そんな状態で迎えた試合開始。
初戦、D2。
この試合の総括、まあ端的に言うと。
「ええ試合やな。」
「えっ!?」
「うん?」
「ど、どこがいい試合なのっ!?負けちゃってるよ、こっちがっ!」
惨敗・・・とは言わないが、競り負け気味である。
これは多分、負ける。ぎりぎり負ける、みたいな結果になるだろう。
慌てふためく可憐とは正反対に、忍足は非常に落ち着いた涼しい顔で試合の成り行きを見ている。
そしてそれは、跡部も同じだった。
(ほう。負けそうではあるが、思ってたよりやるじゃねーの。これで最悪の事態は回避できるな。)
今回の試合。
最悪というのは、ただ単に負けを指すわけではない。
勿論負けるのも良い事では決してないのだが、負ける時は負けるでどうしようもない。
此処は全国だ。ぶつかって負けることだってある。
それよりも最悪なのは、「勝てる試合を落とす事」である。
いつもの調子が出ていれば勝てたのに、パニックになっておろおろした挙句負けましたなんて、そんな事になったら目も当てられない。
単なる負けじゃない、部全体の士気に関わる敗北だ。例え練習試合で何勝していても、公式試合で勝てなければ結果にならない。
新しいD2のペアは、かなり善戦している。
負けそうではある。でも、普段通りのプレイがちゃんと出来ている。
これはとても大きい事ーーーパニックのままどさくさで白星を得るよりも、もっともっと意義深い事なのである。
「ゲーム八幡北学園!5-4!」
ゲームは劣勢のまま進んでいく。
ギャラリーは兎も角、新しいD2のペアの目つきは冷静だ。
そうだーーーそれで良い。
跡部は小さく、誰にも分からないくらい、ほんの僅かに頷いた。