First RAINBOW FESTA:Columbus egg - 3/5


「いやまさか、「あの」桐生可憐さんやったとは・・・世間は狭いわ、ほんまに!」

可憐は謙也と一氏と連れ立って歩いていた。
別に殊更謙也の方は忍足と合流するつもりもなかったのだが、こうなったのも何かの縁だしという事で、もう5人で行動しようかという結論になったのだ。

「あの桐生さんて、何や?自分有名なんか?」
「有名っ!?全然!私一般人ですっ!」
「ああちゃうで、俺が個人的に知っとるっちゅー話や!侑士からよお話聞いてるさかい。」
「え、」

何かこの場合それもちょっと怖いのだが。
何言われてるんだろう。

「その侑士ていうのんが、お前の従兄弟やんな?」
「せやで!テニス部で、えーと桐生さんがマネージャーやろ?そうやったやんな?」
「うん、そうだよっ!いつもお世話になってますっ!」
「いやもうこっちこそやで!彼奴何やいっつもクールぶっとって誤解されることも多いねんけど、悪い奴やあらへんから仲良うしたってな。」
「それこそ私のセリフだよっ!これからも仲良く・・・一氏君っ?」
「ん?」
「あの・・・何っ?」

さっきから一氏はじいっと可憐を見ている。

別に睨みつけられてるとかそういうわけじゃないが、そうーーー敢えて言うなら、興味深いものをじっくり見るような目つきでしげしげと見てくるので、可憐としてはとても居心地が悪い。

「ああ、いや・・・ちょっと思うてんけど。」
「はいっ?」

「自分ら、付き合うてんの?」

今、手ぶらで良かったと可憐は思った。
それこそスマホとか手に持っていたら、間違いなく落としてアスファルトに叩きつけて割れていただろう。

「ちっ・・・違うよ違うよっ!そういうのじゃないよ、本当に違うからっ!」
「せや一氏、変な事言うなや!」
「いや、なんでお前がそんな怒んねんな!そらまあいきなり過ぎて、ちょっとは不躾かもやったけどやなーーー」
「それもそうやけどや!そもそも彼女作る事で侑士に先越されるとか、由々しき事態やっちゅー話や!」
「「そっち?」」
「いや、そっちやろ!おおいにあるやろ、そっちは!!」

これは謙也を責められない。
常日頃から何かと競っている二人だが、別に日頃競っていなくても、思春期の男子というやつは身近な友達が彼女持ちなんかになると、急にぐんと差を付けられたような感じがして焦るのだ。
可憐は女子だし、一氏は今日恋愛に関して自分の見識の扉を開けたばかりなので、全然賛同してくれないけど。

「後追加で言うとくとやな。」
「まだあんのんかい!」
「あるわ!彼女が居るだけで贅沢やのに、彼女がマネージャーでもあるとか羨ましさ3割増しやろ!プライベートでも一緒部活でも一緒て、どんだけ人生楽しいねんっちゅー話や!」
「「・・・・!」」

これも謙也を責められないだろう。
今謙也は可憐と忍足の事を想定してのみ話をしているが、まさか忍足の恋人候補暫定1位内々定保持者が正にマネージャーであるという可能性を考慮しろなんて、それは望みすぎというもの。
況や、一氏のまさかのチームメイトへの恋心をや。

「リア充にも程があるやろそんなん・・・って、せやった!実際違うんやったな、うん。せやからええねや、俺は別にまだ負けてへん。うん。」
「勝ち負けの問題か?」
「違うと思うなあ・・・」
「う・・・いやまあ、勝った負けたみたいな言い方するのんも無粋なのんはわかってるけどもや!」
「せやろ?結局遅い早いっちゅーより、ほんまに好きな相手と付き合えてるかどうかっちゅーとこが一番のポイントでやな、」
「ちゃうねん!いや、そこはちゃうねん!」
「どうちゃうねんな!」
「ええか!あのな!


侑士はな、好きやって思える相手以外絶対!相手にせえへん!」


「・・・・!」

可憐の心臓が変な音を立てた。
ドキ、とギク、の丁度真ん中のような音を。

「せやから、侑士に彼女が出来たっちゅー時は、必然的にそこはもうクリアしとんねん。」
「そうなんか。適当な気持ちで付き合うとかせえへん奴やねんな。」
「せや!侑士はええ奴やからな。まあそれだけやのうて、性格的に好きやない女子と無理して付き合うとか、そういう事はしいひんねん彼奴は。そこら辺真面目・・・っちゅーか、ちゃんとしとる奴や。」
「はー。」

「・・・・・・」

可憐の心臓は変な音のまま止まらない。
どころか寧ろ、悪化してるような気さえする。

例え常日頃傍に居るのは自分の方でも、流石に謙也より自分の方が忍足を良く知ってるなんて、そこまで傲慢な考えは可憐は流石に出来ない。
だからこそその謙也が言ってることはほぼ100%おそらく正解と言って良く、つまり忍足は本当にそういう傾向があると言っていいだろう。


つまり、忍足は極めて真剣に好きであるわけだ。
同級生でマネージャーでーーー自分の友人である網代茉奈花を。


「お前ほんまに従兄弟の事好きよなあ。いやそういう意味やあらへんけど。」
「おう、好きやで。まあそれはそれとして勝ちは譲らへんけどやな。」
「だから何のや!」
「何であってもや!」
「何なんやその張り合い精神・・・って、桐生さん?どないかしたんか?」
「えっ!い、いや、ううんううん!何でもないよっ!何でも・・・」

忍足は謙也と仲が良いのは知っているが、網代の事はどれくらい話しているのだろう。
今の反応を見る限り、忍足が網代を好きなことまでは知らない感じがするが。

(それこそ合流して鉢合わせたらどうなるんだろう・・・私、頑張って隠すべき?でも従兄弟なんだったらバレても良いのかなあ、でも一氏君も居るし・・・)

うーん・・・とマイワールドに入って考え出す可憐を、一氏はちらちらと見やる。

「・・・お前もどないしてん、さっきからちろちろと。」
「ああいや・・・ちょっとな。好きなんちゃうかと思て。」
「は?何が?」
「いや、お前の従兄弟を。」
「・・・ん?ん?え?侑士が?好き?」
「侑士「が」やのうて、侑士「を」。あの子がお前の従兄弟好きなんちゃうかて思てん、っちゅー話をしてんねや。」
「はーーーんむぐっ!」
「さーわーぐーな!勘や勘、決まりみたいに大声出すなや。」

そんな事言ったって出るものは出る。
え、嘘。正直言って、今目の前に居る女の子が従兄弟を好きだったら割と普通に動揺するのだが。もしそうだったら自分はどうするのが正解なんだろうか。

「え、え、待て、何や俺、何や!何をどうするべきなんやこれ、」
「いや、落ち着けて。何をも何も、出来ることなんかあらへんねんから。」
「そうは言うてもやな・・・ちゅうか、お前は逆になんやねんなその落ち着きは!」
「俺か?俺はまあ・・・なんちゅうか、そうやな・・・さっき世界の素晴らしさを知ったばっかりやから・・・」
「何やお前はお前で、元気になった思たら、今度は変な事言うようになってからに・・・」
「いやちゃうねん、これは変やのうて・・・まあええわ。口で説明しても多分ピンとけえへんやろし・・・」
「はああ!?分かるわ!何の話かは知らへんけど分かるわ!多分!言うてみい!はっ!そや、桐生さん!桐生さん!」
「へっ!?え、ごめんっ!聞いてなかった、なあにっ!?」
「桐生さんも協力してくれ!」
「へ?」
「どや一氏!こっちは2人やぞ!手伝いなしやとは聞いてへんからな、これでどんな難しい話されてもわかるで!多分!」
「えっ、えっ、えっ!?待って、何の話してるのっ!?」
「はあ・・・・」

こんなテンションで恋の話なんて出来るか、な顔でため息を吐く一氏は、彼にしても結局恋心に気づきたてで一時的にしっとりした思いに浸っているだけである。
これが己に馴染んだが最後、彼は常に好きな人を忘れない恋する暴走気味少年に変貌を遂げるのだが、それを彼は未だ知らない。

「はあとちゃうわ!さあ、何の話やかここまで来て言わへんとは言わせへん・・・あ!」
「「え?」」
「侑士や侑士!今あっち通ったわ!」
「えっ!どこっ、どこっ!?」
「いや自分は見えへんやろ、背丈的な意味で。」
「ちっちゃいのは気にしてるのっ!」
「ちょ、言うてる場合やないで見失うわ!おーい、侑士ー!聞こえてへんのんか、おい侑、士・・・・」
「・・・謙也君っ?」
「おい、どないしてんな。居ったんか?言うとくけど俺、お前の従兄弟は顔知らへんねんからーーー」

もし視界に入ってもそれと気づけないぞ。
一氏がそう続けた丁度その時、一瞬。

ほんの一瞬だけ、人の波がまばらに途切れた。