First national convention:Bye&bye&bye 3 - 2/7


「ふう・・・・」

幸村はタオルで首元を汗を拭いた。

「首尾はどうだ。」
「ああ、平気だよ。ただ、負けるような相手じゃないけれど、流石に隙が今までの相手に比べて格段に少ないね。」
「そうか。流石にS1を務めるだけの事はある。」

そう。あの揉め事があったから吉森は今S3に入っているわけだが、本来吉森はS1に入っている選手らしい。図らずも今、S1同士の対決をS3でやっているわけだ。

「幸村、今のうちに少し良いだろうか。」
「柳?」
「さっきタイムに入る直前のアウトの事だ。」
「ああーーーあっちの動きが、一瞬止まった事かい?」
「そうだ。あれはどうしたというか、何があってああなったのか、お前は分かるか?」
「いや。俺から見ても、あれは脈絡なくいきなり一瞬止まったように見えたよ。別に、妙なフォームだったとかそういうわけでもなかったしね。」
「そうか・・・」

思案気な柳の視線の先には、駿河台のベンチがある。




「吉森、どうした?」
「・・・・返せない。」
「え?」
「でも、返せてるじゃーーーー」
「そういう意味じゃないんだよ!返球は確かにある程度出来てるさ、でもーーー入らないんだ!見てて分かるだろ、ポイントになってない!」
「そりゃあ・・・」
「・・・まあ・・・・」
「さっきもそうだったんだ・・・このショット、さっき打ったなって咄嗟に思っちまったんだ。返されるってわかってて返されるようなショット打ったって、意味ないだろ。でもーーーじゃあ他にどうすれば良いか分からないんだよ!」

悲痛な叫びだった。
プレイこそまだ冷静さを失っていないが、心理的には吉森はパニックになりかけている。
打つショット打つショット全て返されて、試すべき攻撃手段がなくなった時。

それはつまりーーーもう、自分は負けるしかないという事だ。ポイントを貰えないのなら仕方ない。永遠に勝てることはない。
勿論幸村が極端に疲労してきたりして、ボールに追いつけなくなってくるなどすれば話は別だが、今のところどの点を取っても多分先に使い物にならなくなるのは自分の方だ、という推測も吉森にはあった。

「・・・・吉森、」
「棄権なんかしねえよ。そうはならねえけどーーー」

思っていたより万倍、歯が立たない。
それは認めるしかなかった。



「プレイ!」

プレイ再開したって、さっきのタイムでは特にどうすれば良いかの指針なんて見つからなかった。

兎に角打ち続けるしかない。他に出来ることがない。
それは分かっているけど。

「15-0!」


ーーーーさっきも、このショットでポイント取られたよな


(くそ!またーーーー)


「30-0!」


ーーーーこのコースも、さっき打たれたし


(うるさいうるさい!しょうがないだろ、他に手がないーーー)


ーーーー手がないよなあ


(いや違う!手はあるんだ、こうやって打っていれば、いつかーーー)


ーーーいつか、幸村精市側がへたばってくる、か?
奇跡的な隙を狙う、か?


その間に、試合はお前の負けで終わってるよなあ?


「・・・うるさい!」

うるさい!うるさいうるさい!
辞めろ、俺に話しかけるな!
俺に張り付いてくるな!
邪魔だよ、どけよ!

ーーーー俺に悪態吐いてる場合なのか?ほら、来るぞ

ああ、ああ、ああ。
そのコース、さっきも打たれて。
あっちに返したら、それも打たれて。
こっちに返しても、それでも打たれて。

こんなの見たくない。


ーーーこれは、悪夢だ。