Little goldfish 1 - 3/5


集まったマネージャー陣は、可憐を入れて10人居た。
当たり前だが、これくらいの大所帯になると露店を回るにしても身動きがとりづらい。
ので、5:5で別れる事にした。

「まあ、実質4人ですけどね~。」
「言えてる。」
「え、何が?」
「んーん?茉奈花はどっかで絶対抜けるだろうなー、って思っただけよん。」

網代は、可憐とも新城とも金町とも一緒に居なかった。
3人はあっちのグループである。

他の6人のマネジも、一緒に居ないなんて珍しいねとかそういう事は言わない。
好きな人に会えなくてやけ食いしたいと言ってる新城と、網代を一緒にするのは若干意地悪いだろう、という思いからだ。

多分忍足とはお祭り中にどこかで会う。
来る事は確定なのだ。向日や宍戸と行こうという話をしているのを見た者が何人も居る。

「なあにそれ?」
「しらばっくれちゃって~。」
「忍足君と抜けるんでしょ?」
「そもそも会うかも分からないわよ?」
「いや、会うでしょ。確かに大勢は居るけどーーーあ!」

「ん?あ!」

噂をすれば影、の言葉通りである。

忍足に向日に宍戸の3人が、制服のままの姿でそこを通りすがったのだ。

「ほら、居たよ?」
「ええ、居たわね。」

網代はくすっと笑った。
それを見て、向日は忍足を肘で小突いた。

「何?」
「行って来いよ!今のうちに。」

(今のうち?)

今のうちとは何だろうか。
この言葉は、転じて今以降に何か予定がある時に使う言葉だが、早めに帰らねばならない用事でもあるのだろうか。

まあ。この際それは脇に置いておこう。

「・・・ほんなら行こか。」
「あら、乗り気じゃない?」
「そういうわけやあらへんで。」

でも、それはそれとして忍足には小さいながら気がかりがあるのだが。
まあ、落としたい女の子の前でそれを口に出して、及び腰ですとばらす程間抜けでもないので。

「出来そうなら連絡してやっからさ。」
「頼むわ。ほんなら茉奈花ちゃん、行こか。」
「はあい。」

僅かに引っかかりも感じつつ、でも出された手を握った所で、網代は楽しむことを優先することに決めた。



さて、可憐の方であるが。
網代とは別グループになり、さりとて忍足も他の知り合いも見当たらず、普通にやけ食いを楽しもうと思いたこ焼きの列に並んでいた。

すると、金町のスマホが鳴る。

「LINE?」
「そうそう、あっちから・・・あ、はーい。」
「何ー?」
「茉奈花抜けたってさ。」

可憐は胸がぎゅっと潰されるような感じがした。
金町は一言でさらっと済ませてくれたが、その一言で誰と行ったのかはもう想像がつく。

「エンカウント早ー。」
「連絡してたのかな?」
「どうかなあ。偶々じゃない?茉奈花なら、連絡までしてたなら最初からもう自主抜けするでしょ。」
「まあねー。」
「もう!今の私の前でそういう話止めて!たこ焼き!」
「はいはい。」
「千葉まで行けば良いのにー。ね、可憐?」
「え、あ・・・・う、うん、そう、かな・・・ま、まあっ!ほら、それよりたこ焼き食べようよっ!」
「可憐今日めっちゃたこ焼き食べたがるね?」
「お、お腹空いちゃってっ!」
「?そう?」

一生懸命意識を逸らそうと前方の屋台に顔を向けると、前に並んでいる女子高生2人(浴衣なのではっきりとはわからないが、おそらくそうであろう)が、たこ焼きを待ちながらはしゃいでいる。

「ほらほら、たこ焼きよたこ焼き!先生、レクチャーをお願いしま~す。」
「せやから、たこ焼きに作法も何もあらへんて言うてるやん?」
「えー、隠してなーい?たこ焼きを上品に食べる方法!とか!」
「小そう切って食べたらええやん?」
「ふっつー・・・」
「普通ですー。大阪人の事、何やと思うてるのん。」

(・・・あれ?この人の声、聞いたことがあるような・・・あ!)

「忍足君の、お姉さんっ?」
「「「「えっ!?」」」」
「え!?あ、声に出てたっ!?あ、ち、違うよっ!違うっていうか、私が今そう思っただけで、」

「ん?・・・あら。」
「恵里奈、知り合い?」
「私というか、弟の知り合いかもしらへんね。皆、侑ちゃんのお友達?」

振り向いた彼女の顔は、忍足によく似た面差しをしていた。