First national convention:Brave girl 1 - 5/6


(どういう意味だったんだろう・・・)

可憐は準決勝を目前に、フェンスに軽く手をかけて考えていた。

忍足に新人戦の勧めーーーひいては、来年度のレギュラーの内定が出ていた事もびっくりだが、その本人が出ると決意していないというのが輪をかけてびっくりである。

普通、こういう時ってチャンスだ逃すかと言わんばかりに皆とびつく話だと思っていたのだが、そこで踏みとどまって今の自分で本当にいけるかと考えるのがまあ忍足らしいというか。
更に言うと、出来る出来ないみたいな可能性の話ではなく、自分が満足するしないみたいなテニスに対して妥協しないみたいなニュアンスなのが尚忍足らしい。

しかし、それはそれとして忍足が今の自分に満足していないなどという話は初めて聞いた。
しかも、新人戦に出るのを躊躇するほど。

(そんなにプレイスタイルに悩んでたように見えなかったのになあ・・・って、私がよく見てなかったのかな・・・・)

はああ、と可憐はわざと大きめに息を吐いた。
こうする事で、胸に溜まっている気持ちが少し外へ出て行ってくれる気がする。

こういう時、反射的に網代ならもっと細かいことを知ってるんだろうか、とか。忍足は話してるんだろうか、とか考えてしまう自分が嫌だ。

以前はこういう時は、マネージャーとして網代が遠いなあまだまだだなあとか思っていた。
でも今は違う。それも0ではないけど、それ以上に可憐は「忍足が」という部分が引っかかっているのだ。
これが例えば忍足じゃなくて跡部だったとしたら、可憐はそこまで重いことは考えないだろう。跡部も網代も色々考えているんだな、やっぱりテニス知っている網代には話せることとかもあるんだろうな、なんて思うくらいに過ぎない。

結局のところ、忍足が絡まっているから気になるのだ。
この事に気づくのに、可憐はつくづく時間をかけてしまったと思う。

「・・・なあ、桐生!」
「へえっ!?え、ご、ごめんなあにっ!?」
「だから、四天宝寺だよ!」
「へ・・・え?四天宝寺?」
「そうだよ!この間知り合ったんだろ?どんなプレイの奴か知ってるのか?教えろよ・・・おい、ジローも起きろ!」
「にゅ~・・・?」

最早「良いよもう、寝かしとけ寝かしとけ」な部員の方が多い中、律儀に起こそうとする宍戸に可憐は苦笑した。

「でも、残念だけどあんまり今参考になる話は出来ないかなっ。確かに友達にはなったけど、別にテニスの話を沢山したわけじゃないしっ。それにあっちも1年生だから、今回の大会にはあんまり関係ないしっ。」
「ああ・・・確かにそうか、俺達と友達になったからって氷帝テニス部の実力なんか図れねえもんな。」
「うん、ごめんね・・・あ、でもそれはそれとして、大阪の学校なんて普段見られないから貴重だよねっ!八幡北と違って全国の常連だし、色々勉強になるんじゃないかなっ?」
「そうだな、刺激になるよな!ほら、ジロー!起きろ、ある意味じゃ跡部のテニスより貴重なんだぞ!」
「ん~~、あと5時間・・・」
「準決勝が終わっちまうだろ!」
「芥川君っ!ほらしっかりっ!」
「む~・・・・・」




「実際どうなの?」
「ん?」
「四天宝寺のテニスよ。侑士君、何か知らない?」

何か知らないか。
と言われると、やはり謙也が実際在籍している分、何も知らないとは言い難いのだが。

「茉奈花ちゃんのが俺より詳しいんとちゃう?」
「あ。その返し、侑士君は知ってるわね?」
「まあ。」

忍足も網代も、四天宝寺のテニススタイルについて知ってる事はある。
ただしそれは文字通り「知ってる事がある」程度の話。

何分四天宝寺という学校は学校全体でああなので、テニス部について調べたところで、出てくるのは「それ」で「あれ」な事ばっかりで、果たして対戦の時に参考になるのかというと。

「まあ、そういう戦法なんかも知らへんけどな。」
「ああ、確かに、ね。自由度の高すぎる学校って、データが取れないのよねー、違いが大きすぎて。」

それは更に裏を返すと、各々好き勝手にやっている・・・決まったスタイルが無い事と引き換えにノウハウが蓄積していかないという事でもあるのだが、四天宝寺は割とそういう所がある。
ノウハウとか別に要らない。その時その時の最善に合わせていくしなやかさが、四天宝寺のもう一つの特徴。


「それではこれより、氷帝学園対四天宝寺中学の試合を執り行います!両校、礼!」