「ごめんなさいごめんなさい、っとにごめんなさいもおおおおお・・・・!」
「良いんですよおばさん、私達自分で起きてやってるだけなので、」
「それより、ご飯かパンかどっちにします?」
「どっちにもしません残ったので良いです皆を優先してくださいこんな駄目母親よりいいいい!」
皐月は、朝起きたら朝食がすっかり出来上がりきってる事に、親として軽い眩暈を覚えた。
大体こういう成り行きになったら、いつも紫希一人では手が回らない事も多いので、皐月が普通に起きてきても手伝いが出来るのだ。
忘れてた。そうだ、今日は丸井が居るんだった。
「っていうか、皆起きるの早すぎじゃなーい!?何か言い訳見たくなっちゃうけどさ、普通休みの日の朝っていったら早くても8時とか9時とかじゃないの・・・!」
「いくら何でもそんなに眠り込んでいては、体が鈍ってしまいます。」
「過ぎた睡眠は健康に逆効果ですよ。」
「ストイック過ぎるよ皆も~~~!」
「おかーしゃ、むぐ・・・すといっくって何?」
「紀伊梨はもう少し勉強して!」
7時少し過ぎ。
朝食のテーブルに、皐月を含む全員が付いた。
あの後直ぐ幸村と千百合が戻ってきて、やっぱり真田に説教を食らった紀伊梨と、3階で眠っていた皐月は怒鳴り声で飛び起きた。
今は各々和食と洋食好きな方を取って、皆で囲んでいる。
「わー!何か皆で紀伊梨ちゃんの家で朝ご飯って不思議な感じー!朝にお味噌汁あるのも不思議な感じー!美味しー!」
「五十嵐さんは、朝は洋食ですか?」
「うん!でも折角だから、きょーはご飯の方食べるんだー!」
「そうですね、私も今日は和食の方にしました。」
「わかるなあ。普段と違うものが食べたくなるよね・・・五十嵐。」
「うぐ・・・」
「そこにあるんだから、取っておいで。人のお皿から取らない。横着は駄目だよ。」
「一口で良いからー!」
「駄目。このひじきは俺の。」
「むいー・・・」
(注意が幼児ですね)
「珍しいな・・・真田がパンなんて。」
「あっちに御飯がありますぜ旦那w」
「む、いや構わん。昨日決めたばかりだ。」
「決めた?何をだ?」
「確かに和食と比べて好みではないが、出された際に知らない食べないでは失礼だと思ってな。無知は恥だ、見識を深める為にも・・・む。美味いな。」
「ラタトゥイユっていうんですw覚えて帰ってねw」
「はは・・・でも、そういう事なら確かにこういうのって良い機会だな。絶対自分じゃ分からない料理が出てくるし。俺も見たことない和食が幾つかあるくらいだから。」
「それに美味しいしねw」
「美味いというのは関係があるのか?」
「そりゃあ、美味しいから入った方が何事もいいに決まってるでしょw」
「今日も暑そうじゃの。」
「暑いよ。もう既にさっき暑かったし。」
「外へ出たんか、休みじゃっちゅうのに。酔狂な奴じゃき。」
「私からしてみれば朝からトースト2枚も齧ってる方が酔狂。」
「ほう。今日は食べるじゃないか仁王。合宿でもそのくらい食べられれば、パフォーマンスがもう5%は上昇するぞ。」
「ホテルでこれくらいのレベルのもんを出してくれるんなら、食べる気になるんじゃが。」
「え、何。あんたグルメだっけ。」
「そういうわけでもないが、暑いと単純に美味いもの以外食う気が失せるんじゃ。」
「わからないでもないが、取り合えず何かは食べるべきだ。食べないと余計に気分が悪くなるぞ。」
「ピヨ。」
(良かった、食べて貰えてます・・・)
紫希はこっそり満足して笑った。
何度やっても人に出す時は緊張する。
まあ今回はいつもよりちょっと自信があったが。優秀なシェフ兼味見係がずっと居てくれたので。
良い朝だな、なんて思いながらふと隣を見ると、当たり前みたいに和食と洋食両方目の前に並べて食べている丸井と目が合った。
目が合うと丸井はそれは明るく笑って、片手を挙げる。
「はい。」
「へ?」
「いぇーい!」
つられて片手を上げると、パン!と良い音を立ててハイタッチされる。
「上手くいったな!」
「・・・はい!」
「朝から熱いの。」
「え、冷めてから飲んだら良いじゃん。スープに氷入れてとか言うなよ、幼児じゃあるまいし。」
「・・・・・・」
「・・・あ!も、もしかして冷製スープの方がお好きでしたか、」
「マジで?おい、そういう大事な事は早く言えよ?」
「おい、仁王!用意して貰って文句を言うとは何事だ、たるんどる!」
「分かった分かった、もう言わんきに怒らんでくれ。」
もしかしてわざとやってないだろうか、と溜息を吐く仁王に、隣の棗がそっと耳打ちした。
「なんじゃ。」
「世の中には駆け引きするだけ無駄な人種ってのが居るんですよw諦めなっせw」
「お前さんはつまらなくないんか。」
「まだその段階にないw」
「段階・・・ああ。自覚してからが本番っちゅう事か。」
「違うw」
「違う?」
「面白がれるのは全てが終わってからだよw纏まらなかったら笑えんからなw」
纏まらないなんて事あろうか。
仁王は熱いスープを啜りながら思った。