First national convention:Bye&bye&bye 2 - 3/5


毛利と別れてコート整備を待つ間、ビードロズは散歩をしながらも、やはり話題はさっきの毛利の事であった。

「いやあ、変な人でしたねw」
「面白いおにーちゃんだったよねー!ちょっと怠け者だったけど!」
「紀伊梨から怠けてるって言われるって、マジで相当よね。」
「む!どーゆー意味ですかそれはー!紀伊梨ちゃん、趣味ならサボらないよー!趣味なら!」
「あはは・・・でも、あの状況でテニス部に在籍し続けていられるっていうのも、ある意味心が強いというか・・・」
「まあねwメンタルが強いとも言えるよねw」

テニス部は変な人間が多い多いと思っていたが、その中でも毛利のようなタイプは大分特殊であろう。そもそもあの強者揃いのテニス部の中で、群を抜いて強くなければああしては居られないのだ。

「でも精市達はああいうタイプ嫌いそ。」
「ああそうですね、真田君も柳君もですけど、あそこまで部活に関わらないっていうのは・・・」
「えー、でもニオニオもサボってるっしょ?」
「彼奴なんだかんだ、大体は出てるでしょw大会にもちゃんと参加してるしwそういうのとはさ、また違ったタイプの変な人でーーー」

「あ!皆だー!おーい、皆ーーー!」

え、と3人が前方を見ると、屋外用の簡易テーブルにノートを広げて、それを囲んでいるいつもの面子。
昼食もミーティングもひと段落して、コート整備を待っているらしいが、3人はいつの間にか大分コート近くまで戻ってきていた事に素でびっくりした。

まあいい。
今は丁度良い塩梅に、不戦勝云々の問題からは頭が離れている。
代わりに他の問題に今思考が持っていかれているけれど。

「お疲れーーーーあぶっ!?」
「帽子を被らんか帽子を!この強い日差しの中、サンバイザーだけでずっと観戦するとは何事だ!」
「いったーい!何すんのさもー!だいじょーぶだよ、別にー!」
「何が大丈夫なものか!そもそもーーー」

出会い頭から喧々囂々と小言の嵐の真田だが、今日はテニス部は止めない。真田の言う事は最もだと思っているからだ。

「と言いますか、黒崎君も帽子は必要なのでは?また倒れては事ですよ。」
「もう忘れてw平気だから、大「大丈夫だからとお前は言うが、こういった事は大丈夫と思っている人間ほど危なくなるものだ。適当にコンビニででも買って、被っておけ。」
「おおう、お前に言われると何かマジでやばい気してくんね・・・」

「お前は?暑くねえ?」
「大丈夫です。暑いですけれど、自己防衛は出来てると思います。有難うございます。」
「そっか。」
「良かったの、見張ってた甲斐があって。」
「見張っ・・・と、と言いますか仁王君、大丈夫ですか・・・?」
「お前は人をおちょくる前に自分の顔色を戻せよ。」
「ピヨ・・・」

「黒崎も帽子被ってないのか・・・」
「まあ正直、私らその気になったらすぐ涼しい所行けるし的な油断はある。ここ、コンビニ近いし。」
「駄目だよ、あんまり心配させないで千百合。」
「・・・・・ん。」

それを言われるとぐうの音も出ない。
そもそも応援に来ているのに、選手に心配されていたら元も子も。

「流石に、フルセットの彼女レベルで自衛しろとは言わないけれど、せめて帽子くらいはね。」
「え、なんて?何の彼女?」
「フルセットの・・・ああ、彼女ですか。」
「え、誰々!何の話ー?」
「観客席にな・・・居るんだ、ちょっと目立つ女子が。」
「結構千百合達の近くに座ってるけれど、気づかなかったかな?ああでも、後方に座ってるから見えないのか。」
「つばの広い帽子を深く被って、遮光眼鏡にマスクの姿の女子だ。」
「どういう女子だよw」
「す、凄く日よけを徹底してらっしゃるんですね・・・」
「あれ日よけを徹底してるってレベルじゃねえ気もするけど?」
「ってゆーか、こーんな暑いのにマスクとかあちゅくないのかなー?風邪だったらお家で休んでる方が良いと思うんだけどなー?」
「まあ、その辺がちぐはぐじゃから目立つん・・・ん?」
「仁王君?いかがいたしました?」
「・・・・いや。」

仁王は変装に詳しい。
変装に詳しいって大分おかしな日本語だが、実際変装に詳しい。事実として。
なので思ったのだ。

もしかして、あの女子は。

「・・・・・・まあ、なんでもなか。」
「ですか。」
「ああでも、不審者への警戒も念のためにしておいてね。今年は何だか、妙な人に絡まれる事が心なしか多いから。」
「まあそれも思うけど。」
「あ!そーだそーだ、さっきも会ったんだよー!テニス部のせんぱーーーむぐ!」
「・・・・何だと?」
「いえいえ何でもw何でも御座いませんの事よw」
「・・・毛利先輩に会ったのか。」

個人名を出して会ったのか、とズバリ聞かれると、むぐ、と思わず口ごもってしまう辺りが、ビードロズの正直なーーーというより、嘘を吐き慣れていない所、である。
咄嗟に二の句が告げない。心の準備をしていないから。
そして察しの良い人間が多いテニス部の面々に向かって、その一瞬の口ごもりは、もうYesと返事したも同然なのである。

「マジ?あの人来てんのかよ?」
「い、いらっしゃるかどうかから疑われるんですか・・・」
「だってこういうの来てんの見たことねえもん。レアだぜレア。お前ら、今日何かラッキーがあるんじゃねえ?」
「新種のポケモンかよw」
「ああでも、実際新種のポケモンより見かけるのは難しいかもしれない・・・」
「へー!そこまでなんだー・・・って、真田っちどったの?」
「何でもない!」

何でもないと口で言いつつ、イライラオーラとしか言いようのない空気を全身から迸らせ始める真田。

気にしてもどうしようもないので気にしないように努めているが、そもそも真田はああいう態度の手合いが大嫌いなのである。今まで何度も何度もしょっぴこうとしたが、その度に逃げられ躱され。

「良いかお前達!次に見つけたら、必ず連れてこい!首に縄を括ってでも構わん、必ずだ!」
「首に縄?」
「ちょっと、本気でやるんじゃないわよ。流石に死ぬわ。」
「けれど、首とは言わないけれど手足くらいは縛らないと、あの人は逃げるからね。」
「何かとんでもないの助けちゃった感あんねw」
「おや?何か、助けたのですか?」
「あの人、テニス部の2年っぽい人にゲロのように怒られてしばかれてたよw」
「お顔が痛いとおっしゃるので、ハンカチを貸したんです。」
「貸さんで良い!放っておけ!自業自得だ!」
「おかんむりじゃのう。」
「まあ、真田は性格上腹に据えかねるだろう。」
「そういえば、柳はそんなに気にしていないよね?」
「あの手の手合いは、怒るというよりも相手にするだけ時間の浪費という感覚が強くてな。」

この時点で、柳は毛利に対しては、怒りというよりも無関心の方が強かった。
ムカつく、とかそういう感じじゃない。ただ、打っても響かない相手に何かする気はない。無駄だから。

それもあくまで、今この時はの話でしかなかったけど。