評価もらうことは少ないからねw」
「え、マジで?なんで?」
「そりゃあだって、誰だってインパクトのある方が記憶に残るのは当然よw中には一部だけど、音楽なんだから詩なんて重要度では明らかに劣るとかいう見方の人も居るくらいだしねw」
「いや、それも言いすぎだろ・・・」
「いや、正しい正しくないじゃなくてねw実際問題そういう認識の人が存在してるんですよ、っていう事実の話よw」

紫希は、自分がどうとか関係なしに作詞なんて大したものじゃない、と言われるとそれは違うと思う。それは世の作詞家に失礼すぎる。
ただ、それはそれとしてステージに上っているわけじゃないのに他のメンバーと同等の評価をされるなんて、端から思っていない。

観客は正直だ。

品評会じゃあるまいし、オーディションの審査員みたいに一つ一つの要素をいちいち吟味なんてしない。
惹きつけられるかそうでないか。ただそれだけの、極めてシンプルな話。

勿論音楽に、ここさえ良ければ無条件に観客は乗ってくるみたいな、魔法みたいな要素はない。色んな要因が繋がって一つの音楽になる、それは間違いない。
その中で自分の作詞と言うやつは如何程支えになれてるのか紫希は未だにわからないし、分かる日など永遠に来ないだろう。

でも。

「・・・あの、丸井君。」
「ん?」

「・・・有難う、ございます。嬉しい・・・です。」

誰に無駄と思われていたって、紫希が作詞に真剣に取り組んでいるのは揺るぎない事実。
だから評価を貰えれば嬉しい。
無くても当然と思ってはいるけれど、要らないとかして欲しくないわけじゃない。凄いね、良いと思う、と言われれば頑張った分だけ嬉しいのは、詩だろうと他の何かだろうと変わらない。

だから紫希は素直に受け取りたかった。
今日は特別な日だからーーー偶には良いだろう。

丸井はお礼を返す紫希を見て一瞬キョトンとしたが、またすぐいつもの笑顔に戻った。

「何かお前、最近素直じゃねえ?」
「えっ!?あ、ええと、ごめん、なさい・・・?」
「ははは!なんでだよ、そっちのが良いじゃん。これからもそうしとけよ?」
「う、ううん・・・はい・・・・」

「ブンブン君こあーい・・・・」
「怖い?何がだ?」
「お前だって、最近偶にブンブン君が食い物のこと二の次にして怖いとか言うじゃん・・・」
「ああ・・・そういう、怖い・・・・」