First national convention:Bye&bye&bye 2 - 5/5


一方、ベンチ側からも観客席が見えるので、三強の3人も渡邊の存在に気を揉んでいた。

「誰なのだあれは?人の服装にとやかく言う趣味はないが、しかしあまりにーー」
「あの人物は渡邊オサムという。」
「柳、知ってるのかい?」
「ああ。ナリはああだが、弱冠25才で四天宝寺中学の顧問を勤め上げている実力者だ。」

そう。渡邊は実力者なのである。
あれな所が多少どころか多々あっても、テニス部の顧問としての適性はあるのだ。

「顧問!?あれがか!」
「そうだ。だが・・・」
「顧問だからと言って、それが安心の材料にはならないからね。城西湘南の例もあることだし。」

華村は本当に悪しき前例を作ってくれたというべきか、どうもこうビードロズに対して何がしかの話を持ちかけているのではないかという警戒心が働くようになってしまった。
何由来の何目的でこっち来てるんだと問いただしたい。最早テニス部ではないからなどという事も、安心材料にならないのだ。

おまけにもう一つ気になる事が。

「・・・ねえ柳。」
「何だ?」
「25ってさっき言ったよね?」
「ああ、25だ。」

25。
今自分達が中1だからまあ13とすると、丁度一回り上。
ギリギリなしじゃないのか?・・・とか考えていると知れたら、多分先輩陣はそういう所が人の子だよなと返してくれるだろう。

「さて・・・おい、お前達。そろそろ時間だ。準備は良いな?」
「「「はい。」」」
「よし、じゃあ・・・準決勝もオーダーに変更なしという事で。勝つぞ!」
「「「「「はい!」」」」」




なんて言って準決勝は始まるーーーはずだった。。
だが、D2が始まる直前。

駿河台側のベンチから怒号が響いたのだ。


「どういう事だ!」
「しょうがないだろ、どうしようもないんだ!」


周り中どよめいてそっちのベンチを見る。




「3年なんだぞ俺達は!」
「じゃあ2年の追川に変えたら満足か!?ああ!?それともお前が変わってやるのか!」
「~~~~~~~!」
「俺だって何もしないでS3譲るなんてしたくねえんだよ!でも見たろ!お前は大岡が第一佐鳥の熊谷よろしく、テニス辞めますって言うところが見たいのか!」




僅かな会話ではあるが、察しのつく事は多い。

つまりだ。
駿河台側は今、幸村を恐れまくっている。
当たったら最後、テニス止めますまで追い込まれかねないと思っている。

だからS3に当たっている誰かーーーこれがおそらく大岡何某だが、その大岡を棄権させるつもりなのだろう。そして、それに対して他の部員がせめて戦わせてやれとでも言っているわけだ。
しかし仮にその大岡とやらをS2とかに持って行ったとしても、S3に誰かは必ず当てねばならず、その人物は必ず棄権させられる事になる。

ビードロズは図らずも今、相手が進んで不戦敗になろうとしている図を見ている事になる。
鶏が先か卵が先かは微妙な所だが、兎に角事実として。

こういう風に不戦敗って生まれるのか、なんて思って見ていると、部長らしき男子に食ってかかっている方の男子が言った。

「・・・分かった。」
「・・・そうか。分かっーーー」

「俺が出る。」

部長らしき男子はあからさまにぎょっとした顔をした。

「・・・出るってまさか、試合する気か!?」
「そうだよ。別に良いだろ、俺の勝手だ。」
「止めろ吉森!お前までテニスが出来なくーーー」
「なんで俺がテニス止めなきゃいけないんだよ!ふざけるな!」

吉森、と呼ばれた男子はラケットで幸村を指した。

「彼奴は中学生だぞ!神でも悪魔でもないんだぞ!彼奴と試合したらテニス辞めないといけないっていう決まりでもあんのか!」
「そんなもんないけどーーー」
「そうだろ!俺がやめなきゃ良いだけだろ!俺はやめねえぞ!」
「・・・・でも・・・・」
「まだ何かあんのか!」

「・・・熊谷も、そう言って負けたじゃないか!」

第一佐鳥の熊谷。そして今話している駿河台の部長は、共に3年生である。
別に仲良しなわけじゃないけれど、3年間夏を過ごしていたら、目だった選手の話は聞こえてくる。

熊谷があまり性格のよろしくない選手だったことは知っている。
ふてぶてくて慇懃無礼だった事も。性格的に不戦敗からとても遠かったことも。

その熊谷が折れたのだ。
じゃあ吉森は?目の前の仲間なんて、簡単にへし折れるんじゃないか?
どうしてもそう考えてしまう。

自分の部長がそう思っていることは、吉森にも伝わった。
しかし。

「・・・俺は辞めない。」
「吉森・・・」
「約束しても良い。辞めない。勝てないだろうけど、それでテニス止めたりしない。」

絶対だ。
そう言った言葉は、静まり返っている観客席にも聞こえてきたけど。

テニス止めない。
部活辞めない。
絶対。
例え負けても、それを理由に辞めるなんて事にはならない。

でも。

「・・・ゆっきーってさー。」
「・・・何よ。」
「確かに神様じゃないけどー。」
「そりゃあね。」

「でも、神の子だよね?」

そう。
幸村は確かに神様じゃないけど。

でも、そこらの人間よりはそれに近いかもしれないのだ。