薄いピンクの生地に色とりどりの金魚柄。
そこに赤い兵児帯が、可憐が買った取り合わせ。
履き慣れないと痛いというのは分かりつつ、折角だしという気持ちを優先して買ってしまった下駄を履いて、可憐は一人、神社へと向かう。
これから待ち合わせ。
結局誰が来て誰が来ないのか、可憐は知らないが。
ただ。
最悪の想定はちゃんとしている。
(もし危ないと思ったら、もう自分からさっさと離れちゃおう・・・)
はあ、と思わず溜息を吐くその姿は、これから夏祭りに行く様には見えない。
一応今回、括りとしては女子だけで行こう、と言われている。
男子は途中で会ったら適当に一緒に居ても良いけど、殊更示し合わせて一緒に行こうとかそういうのはなしで。という方針。
ただそれはそれとして学校近くの祭りなので顔見知りがふらふらしてる可能性は非常に高いし、もし忍足と出会っても、訳も分からずただ2人を見続けるよりは避けた方が良いと思う。
自覚すると避けられるようになるのが良いな、なんて。
でも解決にはなってないんだよなあ・・・とか考えながら電車に乗ると、おそらく進行方向が同じであろう浴衣の客達が同じ車両にちらほら見受けられる。
扉が閉まると、目の前にガラスが来て、そこに自分の姿が映る。
「・・・・・」
心なしか地味。
に見えるのは、浴衣のせいというよりは、自分の気分のせいであろう。
ほぼ半自動的に、引き比べてしまうのだ。自分の中の網代と。
こういうのももう止めたいけど、止めようと思って止められるもんでもない。
網代はお洒落だし抜かりなくやってくるんだろうなと思うと、心は晴れない。
どうしたって。
「あ、可憐来たー!」
「おーい、こっちこっちー!」
マネージャー友達の浴衣姿の群れが見えて、可憐は小走りになった。
普通には走れない。浴衣だから。
「はあっ!はあっ!ごめんね皆、遅くなって・・・!」
「ううん!時間ぴったりだよ?」
「そうそう、間に合ったんだし!」
「あ、はははは・・・」
本当は余裕もって到着できる予定だったが、うっかり間違えて一駅前で一度降りてしまったのだ。
結局ぎりぎりになってしまった。
「可憐ちゃん、お疲れ様♪」
「あ、お・・・お疲れ様っ。」
網代は薄ーい黄色に手毬の柄の浴衣を着ていた。
鶯色の帯が良く合っている。
ああそうか。忍足が鶯色が好きなんだっけ。
「・・・・・・・」
「さ!これで全員揃ったわ、しゅっぱーつ!」
「ねえねえ茉奈花ー?」
「え、なあに?あ、忘れ物?」
「あ、ううん行こ行こ!歩きながら話すので良いんだけど・・・今日ってさあ、男子勢来ないんだよね?」
「ええ。今回は誘ってないわ。」
「まあでも、誘うとかじゃなくて普通に遊びに来てる人とか他にも居るんじゃない?」
「ええ、それもそうなのよ。だから、気になる人を見かけたら抜けるのはOKよ♪」
「せんせー、妨害はありですかー?」
「うわ、性格悪い事考えてるー!」
きゃっきゃとはしゃぐマネジ勢だが、可憐は曖昧に笑いつつ言葉少な。
こういう話題はあまり発言しない方が良いのだろう。
無理して話そうとすると、話しちゃいけない事まで話してしまいかねないから。
「はあ・・・・」
「真理恵はどうしたの?」
「あー、放っといて放っといて!いつもの病気だから、発作発作。」
「うるさいわね!おろしたての浴衣を好きな人に見て欲しいっていう、乙女心もあんたはわかんないわけ!」
「えー、だって真理恵の話もう飽きたもん。進歩がないしさー。今日だって結局此処に来てんじゃん。」
「・・・そっかっ!黒羽君って六角で千葉だからっ。」
「まあ、ね。ばったり会う確率なんて、万が一よりもっと下よね。気の毒だけど。」
「はあ~・・・・」
「ドンマイ、真理!」
「今日は女の友情を深めよう!ね?」
「良いわよもう!あんた達だって、どうせ気になる男子が居たら抜けるんでしょ!もう良い、もう!今日はやけ食いする!」
「・・・あははっ!」
可憐は何だか明るい気持ちになった。
同じ片思いの身分にあって、こんな風に明るく居られる事も見たからかもしれない。
「真理恵、私も付き合うよっ!お腹空いちゃったっ!」
「やったー!じゃあたこ焼きとー、」
「あ、私焼きそば行きたいー!」
「もうちょっと女子っぽいものにはしないの?」
「良いの!やけ食いだから!」
食べ物の匂い。
人のはしゃぐ声。
夜空に浮かぶ明るい光。
お祭りはもうすぐそこ。