さて、全国大会2日目。
今日は勝ち進めば午前と午後一回づつ試合があるので、この前よりも長く幸村の試合を見て居られるかも、とビードロズは早くも観客席でうっきうきである。
「今日どこと?どこと?」
「勝ったとことでしょ。」
「そーだけどー!」
「あはは・・・ええと、一先ず午前中の3回戦は第一佐鳥中学とです。その次が、ええと・・・駿河台か、菰田か、どちらか勝った方です。」
「へー・・・あり?氷帝は?後あのー、えー・・・ほら!ケンちゃんとヒト君とこの、」
「四天宝寺かw」
「そうそれそれ!」
「そういやその2つどこ行ったの。」
「ええと・・・あ、ブロックが違うみたいですね。ですからええと・・・お互い勝ちあがるとして、準決勝で氷帝対四天宝寺戦があるので、そこでどちらかが負ける事に・・・」
「えーーー!嘘、どっちかとしか試合出来ないのー!?」
「へー。準決で当たるんだ、彼奴ら。」
「確かに勿体ない気がするwどうせなら両方との試合見たかったなw」
・・・なんて軽く言ってるビードロズだが、テニス界隈に詳しい者からしたらとんでもない話である。
氷帝学園。
四天宝寺中学。
共に全国区でべらぼうに強いと噂されているこの2校。準決と言わずもっと前で当たって潰しあってくれれば良かったのに、と沢山の学校から思われているこの2校に向かって、両方と当たって見たかったねなどとカジュアルに何を言ってるのか。
両方と当たって見たかったねっていうか、それって「両方負かしてみたかったね」と一緒だろと周りから思われているとは露知らず、ビードロズはいっそ呆れるほど純粋に盛り上がっている。
「早く試合始まんないかなー!楽しみだなー!」
「まあ勝つだろと思ったら気楽に見れるよねw」
「今回は、幸村君にも絶対に回ってきますし、猶更ですよね。」
「まあね。っていうか正直、やっぱ知り合いがやってるの見る方が楽しいし。」
「あー、わかる!知らない人がやってても楽しいけどー、ゆっきーや真田っちややなぎーがやってるの見ると、やっぱテンション上がるよねー!」
現状、立海レギュラー陣ダブルス担当に、4人の知り合いは居ない(というかまあ、今の時点でSに3人も入ってる方が変と言えば変なのだが)。
別に知らない人同士の試合だってそれなりにエキサイトするが、これが知ってる人ならより入れ込める事は間違いなかった。
「そういう意味じゃ、来年に期待大よねw」
「そーだよねー!来年になったら誰が入るかなー?」
「いや、普通入んないんじゃないの。次に3年と入れ替わりで入るのは次の3年でしょ。現2年じゃん。」
「えー!?わかんないじゃんそんなのー!もしかしたら、皆入るかもしんないしさー!」
「ううん、そうですね。絶対3年じゃないといけない、っていう決まりがあるわけじゃありませんから、全員は無理でも誰かは新しく入るかも・・・」
「だよね!だよね!わかんないよね!」
「まあぶっちゃけその辺は願望もあるw彼奴ら頑張ってるもんなあ。」
まだ今年終わってないのに気が早い話題だが、どうせ試合開始までまだ暫くある。
それまでと言わんばかりにお喋りに勤しむ4人。
を、席数列後ろから、耳をダンボにして見聞きしているのは、やっぱり帽子+グラサン+マスクのルックを外さない郁。
(来年の話だと・・・!そうか、確かに当然だけど、何も大会は今年で最後なわけじゃないのか・・・・来年も同じことをするんだよな、それは言われてみればそうだ・・・)
何か最近「そう言われてみれば・・・」な案件が多い郁だが、これは裏を返すと郁の狼狽えの現れである。
郁は平静を装いつつもパニックになりかけているのだ。自分の急速な変化に。
そもそも、こうして今日も来てしまっているのがまあ良い証拠である。
今日だって晴れてるし暑いし、そのくせマスクのせいで息苦しいのに。
・・・別に見に来たって、丸井が試合するわけでもないのに。
「・・・!」
郁はブンブンと首を横に振る。
関係ないだろ、関係ない。自分はあくまで誘われたから試合を見に来たのであって、プレイするのは誰でも良いはずだ。
そうだ。別に丸井なんて出なくたって良い。
全然構わない。今のままで十分見られる。
そりゃ。
まあ。
ほんのちょーーーーっぴりは、見てみたい気がしないでもない、かもしれないかもしれないかもしれないけど。