「そっかあ、じゃあ皆はマネージャーさんなんやね。いつも侑ちゃんがお世話になってます、ほんまにおおきに。」
「い、いえそんなっ!」
「忍足君しっかりしてるし・・・」
「ね。別にそんなにお世話してるって感じじゃ。」
可憐を入れたマネージャー達と、忍足の姉の恵里奈と更にその友達の大所帯は、皆でたこ焼きを買って、簡易テーブルのスペースで座って食べていた。
忍足や向日が今のうちに云々と言っていたのは、他でもないこの姉の存在である。
恵里奈もこの祭りに来ることを知っていたから、可能性は低いとはいえ鉢合わせたら面倒という思考が働いてしまう。まあ、思春期の中学生なんて、大体の場合恋人と居る所を兄弟になど見られたくないだろう。
まして弟妹なら兎も角、兄や姉は。
「それにしても可憐、良く気づいたね。」
「声に聞き覚えがあって・・・多分、電話で聞こえてきた事があるんだと思うっ。」
「ん。」
恵理奈がたこ焼きを食べていた手を止める。
「可憐ちゃん、って貴女の事なん。」
「えっ、あ!はいっ、桐生可憐ですっ!」
「そうなん。可憐ちゃんの話はよう聞くわ。いつも仲良うしてくれて、おおきにね。」
「いえいえそんなのっ!私の方がいつも、お世話になりっぱなし、で・・・・」
これ。
謙遜ではなくて、割と真面目にそうだよね、と思うと可憐はどうしても沈んでしまう。
自分と忍足の関係性をして、可憐の方が忍足の面倒を見ている側であるなんて思う者は、まあまずいるまい。
「・・・あら?どないしたん?」
「え、あ!いいえっ!何でもっ!」
「そう?もしかして、侑ちゃんに何やされたりしてへん?」
「そ、そんな事ないですっ!絶対ないですっ!」
「それは、私達も保証しますから。」
「そうですそうです、忍足君を責めないであげて下さい。」
「そう?」
「そうって・・・恵里奈もさ、姉なんだから。あの弟君が女の子に何か良くない事するとか、まあないでしょ。」
「どうやろなあ。」
「・・・・え?」
「ど、どういう意味?・・・ですか?」
「ああいや、言うておくけど、侑ちゃんが可憐ちゃんの事嫌いやとか、そういう事を言いたいわけやあらへんのんよ?ただなあ、侑ちゃんはこう・・・」
「あ。好きな子には意地悪タイプ?」
「そうやのうて、苦手な子と距離を図るのんが下手なんよね。」
「に、苦手っ!?」
「え、待って待って、待ってください!それって、可憐が苦手って事?です・・・か?」
「そやねえ。あのね、侑ちゃんは可憐ちゃんみたいなタイプの子は、好きなんよ基本的に。」
「は、はい・・・」
「ただ、得意ではないんよね。」
「好きだけど?」
「そう。好きやけど、得意ではない。好き嫌いと、得手不得手は別っちゅう話やね。」
そりゃまあ。
確かに世の中には下手の横好きとかそういう諺もあるし、理屈は分かるけど。
でも人間関係に於いて「この人苦手」って、それはもう結構「この人嫌い」と半分以上被ってないだろうか。
恵里奈以外皆そう思ったらしく、金町がおずおずと口を開いた。
「で、でもあのー・・・」
「うん?」
「その・・・付き合いの中で苦手な人って、こう、嫌いになったりしません?私結構身の回りで、その2つ=っていうか、ほぼ一緒っていうか・・・あ!あの、違うよ可憐っ!可憐が嫌われてるって言いたいんじゃなくて!」
「ううん・・・と、あのねえ。私も国語が下手で申し訳ないんやけど、そういう苦手とちょっとニュアンスが違うねんよ。何ていうのんかなあ、ペースが狂うんよね。侑ちゃんと物事に対する発想が違いすぎて。」
「ああ、まあ確かに・・・」
「忍足君と可憐が性格全然違うのは分かります・・・」
「せやろ?でも侑ちゃん、発想の違う人と一緒に居るのんは結構好きやねんで。」
「・・・でも、何考えてるかはわかんないから、不得意って事?」
「まあ、大雑把に言うとせやね。」
「へえー・・・」
「まあ、それなら納得?というか?」
「悪い意味じゃなさそうだしね。」
(不得意・・・)
そういう意味では、忍足も可憐から見て不得意。という事になるのだろうか。
確かに、初対面の入学式の日に一気に仲良くなったから今があるのだという感じはする。
あれがなければ友達になっていたかどうか。
しっかりした人だなあとは思っていても、親しみやすいとかは思わないだろう。
これが好きだけど不得意、という事になるのならば。まあ。
納得は出来る。
「・・・ふう!ご馳走様でした!」
「じゃあ忍足君のお姉さん、私達そろそろ・・・」
「うん。弟の事、よろしゅうね。」
「「「「「はい!」」」」」
手を振る恵里奈を、恵里奈の友人の女子は横目でじっと見ていた。