3回戦の対楢川学園戦は、結局忍足の予想がぴしゃりで当たった形で幕を閉じた。
D1は氷帝が勝利を納め、S3は落とし、S2で勝利して3勝。
これで準決勝進出である。
「ええと、水道水道・・・あっちかなっ。」
昼食後、可憐達マネージャーは休む間もなく準決勝の準備に入る。
水道を使おうと思ったのだが、多くの学生がまだ昼食時で一番近い所がごった返していたため、可憐は今足を伸ばして遠めの水道を目指していた。
が。
「・・・え、あれっ?おかしいな、そろそろ突き当りに出る筈だったのにっ!」
どうしてこの近距離で迷えてしまうんだろうか。
全国の準決勝まで来てこの体たらくだよ、なんて思いつつ、落ち込んでる時間も惜しいので急いで踵を返した時に、知った声がした。
「桐生さん!」
「えっ?あっ!忍足君っ!」
忍足と言いつつ、当然氷帝の忍足ではない。
声をかけてきた謙也は、楽しそうな笑顔はフェスの日に見た顔そのままだが、今日はイエロー+フレッシュグリーンの四天宝寺ジャージに身を包んでいる。
「そっか、忍足君も来てたんだよねっ!」
「せやで!何や妙な感じやな、ついこないだ会うたばっかり、っちゅー、話・・・」
「・・・?忍足君っ?」
「ああ、いやあの・・・桐生さん、その・・・大丈夫やったんか?色々・・・」
「・・・!ああ、ええっと、あのう・・・だ・・・大丈夫、に、なった、って感じかなっ?うん、多分そんな感じっ!」
本当はついこの間まで大丈夫とは程遠かったのだが、それは言わないでおいた。
(っていうか、忍足(謙也)君って私の事どう思ってるんだろう・・・あんな態度取っちゃったし、流石に忍足(侑士)君の事好きだってバレてるかなっ?普通勘づくよね、確認とかはとってこなくても・・・!)
それこそ謙也のしてくれた事や気遣いは、可憐が忍足の事を好きだという前提に基づいているものだと思う。
まさか正面から「やっぱり好きなんやんな?」とか聞いたりはしてこなくても、もうほぼそんなようなもんだと思われているだろう。
ただ、今の場合それはそれで有難い、と思えなくもない。
目の前で可憐が忍足や網代を多少避けるような素振りを見せても、何かと察して放っておいてくれるだろうから。
それを裏付けるように、可憐が大丈夫と言うと、謙也は割とわかりやすくホッとした顔になった。そしてその直後、ちょっと渋い顔になった。
「・・・何や俺が謝るのんも変な話やけど、堪忍な。侑士の奴、ほんまに従兄弟ながらタイミング悪いっちゅーか、なんちゅうか・・・」
「い、良いよ良いよそんなのっ!私、誰かが悪いなんて思ってないよっ!本当だよっ!」
「そうか?」
「うんっ!寧ろその・・・ちょっと、良い機会だったかも、とか思ってる部分もあるんだっ。上手く纏められないけど、ずっと整理がつかなかった事が、やっと片付いた気がするのっ。」
整理した末に出てきた答えは、可憐にとって喜びばかり齎すものではなかったが。でも、ここしばらくずっと感じてきた、何かに対して見ないふりを決め込んでいるようなもやもやは確かに無くなった。
それは良かったと、今は思えるから。
「だから、忍足君も気を使ってくれなくて大丈夫だよっ!自分でも、早く普通に戻らないとなって思うからっ。」
「・・・さよか!まあ、桐生さんがそう言うんやったらその方がええな!」
「うんっ!」
「おう!いやあ、安心したわ!これで心置きなく、全国へ打ち込めるっちゅー話や!」
「うん!・・・あれっ?」
「ん?」
「そういえば、四天宝寺って次はどことっ?」
当たり前だが、トーナメントの対戦相手など前もって分かるものじゃない。
どこが勝つかは蓋を開けてみるまでわからないからだ。
二回戦とか三回戦辺りなら、わからないと言ってもまあ近い所だろうが、準決勝となるともう大分遠い所と当たってもおかしくないので、そろそろ予想も出来なくなってくる。
そういう自分も後で組み合わせ確認しないと、なんて思う可憐に、謙也はあっけらかんと言った。
「あれ?知らんか?」
「えっ?」
「次は対氷帝やで!友達は友達やけど、それはそれでこれはこれっちゅー話や!負けへんからな!」
「・・・・え、ええええええ!?」