First national convention:Nomal condition - 4/7


ああ、負けた、そんな台詞が周りから聞こえてくる中、可憐も煽られて顔色が悪くなる。

負けてしまった。
跡部は勝つと見込んでるって言ってたけど、大丈夫なんだろうか。
もしかして、またこの前みたいにいきなり3勝ストレートで上げられたりーーー

「大丈夫やと思うで。」
「え?」
「次は多分勝てるわ。この分やったら。」
「え、そ、そうなのっ?」

忍足は頷いた。

「まあ、怪我の功名言うか・・・何事もええ面と悪い面があるていう事やな。」
「ど、どういう事っ?」
「見てみ。」

忍足は今まさに試合に臨もうとしているD1のペアを指さした。

「目が冷静やろ。」
「えっ?」
「もう関東の決勝で初めて負けた時とはちゃうっちゅう事や。」

関東大会決勝、D2。
あの試合は、ただの敗北以上のものを氷帝に齎してしまった。

勝てるだろうと皆が信じ込んでいた中、いきなり喫してしまった大敗北は、氷帝陣営をパニックに陥れたのだ。
まさか、そんな筈は。
そう思いながらする試合は、やはりいつもよりも堅実さをかいていた。

でも、今はもう違う。
敗北の味を忘れていないD1は、次の1勝を狙いに行ける。

一方の八幡北は逆に、東京の注目株である氷帝学園からいきなり1勝もぎとれた事に早くも浮かれ始めた。


「あれ?いけるんとちゃう?」
「もしかして氷帝って、そんな大した事あらへん・・・?」
「全国じゃ普通ってくらいのレベルやろ。」


宍戸や向日辺りは結構こういうのに対して、露骨にカチンと来てしまうタイプである。

「くそくそ彼奴ら、好き放題言いやがって!」
「D1を見てやがれ!まだ勝負は終わっちゃいねえんだ、激ダサな目に遭うのはそっちだぜ!」
「あらやだ、何か2人とも元気になっちゃって。」
「う・・・しょうがねーだろ、ムカつくものはムカつくんだよ!」
「っていうか、彼奴らに言われんのがムカつくんだよ!

どう見たって立海の足元にも及ばねえテニスしてんのに、こっちに勝った気でいやがるんだぜ!」

網代の口があ、の字に開いた。
というか、可憐も宍戸も。聞いていたほぼ全員が同じ顔をした。

忍足は溜息を吐いていたが。

「言うてもうたなあ。」
「えっ?えっ?」
「あんなん、あっちからしてみたら腸煮えくりかえるどころの騒ぎとちゃうで。」

可憐が試合前に網代から教えてもらったこと。
結局のところ、自分達は本当の意味で八幡北に注目などしていないという事を、向日ははっきり相手に言ってしまったのである。
しかもD2に負けておいてこれ。

俄然相手サイドから立ち上ってくる怒りのオーラに、可憐はひっと小さく言った。




「ははははは!」

笑ってるのは跡部である。

「笑ってる場合なの?景吾君。」
「あーん?当たり前だろ。見ろ、彼奴らは一気に冷静さを欠いてやがる。」
「まあね。向日君もやるねー・・・ってまあ、本人はそんな気はなかったんだろうけど。」

「何にせよ、ナイスアシストだ。」
「ああ。」

そう言ってコートへ向かうのは、D1・・・入れ替えの末に入った、D1である。

「でも、大丈夫ですか?確かに冷静さは損なったかもしれないけど、ヒートアップしてますよ。」
「ヒートアップくらいで地力の差を埋められたらたまったもんじゃないぜ。なあ?」
「そうそう。1年坊主は安心して見てろよ。」
「あーん?誰に物言ってんだ?」
「「お前には最初から言ってない。」」

確かに1年生ではあるかもしれなくても、跡部に向かって「安心させてやるべき幼気な後輩」などと、部の誰も思っていやしないだろう。

(というか、あんまり言いたかないが。)
(自分がレギュラーになって初めて分かるな。)

後ろに跡部が控えている。
そう思うとそれだけで、緊張してない風を装える程度には落ち着ける。

「それではこれより、D1の試合を執り行います!」