審判のコールが響き、試合は終了。
D2、負け。
D1、負け。
S3、勝ち。
S2、負け。
全国大会準決勝進出。
これが氷帝学園テニス部における、可憐の最初の夏の戦績になった。
ああ、終わったんだ。
という感覚は、試合終了とほぼ同時に襲ってきた。
ある意味ではこれが負け慣れという事になるのだろうか。
立海に負けた時のような、ショックのあまり逆に何も感じないという事は今回はなかった。
ただそれでも、独特の虚無感のようなものは感じた。
これは一種の、心の防衛本能なのかもしれない。
「・・・終わったね。」
「・・・ね。」
そんな会話がそこかしこから聞こえる中、可憐は他のマネージャーと同じく撤収の準備をしていた。
「・・・・・・・」
ため息とも何とも言えないような吐息が、可憐の口から漏れた。
勿論悲しい。
でも悲しいだけじゃない気がする。
何かぼんやりした気持ちで、良くないと思いつつダラダラと撤収していると、後ずさった足が誰かにぶつかった。
「わ・・・」
「おっと。堪忍な。」
「あ、忍足君・・・ごめん・・・」
「・・・どないしたん。えらいしんどそうやな。」
「あ、ううんっ。しんどくないよ、しんどくないけどこう・・・何だか、ちょっと変な気持ちでっ。」
「まあ、今パニックやろうからな。」
「えっ?」
「ん?」
「わ、私パニックじゃないと思うよっ。寧ろどっちかっていうと、そう・・・四天宝寺に毒気を抜かれちゃったっていうか・・・・」
そう、可憐の自己分析としてはそうだった。
同じ負けでも立海に負けた時より絶望感が薄い気がするのは、あの学校の持つオーラが、負けたとしても悲壮な空気になる事を許さないからかもしれないと。
しかし忍足は、緩く首を横に振った。。
「それもあるかもしれへんけどな。でも、俺はやっぱり初めての事にいっぱいいっぱいっで、処理出来てへんのんちゃうかなと思うで。」
「でも、別に負けるの初めてってわけじゃーーーー」
「でも夏が終わるのは初めてやろ。」
その言葉は、可憐の心にしみこんでいった。
夏が。
終わる。
(・・・そっか、)
以前の負けは、負けではあったけど、次に続く道への扉は開いていた。
今はもう無い。
次はもうないのだ。
今居たこの場所は、もう次に続く道中ではなくてゴール地点の近く。
そして自分達は、そこへ辿り着けなかった。
夏が終わるというのは、そういう事なんだ。
「・・・まあ、俺かて初めてやけどな。」
「えっ?」
「テニスは小学校の頃からしとったけど、部活としてちゃんとやるんは今年が初めてやさかい。何や妙な感覚やわ。」
スクールの人間だって、忍足は別に嫌いだったわけじゃないし普通に付き合いもしていた。
居なくなれば普通程度には寂しかったし、大会で負けたら残念に思った。
でもやっぱり、それは部活とは違う。
人生に数度しか来ない夏の、最初の一回は今。
今日終わったのだ。