「ゲームセットアンドマッチ!氷帝!6-2!よってD1は、氷帝学園の勝利とします!」
わっと湧きかえる氷帝陣営。
何故だろう。なんだか、本当に久しぶりの勝利のような気がする。
負けたのは4試合だけで、勝った試合の数の方が今でも圧倒的に多いのに。
「勝った・・・・!」
可憐も周りと同じくガッツポーズをした。
勝った。
勝ったのだ。
知らなかった、勝つってこんなに嬉しい事だったんだ。
一度敗北の味を嚙み締めたからこそ、その後の勝利はたまらない味。
「おい、なんなんやあれ・・・」
「聞いてへんぞ、さっきと違うやんけ!」
「はん。」
跡部は悠々と鼻で笑った。
これが本来のこっちの実力である。
確かに立海に手酷くやられて、調子を崩した状態がずーっと続くと勝てるか微妙だったが、D2、D1でもう完全に持ち直した。
ここまでくれば、もうS3、2は容易い。
相手も逆に浮足立ちはじめた。
今回跡部は例によってS1に入っていたが、多分もう自分まで回ってこないだろう。今のSレギュラー2人で、十分勝てるはずだ。
いけるな、と思い小さく笑む跡部を忍足は、遠くからフェンス越しに見つめていた。
「・・・・・」
忍足も聞いちゃいないが、跡部が何考えてるかは想像がつく。
一回戦は行けるなと踏んだんだろう。
それはわかる。
自分もそう思うし。
「・・・・・・」
「ねえ侑士君、次にS3の園部先輩なんだけど・・・ねえ、侑士君。」
「・・・・・・」
「・・・侑士君!」
「!ああ、堪忍な。どないしたん。」
「・・・別に大した事じゃないと言えばないんだけど、どうしたの?なんだか今日、上の空じゃない?」
上の空というか、ただ徒にぼーっとしてるのではなくて、試合を食い入るように見ているが故の事なのはわかる。
わかるが、正直そんな真剣に見るようなハイレベルな試合か?と言われると疑問。負けはしたけど、対立海の時の方がレベルは上だっただろう。
疑問符の網代だが、忍足は苦笑してまた前を向いた。
「ちょっと色々。」
「ふうん・・・テニスでお悩み?」
「悩んでるのんとはちょっとちゃうな。考えてんねん。」
「・・・考えるのも良いけれど、行動に移さないとわからない事だってあるんじゃない?侑士君って考え過ぎのきらいがあるもの、ね。」
「好きやろ、そういうのん。」
「・・・考え過ぎが?」
「考え過ぎるタイプが。」
網代は口を尖らせてちょっと赤くなった。
ぼーっとしてると思いきや、こういう返しは鮮やかなのか。
苦し紛れに目を向けた、もう既に始まっているS3は、跡部の見立て通り優勢に進んでいた。
(はあ・・・・)
可憐は網代が忍足に寄って行ったのを見て、距離を取っていた。
さりげなく出来たかどうかは知らないが、あのまま近くに居るより良かっただろう。
不用意なことを見聞きしない、これも自衛の一種だ。
とは言いつつ、2人とも友達なのにこうして避け続けるのも周りから見たら変に見えるのかもしれないけど。
(・・・ううん、もしかしたらそうでもないかな・・・)
逆に避けていたら可憐が気を使ってるのかと皆思うかもしれない。ああ、2人にしてあげてるのね的な。
それは楽だなと理性では思いつつ、この期に及んで自ら進んで外堀埋めているような気がして胸も痛む。
これからこれが続いていくのか。
慣れていかないと。色んな事に。
「ゲーム氷帝!3-0!」