First national convention:Player of S3 - 1/6


「うっふっふー♪Sす・り・いー♪」
「S1から3への移動で喜ぶってのも変な話だなあw」
「あはは・・・でも、幸村君大抵S1ですから新鮮ですね。」
「スクールの時も大抵S1だったもんね。」

この夏が始まってからも幸村がS3を務めたのはたった2回で、他の時はずっとS1に納まっていた。
この全国大会、立海は一回戦をすっ飛ばされる。それはつまり、「一回戦の時だけは5戦全部やる」の規定から外れてしまうので、ビードロズ一行は最悪幸村の試合は一度も見られないことを覚悟していた。(最も、S1まで回らずに勝つことに対して「最悪」ってどうなのという気もするが)

だがS3となると、必ず回ってくる。回る前に決着が着くことはありえないので、今4人は諦めていた幸村の試合が見られる事に対してそれはほっとしていた。

「ただその代わり、今度は真田君の試合が・・・」
「あ、そーそー!そーだよね、真田っちが今度はS1だから、見らんないかもしんないよねー!」
「彼奴は別に良いんじゃね。」
「お前w扱いが雑すぎないw」

・・・なんて会話を楽しんでいる、何列か後方に座っている少女が一人。
麦わら帽子はまだ良いとして、グラサン。マスク。
顔を隠すフル装備で座っている彼女は、郁である。

(しまった・・・春日さんに行く、と伝えるのを忘れてしまった・・・)

郁は、自分が同行すると言い出さなければ紫希はビードロズと見るという事を失念していた。
というか、自分が紫希と行くか一人で行くかの二択しかないものだから、向こうもそうだろうと何故か思い込んでいた。
会場についてから、そうだ紫希はビードロズと一緒のはずだと思い至ったのだ。考えれば当たり前の話なのだが。

しかしさりとて戻るのも、ほらここまでの交通費が惜しいし、と自分に言い訳をした郁は、適当にグラサンとマスクを調達して、何やかんや自力でここまで来たのだった。

(しかし暑い・・・この日差しにさらされながらずーっとマスクは堪えるぞ・・・ええい、始めるなら早くしてくれ!)

自分の都合でせんで良いマスクをしてるのにそんな自分勝手な、と突っ込まれそうな郁の叫びが届いたのか、ずっと聞きたかった審判の声が聞こえた。

「それではこれより、立海大附属対磯切の試合を執り行います!両校、礼!」







「ゲーム立海!4-1!」

わっと湧きかえる観客席。
D2、相変わらず鬼のような強さでもって、立海はゲームを進めていた。

「おー!凄い凄い、何かいつもより時間かかってますなー!」
「お前wなんつう酷い事をw」
「え、酷い!?何で!?」
「あ、あはは・・・でも本当に相手の方もお強いですよね。危ない場面が偶にありますし・・・」
「まあね。」

流石に全国区とでもいうか、ちゃっちゃっとは済まなくなってきたなあというのが4人の印象だった。
ゲーム差こそいつもと同じだが、ラリーがいつもより続く。

まあそれでも「いつもよりは」というだけで、他所の試合に比べたら十分短くさっさっと終わってる方なのだが。

「でもこの分だと、やっぱりS1までは回らんだろうなあw」
「うんうん!S3にして貰っといて良かったですなあ!・・・あり、なんでS3なんだっけ?」
「確か、柳君が何か、試合を通して仮設の立証を・・・ええと、確かめたい事があるとか・・・」
「あ、そーだったそーだった!で?何を確かめるんだっけ?」
「そこまでは言ってなかったんじゃない。」
「まあ周りに敵が一杯の状態で、ぺらぺら喋るわけにもねw」
「ほー・・・んじゃあ、ゆっきーの試合まで待たないとわかんないって事ですな!」

4人はやっぱり、後ろに居る変な格好の郁に気づかない。

が、4人は真後ろを見ねば視界に入らないが、立海の部員ゾーンからはそうでもない。
郁は割と早い段階で、郁だとは気づかれないものの、誰だあんな暑苦しい格好で見に来てる奴は・・・という奇異の目で見られていた。

「変な格好の奴が居るの。」
「あんなに暑いんならマスク外しても良いと思うけどな・・・」
「つうかそもそも、帽子のつばあんなに広いのにグラサンってのがおかしくねえ?」
「視力がよろしくない可能性が・・・とも思いますが、その割には杖などお持ちでないようですね。」

目が見えないのなら杖や盲導犬が居ないのは変だし。
風邪ひいてるのならこんなとこに居ないで家帰って寝てなよと思うし。
帽子してるんなら眩しくないんだしグラサン取れば良いし。

色々矛盾した恰好してるなあ・・・という意味で、今の郁はとてもテニス部の目を引いた。

とはいえ、恰好がおかしい以外は取り立てて妙な事はしていない。
やや暑そうにしているものの大人しく見ているだけなので、一同は程なく気にしなくなった。
そしてこの事は、そういえば今日変な格好の観客が居たね、くらいの事で終わるかもしれなかった。

かもしれなかったのだが。
結果的に言うとそうはならなかったのだが、そうなるのはまた少し後の話だった。