First national convention:Brave girl 2 - 5/5


「・・・・・・・・」

電車に揺られて、忍足は一人窓から外を眺めていた。

すっかり遅くなってしまった。
幾ら夏でも、この時間はもう日が沈み切っている。それでも空がまだ一部オレンジなのが、流石夏だが。

(・・・五分五分っちゅう所やろなあ、勝率としては。)

向日は返事を直ぐにはしてくれなかった。
何か複雑そうな顔で、考えさせてくれと言われ、今日はお開きになった。


夏を一回経た身で忍足が出した結論。
それは、氷帝のネックはやはりDにある、という考えだった。


立海、四天宝寺とどちらも結局跡部まで回らなかったが、まあ跡部でS1つは取れるだろうと忍足は考えていた。
それよりも、高い確率でD2つ持っていかれる事の方が痛い。
自分の方に黒星が付くということは相手の方に白星が付くという事なので、S3が始まった時点で王手をかけられているのはいかにも辛い。

とはいってもDはコンビネーションの問題もあるし、仮に自分がもっと強くなれてDに入ったとしても、一概にそれがD強化に繋がると言えるわけじゃないのだがーーーー


ーーーでも、向日となら出来ると思う。
そう感じたから。


(まあそれも、相手あっての事やねんけどな。)

乗り気じゃない相手を無理やり誘ってもなあ・・・なんて事を考える忍足は、やっぱりどこか育ちが・・・というより、行儀が良いのだった。



一方の向日も、複雑な顔をそのままにいつになく静かに帰宅した。

「ただいま。」
「兄貴お帰り!」
「ん・・・・」
「あ、岳人お帰り!今日ねえ、唐揚げだっ、て・・・・」
「ん・・・・出来たら呼んで。」

ふらついたりこそしないものの、ろくすっぽ会話もせず2階の自室へと向かう向日に、姉と弟は?な顔を見合わせる。

「・・・兄貴、どうしたんだろ。」
「やっぱりショックなのかなあ。今日負けちゃったみたいだし。」

向日がこの会話を聞いていたら、負けたことそのものじゃなくて負けた原因に悩んでるんだよと返しただろう。

「・・・・・・」

自室に着くと鞄を下ろして、そのままベッドにダイブした。

「・・・・・ああーーーーーーー!」

向日はぐちゃぐちゃだった。
もうどうしたら良いのかさっぱりわからない。

そもそもだ。
そもそも今日向日は、榊を尋ねて今後の自分の方針について意見を聞こうと思っていたのだ。

強くならなくちゃいけない。
それは分かっているけれど、向日はこのまま漫然と練習していてもさして強くなれないーーー勝利に結びつかないと感じていた。

だから何か、今後目指すべき指針のようなものが欲しくて榊を尋ねようとして。
でも性格的に教師という存在がどうも苦手で二の足を踏みまくっていて、そうしていたらなんと。

親友にDに誘われた。

「・・・・D、か。」

はっきり言って、考えてもみなかった。
Dという発想がなかった・・・というよりは、自分はDに向いてないと思っていた。

幼稚舎の頃からずっと宍戸と芥川とテニスしてきて、そんな中で数度はDした事もあるけれど、結論として思ったのはいつも「向いてないな」だった。
芥川はもう論外として、宍戸とのDは大体散々な結果に終わった。
もっとパートナーを見ろと宍戸に言われた事は数知れないが、見ろと言われても見られるような性格していないのだ。その自覚がある。

(・・・・侑士の奴、何考えてんだ?)

忍足に限って、まさか単純に仲が良いからというだけの理由で自分を選んだりはしていまい。忍足なりに、何かテニス的勝算がある筈だ。

しかし、どうも自分でそれが信じられない。あるか?勝算。本当に?

「・・・・Dか・・・・・」

駄目だ。
無理。
想像がつかなさ過ぎて判断しかねる。

うつぶせになって枕に顔をうずめて、出ない結論を延々と考え続けてるうちに、向日は寝落ちるのだった。