First national convention:Speak out - 7/8


「ふう・・・・」

少し前。
忍足が入浴を終え、自室に戻ってくると、置いてあったスマホに通知が幾つも。

中を開くとそこは向日をはじめとしたいつもの部活での顔ぶれで、まあ端的に言うと「可憐がどうなったか知らせはないか」という事を皆気にして探っているのだった。

明日は全国。
流石に、全国まであの調子で良いのか、という疑問がそこかしこから湧き出ていたところを見計らったように、跡部は「手は打った」とだけ言って、後は放っておけと指示をした。
しかし、そうは言っても気になるのが人情・・・というより、この場合友情だろう。
跡部が手引きしたなら、滅多なことはないとはいえ。

「・・・・・」

あの、フェスの日。

忍足は網代とキスをしたわけではなかった。

それは本当であり事実だった。
謙也にもそう言った。

じゃあ何だったんだあれ・・・と聞かれると、別にどうという事はなかった。
網代があの日、カラコンをしてきたと言うから。だから、近くで見せてほしかっただけ。ただそれだけ。

勿論ただそれだけの理由をはっきり謙也に言わなかったのはわざとだけど。

(・・・・どう思うておくべきなんやろな。)

周りはほぼ皆、可憐が急に仲の良い人を軒並み避け始めたと思っている。
だが、忍足は知っている。フェスの日からーーーもっというと、網代とキスしてると勘違いされてからだ。可憐がああなったのは。

それは謙也の態度から考えてほぼ正解だろうし、逆に謙也と関りのない他の者は、どんなに考えても真の理由には辿り着けない。
これは忍足にも有難かった。考える時間が増える。

「・・・・・」

普通、だ。
普通ーーー目の前の事しか見えてない猪タイプならいざ知らず、忍足のような基本冷静で気が回るタイプならーーーこういう展開になったら出てくる推測は一つ。

可憐は自分が好きなのだ。
だから他の女の子とキスしたように見える場面を見て、動揺しまくっていて悲しんでいる。

これは実はドンピシャの正解なのだが、今の忍足にはそうは思えなかった。

原因は2つ。

1つは性格。
元々忍足は何かに対して推測する際、甘い方向に見積もる、という事を殆どしない。
まして恋愛ごととなると尚顕著。
確認も取らないであの子きっと俺の事好きなんやろうな・・・なんて思いながらそれを前提に行動するとか、とても自分には出来ないと忍足は思っている。
自分の都合の良い方に良い方に考える、というのが性に合わないのだ。

そして2つ目。
可憐がもしも自分を好きなんだったとしたら、何故ああも自分と網代の仲を応援してきたのか。
それこそ頼んだ記憶もないし、寧ろ気にしないでくれて良いからと言っていたのに、可憐は何くれとなく忍足と網代の仲を取り持とう取り持とうと頑張っていた。
あの頑張りは一体何ゆえなのか、それがさっぱりわからなくなる。

そこから導き出される結論としては。

可憐はフェスの日、自分と網代を見て何かが崩れたのだろう。
ただ、それは自分が好きだからではなくて、他の所に理由があり、自分達を見たのはあくまできっかけに過ぎない。

と、思う。
多分。おそらく。

これが今、忍足が立てている推測だった。

しかし。だ。
それはそれとして、実際問題可憐は忍足から逃げまくっている。

今日も逃げられた。
というか、ここ最近皆可憐から逃げられている。部員だろうがマネージャーだろうが、同級生だろうが先輩だろうが誰だろうが、例外はない。

どんなに理由に当たりが付いたって、事の解決に結びつかなければさして意味はない。

「・・・・・・・」

忍足は、繰り返しになるが慎重派である。
推測を立てちゃいるが、あくまで推測の域を出ない事だって知っている。
何かするなら確定してからの方が良い。それはわかってる。

わかっているのだが。

「・・・・・・・5やな。」

5コール鳴らして出なければ諦める。
忍足は決め打ちして、スマホを鳴らした。